【インタビューご担当者さま】
松岡優さま  積水ハウス株式会社 ESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部
(2024年9月1日付で別部署へご異動済み)

【会社紹介】
戸建・賃貸住宅やマンションをはじめ、街づくり、都市開発や国際事業など、よりよい住環境に貢献する事業を展開する大手ハウスメーカーである積水ハウス。

ーはじめに、自己紹介と御社の簡単な紹介をお願いします

松岡様:私はESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部で女性の健康課題に関する意識啓発に従事していましたが、現在は別部署に異動しております。

当社はグループ全体では約3万人の社員を抱え「人間愛」を企業理念としています。積水ハウスは2020年に創業60周年を迎えましたが、振り返るとグループの価値創造の歩みは30年ごとに3つのフェーズに分けることができます。

第一フェーズ(1960〜1990年)は「安心・安全」を重視し、住む人の命を守ることに力を注いできました。第二フェーズ(1990〜2020年)では住宅の断熱性能や空気環境の改善、ゼロエネルギーハウスの推進など、「快適性」と「環境配慮」の向上に取り組みました。そして現在、第三フェーズ(2020〜2050年)では「健康」「つながり」「学び」をテーマに、新たな価値提供を目指しています。

「第6次中期経営計画」では、”「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンを掲げており、より一層国内外での成長を目指しています。その一環として「人財価値の向上」と「社会価値の向上」を進めており、特に従業員の自律と健康づくりに力を入れています。

女性の健康課題解決としてセミナーやeラーニングの実施、生理用品を備えた「だれでもトイレ」の設置など幅広い施策を実施。

梅田スカイビル内に「だれでもトイレ」を設置し、生理用品を提供

ー女性の健康課題については、どのような取り組みがありますか?

松岡様:本格的な取り組みは最近始めたばかりです。2019年から新入社員、特に女性営業職を対象に「ホルモンリテラシー」の教育を開始しました。また、2022年からは当社または当社が所属するダイバーシティ西日本勉強会(本勉強会について詳細は後記)での取り組みにおいて、全従業員向けセミナーを実施しています。

2022年にはダイバーシティ西日本勉強会による「男女で取り組む女性の健康セミナー」、また当社による「仕事と不妊治療の両立セミナー」を開催しました。続く2023年には当社による「みんなの生理研修」、そしてダイバーシティ西日本勉強会による「女性の健康促進と不妊治療セミナー」「女性の健康促進と更年期障害セミナー」を開催しました。

2022年には、積水ハウス本社の入っている梅田スカイビル内に「だれでもトイレ」を設置し、生理用品を提供する取り組みも行いました。さらに、国際女性デーに合わせて「みんなの生理研修」など、ランチタイムセミナー「ランチケーション」も実施しています。こうした取り組みは、社内外の女性が安心して働ける環境作りに繋がっています。

2019年には「がんまたは不妊治療と職業生活における両立支援規則」を制定し、既存の制度の適用範囲(育児・介護等)をがんまたは不妊治療中の従業員にも拡大しました。所定勤務時間の短縮(2時間まで/日、15分単位で取得可)、週の所定勤務日数の短縮(週休3日/曜日指定)など治療と就労の両立支援を行っています。

ー様々な取り組みを実施されているのですね。社員の方からの声や反響はいかがでしょうか?

松岡様:特にセミナー参加者からは「女性の健康課題について知識を深められた」という声が多く寄せられています。上司が女性社員の健康課題に関して積極的に声をかけるきっかけになったという意見もありました。男性社員も女性のホルモンバランスについて理解を深めることで、日常の業務管理やチームマネジメントがスムーズになると感じているようです。

2024年には、さらにeラーニングを活用した取り組みを進めています。9月に締め切りとなる生理に関する動画研修では、クイズ形式で学びを深める内容になっています。

複数企業と実施している勉強会では、互いに学び合う活発な企業間交流の場に。さらに新しい取り組みのきっかけにもなった。

ーダイバーシティ西日本勉強会について、もう少し詳しく教えてください。どのような形で企業同士が協力しているのですか?

松岡様:この勉強会には約50社が参加しており、テーマごとに分科会が形成されています。例えば、女性の健康やがん治療と仕事の両立をテーマにした分科会や、LGBTQ、男性の育休促進など多岐にわたるテーマが扱われています。分科会ごとに様々な企業が参加しています。各分科会は毎月1回程ミーティングを行い、その年の目標に向けて活動を進めています。私もいくつかの分科会に参加しており、他の企業の担当者と月に2回ほど顔を合わせる機会があります。これを通じて、他社との交流や情報交換が活発に行われ、時には一緒に飲みに行くこともあります。

実際に、他の企業から「積水ハウスさんでこんな取り組みをしていましたよね」といった形で声をかけていただくことも多く、そうしたつながりが新しい取り組みを生むきっかけになっています。

ー企業間の交流がとても密接であることが伝わりますね。勉強会を通じて、どのような成果や新しい取り組みが生まれましたか?

松岡様:例えば、不登校の子どもを持つ親をサポートする制度については、京セラさんからも興味を持っていただき、当社が連携しているフリースクールを運営しているNPO団体を紹介したことがきっかけで、京セラさんでもセミナーが実施されました。こうした連携は、企業同士が互いに学び合い、新しい取り組みを促進するための重要な要素となっています。

健康課題について広く対応できる専門家が揃っていることを魅力に感じ、ファミワンによるセミナーを開催。

ー様々な取り組みをされる中で、2024年6月 ファミワンによるセミナー「女性の健康課題と仕事の両立 ーチームの一員として理解を深めるー」の開催のきっかけを教えていただけますでしょうか。

松岡様:以前ファミワンさんのセミナーに参加したことがあり、相談チケットの配布がある点がいいなと思っていました。セミナー参加者がどのような思い・立場で参加しているのかがどうしても見えにくいため、相談チケットの利用などから見えるのではないかと考えたことが一つのきっかけです。

ーファミワンにはどのような期待をいただいていましたか?

松岡様:ファミワンさんは健康課題全般について、濃淡なく知識を持った専門家が揃っていることが魅力的だと感じていて、期待を寄せていました。

ーファミワンによる効果はありましたか?

松岡様:効果と言えるものはこれから、という段階ではあります。今後は現在実施中の生理のeラーニングのような機会にも「ファミワンさんのセミナーに参加したから知っているよ」という声や他者理解を行動に移せる従業員が増えていけばいいなと考えています。

ーファミワンを導入して良かったことをお聞かせください。

松岡様:女性の健康課題全般を網羅していることと、セミナーでは登壇いただいたファミワン講師のお話が「女性が権利を主張している」といったことがなく、なぜ男女共に女性の健康について学ぶのか、その意義が伝わる内容で、ご依頼して本当に良かったと感じました。

女性の健康課題解決に向け、より気軽に相談ができる環境整備を目指す。

ー今後の展望についてお聞かせください。どのように女性の健康課題に取り組んでいく予定ですか?

松岡様:今後もだれもが力を最大限発揮できる職場環境づくりのため、本人とマネージャーの理解促進の取り組みとして、生理痛体験研修やアバターをつかった相談プラットフォームなど、アイディアベースでの検討を開始しているところです。

あとはマネージメント層の理解浸透がより進めばいいなと思っています。管理職の9割以上が男性という状況ですので、これまでのセミナー参加者のうち3割が男性というところはもう少し増やせたらと思っています。

ー最後に、世の中に伝えたいメッセージ等ありましたらお願いします。

松岡様:積水ハウスのグローバルビジョンが”「わが家」を世界一幸せな場所にする”ということで、「幸せ」をキーワードに様々な活動をしています。自分の身体のことを知る、メンバーの健康課題を一緒に考えるということは、みんなの幸せに繋がることでもあると思うので、引き続き真摯に向き合い、働きやすい環境作りに貢献していきたいと思います。
ダイバーシティー西日本勉強会の取り組みにおいても、今後も多くの企業と連携し共に成長し続ける企業でありたいと考えています。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました。