知らなきゃ損する?!精液検査と男性不妊(前編)

皆さんこんにちは。
筆者は普段、胚培養士といって、卵子と精子を受精させたり、受精卵を育てたりする仕事をしています。
これは、我々にとっては非常に“あるある”で、例に漏れず私が勤めているクリニックでも同様なのですが、「子どもが欲しいけど、なかなか妊娠出来ないなぁ‥‥。もしかして不妊症なのかしら??」と考え始めた時に、まず女性が一人だけで婦人科ないし産婦人科を受診するというケースが非常に多く見られます。
実際にこのコラムを読んでいる方の中にも、「病院には、まだ私しかかかっていない」という方がいらっしゃるかもしれません。
しかしながら実は、不妊症の原因の約半数は男性側にあるということを皆さんご存知でしょうか?

今回は、「知らなきゃ損する?!精液検査と男性不妊(前編)」ということで『男性側の不妊』に焦点を当ててお話ししていきたいと思います。

男性の不妊原因は大きく3つに分類される

不妊症には実に様々な原因があります。
晩婚化などの社会的な背景も相まって、現在では夫婦の約5.5組に1組が不妊症に悩んでいると言われていますが、いまだに「不妊症なんて女側の問題だろう?」と思っている“意識の低い男性”もまだまだ少なくは無いようです。
しかし実際のところは、WHO(世界保健機構)の発表によると、理由のはっきりしない機能性不妊(原因不明不妊)を除き、男女両方に原因がある場合を含めると、不妊症の原因は男性側・女性側が約半々という割合であることが報告されています。

男性側の主な要因は、大きく以下の3つに分類することが出来ます。

1. 造精機能障害

造精機能障害は、その名前の通り、精子を作る機能そのものに障害があることを言います。

  • 精液中に精子が認められない無精子症
  • 精液中に精子を認めるが、数が顕著に少ない乏精子症
  • 精子は認めるが、運動性が著しく不良である精子無力症
  • 奇形な精子が多い、あるいは奇形なものしか認められない奇形精子症

などが造精機能障害に当たります。
上記の症状が見られる時、精索静脈瘤(精巣内の血管が瘤状に肥大する病態)に罹患しているケースが多く見られます。

2. 精路障害

精路障害は、精子はちゃんと作られているものの、体外まで射出されるまでの通り道に何らかの障害がある場合を指します。
精管欠損や閉塞性無精子症など、精子の通り道が閉じてしまっていたり狭くなっていたりすることで、結果的に精子が体外に射出されていない病態を指します。

3. 性機能障害

性機能障害は、精子を造る機能、精子の通り道に異常が無いにもかかわらず、精子を体外に射出する機能そのものに問題がある場合を指します。
いわゆるEDと呼ばれる勃起障害や、膣内で射精することが難しい膣内射精障害、精神的・身体的な理由による性欲減退などが性機能障害に該当します。
近年では、性機能障害の罹患率が顕著に上昇しており、喫煙や長期的なアルコールの摂取、糖尿病、心疾患などの生活習慣(病)がその原因になっているのではないかと考えられています。

不妊症は女性特有の問題では無い

日本生殖医学会の調査によると、初診時に精液検査を行った際、男性側あるいは男女両方に不妊原因が見つかったケースは全体の約1/4と報告されています。つまり、4組に1組は男性側にもなにかしらの不妊原因が潜んでいるという事です。
この数字を聞いて、意外と多いと思いませんでしたか?
また、不妊症の多くは、どれか特定の一つの原因に起因するというよりは複数の原因が関連している場合がほとんどです。

例えば、一般不妊検査を行った結果、女性の方は卵管が狭いことを指摘され、男性の方は精子の運動率が低かった。なんていうことは、かなり多くの症例で見受けられます。
つまり、「もしかして不妊症?」と疑い始めた時に、女性が一人だけで来院してもほとんど意味が無いと言っても過言ではないわけです。

これらのことから、私に限らず、生殖医療に携わる多くの医療従事者が、不妊治療はなによりもパートナーと一緒に取り組むことが、ゴール(児の誕生)への近道だと考えています。

男性は「まぁ、俺は大丈夫だろう」といつまでも意識が低いままだと、後々に痛い仕打ちを喰らうことになるかもしれません。

まとめ

妊娠を考える年齢がどんどん高齢化している現代においては、本気で妊娠を目指すなら、とにかくネックになるのは時間(年齢)です。一周期一周期が真剣勝負になります。
病院にかかる際には、少しでも早い段階で、女性だけでなく男性も一緒に受診することが大切なのです。

▶︎知らなきゃ損する?!精液検査と男性不妊(後編)

企業担当者の方へ

ファミワンでは法人向けサービスとして、女性活躍推進を軸としたダイバーシティ経営を支援する法人向けプログラム『福利厚生サポート』を提供しています。従業員のヘルスリテラシー向上や、組織風土の変容に役立つのみならず、利用促進の広報資料の作成までカバーしており、ご担当者様の負荷の削減にもつながります。