管理職のヘルスケアサポートへの理解促進、若い世代が行動を起こすキッカケとなったことは組織全体にとっての前進
田辺三菱製薬労働組合 中央執行委員 木野ゆりか様
【インタビューご担当者】
木野ゆりか様 田辺三菱製薬労働組合 中央執行委員
ご担当業務:DX部門における事業効率化・生活習慣改善アプリ開発担当、組合活動における企画、春闘での制度導入に向けた提言 等
【会社紹介】
「病と向き合うすべての人に希望ある選択肢を」をミッションに、医療用医薬品を中心とする医薬品の製造・販売を行っている田辺三菱製薬の労働組合
当事者も周囲の人も「直面する前に」知っておきたいヘルスケアの知識
――毎年ファミワンによるセミナーを開催いただいていますが、どのようなきっかけがありましたでしょうか?
木野様:
2017年12月にヒカリエで開催されたヘルスケアイベントで、ファミワンさんを知りました。不妊治療と仕事の両立について、個人的な経験や同僚の体験もあり「これは重要な課題だ」と強く感じていました。特に、治療に直面した後では対応が遅くなりがちで、退職に追い込まれた方もいました。ファミワンさんのセミナーを通じて、そうした問題に対するリテラシーを広め不妊治療の悩みを軽減するために、2018年から毎年依頼しています。
セミナーにて治療と仕事の両立についても具体的なイメージが持て、当事者はもちろん管理職の理解も深まった。
――2017年当時、不妊治療や妊活に対する社会的な認識はまだ十分ではなかったと思います。会社内でセミナー開催についてどのような反応がありましたか?
木野様:
ちょうど治療と仕事の両立が社内でも話題になっていた時期でした。私としては不妊治療との両立を重要視していました。多くの人が不妊治療の詳細を知らない中で、セミナーを通じて管理職にも理解を深めてもらい、サポート体制を強化するための知識を広めることができました。
――実際にセミナーを開催してみて、どのような反響がありましたか?
木野様:
参加者からは「次のステップがわかって安心した」といった声が多く寄せられました。不妊治療は単に1日で終わるものではなく、注射を打つ準備や病院への頻繁な通院が必要です。ファミワン講師(代表看護師 / 不妊症看護認定看護師)西岡さんのわかりやすい説明で、そういった現実を知り、テレワークやフレックスタイム制を利用できる制度の中で、治療と仕事の両立がどのように可能なのかを理解してもらえたことは非常に大きかったです。
セミナーや子宮年齢や子宮の状態を知ることができるチェックキットの配布が、受講者の行動に移すキッカケに。
――セミナー主催者として、特に嬉しかったことや印象に残っていることはありますか?
木野様
5年連続でセミナーを開催し、そのたびに内容を進化させてきました。例えば、初回は不妊治療の基礎を中心に、次回は体外受精や時短勤務制度の周知、そしてブライダルチェックの話なども取り上げました。特に「ブライダルチェックを受けてみました」という参加者の声は大変嬉しく「開催して本当に良かった」と感じました。また、卵子凍結セミナーでは、悩んでいた方々が「行動に移すきっかけになった」という声が寄せられたことも印象深いです。
――ブライダルチェックや卵子凍結についてのセミナーは、特に若い世代にとって有益だったのですね。
木野様:
そうですね。ブライダルチェックや卵子凍結の話を知らなかった若い世代が、セミナーを通じて行動に移したことは大きな成果です。昨年は、東京都(2022年度第1期にファミワンが参加 東京都スタートアップ社会実装促進事業 「PoC Ground Tokyo」)によるセミナー開催と併せて卵巣年齢や子宮内フローラのチェックキットも配布しましたが、すぐに完売状態でした。これにより、興味を持っている方が多いことが確認できました。
――参加者が実際に行動に移すことが、セミナーの大きな効果ですね。では、セミナーを実施する際に気をつけている点や工夫について教えてください。
木野様:
コロナ前は、昼休みにお弁当を提供しながらセミナーを開催することで、参加者の時間を有効に活用する工夫をしていました。また、管理職にも直接声をかける、動画共有など、参加者の幅を広げる努力をしています。こうした細かな配慮が、参加率や反応の向上につながっていると思います。
どんな部署でも、不妊治療やワークライフバランスと仕事の両立ができるようになることが課題。事例の共有や上司の理解を深め、どの選択も尊重できる職場を目指す。
――セミナーを開催した後、見えてきた課題はありますか?
木野様:
制度として不妊治療の際に利用可能な時短勤務を導入しました。今ではテレワークが普及し、時短勤務だけでなく柔軟に対応できるようになりました。しかし、仕事の内容や部署によってはフレックスタイムの活用が難しい場合もあります。例えば、午前中に病院の予定を入れると、午後の業務に支障が出ることもあるため、こうした事例の共有や上司、周囲の理解が必要だと感じています。
――制度があっても、実際に使うにはハードルがあるということですね。今後、どう解決していきたいと考えていますか?
木野様:
まずは、上司、周囲の意識改革が必要です。不妊治療やライフワークバランスに関する理解を深めてもらい、従業員が気軽に制度を活用できる環境を整えることが重要です。また、子供を持たないという選択も尊重し、押しつけにならないように配慮しながら、必要なサポートを提供していくことが課題です。
――不妊治療は個人の選択に関わる繊細な問題ですね。
木野様:
不妊治療に関する話題は、人によっては敏感に感じることもあります。そのため、どうやって本当に困っている人にリーチしていくかが今後の課題です。セミナーの内容やアプローチ方法を工夫し、必要な情報を適切に届ける努力を続けていきたいと思います。
――ありがとうございました。
社名
田辺三菱製薬株式会社
業種
医療用医薬品を中心とする医薬品の製造・販売
従業員数
5,577人(連結) 3,044人(単独)(2024年3月31日現在)
TOPICS
・2018年から毎年ファミワンのセミナーを開催
・セミナーを通じて管理職にも理解を深めてもらい、サポート体制を強化するための知識を広めることができた
・ブライダルチェックや卵子凍結の話を知らなかった若い世代が、セミナーを通じて行動に移したことは大きな成果