取組実績

島根県隠岐郡知夫村

命の大切さを伝えられた。卒業後もこのセミナーをお守りのように思ってもらいたい

インタビュー回答:知夫村役場 村民福祉課 保健師 戸谷 紗嘉さま

ファミワンでは経済産業省 令和3年度「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」における補助事業者に採択され、島根県知夫村の中学校3年生を対象に「中学校を卒業するあなたへ お守りになる命の学習」を2022年3月4日に開催いたしました。

本セミナーには、ファミワンの代表看護師で不妊症看護認定看護師の西岡有可と臨床心理士・公認心理師の戸田さやかが登壇しました。人間の尊厳や他者を尊重することについて包括的に学ぶ「包括的性教育」の観点から、自分や他者の命やからだの尊さを学び、避妊を含め自分を守ることの大切さについても触れました。また、島の保健師、戸谷様にもご参加いただき、正しい生活習慣を持ち、成人以降も健康を維持できるよう薬物やタバコ、アルコールや感染症などについても解説いただきました。

知夫村とは

知夫村は島根県隠岐諸島の最南端に位置する人口624人(令和4年1月1日時点)の離島で、広大な海と赤壁などの大絶景に囲まれています。本土からはフェリーで約2時間かかります。

村内には小中一貫校が1校で、児童生徒は合わせて33人ほど。高校がないため、中学卒業後はみな島外の高校へ通うことになります。島を出て本土の高校へ行く生徒もいることから、自分や他者の命やからだの尊さについての学びを「お守り」に、それぞれの道へ旅立ってほしい。そのような思いから、この春中学校を卒業する3年生へ向けて、性教育講座をお届けすることとなりました。

自分も他者も大事に思えるような学習について、取り組みが必要だと感じていた

ファミワンとのセミナー開催のきっかけは何でしたか?

戸谷様(以下敬称略):ファミワンのセミナー「子どもの権利を守れるまちづくり やさしい性教育」(フェムテック補助金事業で開催「妊活とヘルスケアセミナー」の第5回目)に参加し、その後ファミワンさまよりご連絡をいただいたことがきっかけでした。

ちょうど中学生が高校へ行く、島外へ通学したり生活したりするタイミングで性に関する知識をもってほしいと考えているところでしたので、とてもタイムリーにご縁をいただいた感じです。からだの仕組みや生理のことなどだけでなく、命の学習として、自分も他者も大事に思えるような学習について、取り組みが必要だと感じていました。タバコとアルコールについては特に、子どもは村の大人の様子を見て育つため、外部の先生の視点が必要だと思っていました。

タバコ、アルコールなど大人への生活習慣指導・保健指導と、その身近にいる子どもたちへの影響について課題を感じていた

セミナー実施前から感じていた妊活に関する課題はありますか?

戸谷:タバコ、アルコールについては、大人への生活習慣指導・保健指導の難しさを痛感していました。島ではタバコやお酒がコミュニケーションツールとなっている部分もあるので、「適切に」付き合う方法を模索しています。もちろん否定するわけではありませんが、指導はしていかなくてはならなく、その塩梅については課題に感じていました。また、薬物については県内でも少年の検挙などもあったので、いろいろな事例を知ることで、全く無縁の世界と切り離すのではなく、知識として持っていてもらいたいと思っていました。

その課題に対して、地域で取り組んでいたことはありましたか?

戸谷:少し前に村の「健康づくり推進協議会」で、地域の子供たちをタバコの害から守ろうという施策はありました。しかしながら役場の体制縮小にも伴い、健康づくり、ということが少し後回しになりつつあったのです。先ほども少し触れましたが、アルコールを控えてほしいなどのメッセージは文化として出しづらいところもあります。ただ、子どもへの教育については進めてもらうようにはしていますね。販売店や事業所へ訪問し、状況を確認させていただいたり、啓発をしたりしています。アルコールの本当の怖さをもっと身近な問題として、とらえてもらえるといいなと思っています。

高校から村外へ旅立つ子どもたちが、性のことに触れずに進学することにリスクを感じていた

性教育の部分の取り組みはどうでしょうか?

戸谷:実はしばらく、性にフォーカスはできていませんでした。ですが、村内で中学生まで過ごし、高校からは村外へ出るというタイミングで、性のことを触れずに進学することにリスクを感じていました。プライベートパーツという認識は甘かったと思いますし、大人も性に関しては比較的ざっくばらんに、オープンに語ってしまうところもありました。地域住民同士のコミュニケーションや交流が活発な分、大人のそういった発言などもアルコールの場で子供が耳にすることもあります。性についてはしかるべきタイミングで、まじめにやらないと、という思いはありました。避妊具は村内では購入できず、生理用品もすぐに買えるものではなく、そういう状況だからこそ、きちんとした教育が必要だと思っています。

からだの仕組みだけでなく、命の学習として、自分も他者も大事に思えるような学習への取り組みをこれからも続けていきたい

性教育について今後、島でやってみたいことはありますか?

今回セミナーを、中学三年生の卒業の時期と重ねての開催でとても良かったなと思っています。小規模でできたこともよかったので、今後もこれを定例にして行けたらいいなと思っています。

「自分も他人も大切にしていきたい」「自分だけでなく、友達も守れるようになりたい」といった感想がありました。次のステップに進まれる皆さんにとっては、学んだことを「お守り」としてもらえるようなセミナーになったのではないでしょうか。

受講者の生徒たちの視点が広がり、行動に活かすための心構えが聞けてうれしかったですね。また、 先生方からも好評でしたね。必要な取り組みだし、外部の講師にきてもらったからこそ、話が聞きやすかったとのこと。指導者側の意識の変容なども見込まれたことは良かったのではないでしょうか。

子どもを望む方や妊活・不妊治療する方が暮らしやすい社会、街とはどんなものでしょうか?また、それに向けて取り組みたいことはありますか?

地域性もあると思いますが、当村では出生数も少ないので、不妊治療の件数自体も少ないです。しかし、不妊治療が必要な場合は、通院が難しいので、移動費などもかかります。様々なケースがあるので難しい面もありますが、補助なども拡充していけたらと思っています。妊活だけでなく、補助を受けたい人が受けられるような設計をしていきたいです。子供を育てるための補助も手厚いものの、ご自身に負担のないよう家族計画を立ててもらいたいと思います。現在は、妊婦さんは出産が近づくと本土の病院に移る必要があるため、妊娠36週以降は宿泊補助も行っています。

今回ファミワンに依頼してよかったこと、一緒に取り組んでよかったことをお聞かせいただけますか?

村内に専門家がいないですし、そもそも移動も大変なので今回、オンラインツールで開催できてよかったです。また、いろんな大人からの視点、地域の身近な大人とはまた違った視点で子供たちにお話してもらえ、初めて知ったことも多かったようです。そのあたりも刺激になってよかったと思います。また、私自身が地域に根差した保健活動をしていますので、最近の流れや教育の実態は私自身の学びにもなりましたし、新しいことが勉強できました。ありがとうございました。

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自治体
島根県隠岐郡知夫村

住民数
624人(令和4年1月1日時点)

TOPICS

・タバコ、アルコールなど大人への生活習慣指導・保健指導と、その身近にいる子どもたちへの影響について課題を感じていた
・高校から村外へ旅立つ子どもたちが、性のことに触れずに進学することにリスクを感じていた
・からだの仕組みだけでなく、命の学習として、自分も他者も大事に思えるような学習への取り組みをこれからも続けていきたい

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