過去のハラスメント、会社としてどう対応したらいい?

過去のハラスメントを訴えられる場合がある

2020年6月より職場におけるハラスメント防止対策が強化され、パワーハラスメント防止措置が事業主の責任となりました。中小企業についても2022年4月から義務化されました。その変化を背景に退職した元従業員から過去のハラスメントに関してさかのぼって訴えられるというケースも多くなってきています。「あの上司のパワハラのせいでうつ病を発症した」、「あの上司のセクハラが酷くて会社を辞めざるを得なかった」などの訴えです。ここでは過去のハラスメントについて会社としてどう対応したらいいのかについて考えていきます。

また現在起こっているハラスメントについても、ハラスメントは起こっている最中よりも退職した後の方が被害を受けた側にとっては訴えやすいでしょう。もうその会社の従業員ではないことで影響を考えなくていいので申し出やすいということが考えられます。被害を受けた人がもうすでに退職してしまっている場合において、会社としてはどういう対応をすればいいのかについても考えていきましょう。

ハラスメントの時効について

まずは過去どこまで有効かという点ですが、ハラスメントの被害により損害賠償請求を申請する時効は、原則として「被害者が損害と加害者を知ったときから3年間」です。ただし、これらを知らないまま時間が流れたとしても、行為から20年間で損害賠償を請求する権利は失われます。基本的には3年間と捉えておきましょう。

 被害にあって退職した方は退職直前まで被害にあっていたことでしょう。退職から3年間はハラスメント被害を訴えられる可能性があると心得ておきましょう。

また、ハラスメントが生命や身体を害するものであった場合は、時効は5年に延長されます。暴力行為を伴うハラスメントであった場合も5年間はさかのぼって損害賠償を請求される可能性があります。

 ただ気をつけるべき点として、過去のハラスメントの訴えがあったとして、それが4年前の場合すぐさま「4年前なので時効です」と答えるのは不適切です。被害を受けた社員が在籍している場合などはセカンドハラスメントとして2次被害をもたらす可能性もあります。セカンドハラスメントとは、ハラスメントの被害を訴えたことによる二次被害のハラスメントです。他にも、すでに退職して3年以上経っていたとしてもハラスメント被害によって通院が続いている場合、問題が解決していず継続していると判断される場合があります。対応を間違うとさらに被害が拡大することも考えられるので、訴えがあった場合は慎重に対応してくことが大切です。

会社が問われる法的責任

次に、実際にハラスメントが起きた場合の会社が問われる法的責任についてここではサラッとではありますが押さえておきましょう。

①使用者責任

会社の従業員が他者に対して何らかの損害を与えた場合、会社が賠償しなければならない責任のこと。

②不法行為責任

ハラスメント行為に会社が加担していた場合、不法行為責任に問われます。

③債務不履行責任

労働契約法により、会社は従業員に対して安全配慮義務を負っています。相談窓口設置などの適切な義務をしていなかった場合、債務不履行責任が問われることもあるでしょう。

会社として対応を準備しておくことは大切

もし過去の訴えがあったなら、どう対応したらよいのでしょうか。ここでは気をつけるべき初動から考えていきましょう。

・受けとめる姿勢で訴えをしっかり聴く

「過去のことだから対応できません」などと答えてしまうと二次被害を起こしてしまうことになりかねません。まずはしっかりと訴えてきている相手の話を聴いていきましょう。しっかり聴くという姿勢を見せる必要があることは、話を聴くことになるだろう人全員に共有しておくことも忘れてはなりません。誰が訴えを受けても対応が同じになるようにしておく必要があります。

・事実確認をする

ハラスメントに関する事実関係を確認していきましょう。一方からの話だけでなく、訴えられている人の話や周囲の人たちの話も聞いて調書を作るようにしましょう。それぞれに言い分があるはずですので、事実確認は慎重に行います。言い分とは別に何が起こったのかに注目していく必要があるでしょう。

・対策委員会を立ててどう処理していくか決める

ハラスメントがあったことが事実なら処分も必要でしょう。ことによっては弁護士に相談する必要も出てくるかもしれません。会社としてどう判断するかが問われます。一人で決めるのではなくて何人かで相談して会社としての判断を出していきましょう。

・再発防止を徹底する

同じことが起こらないように社内教育の徹底が必要でしょう。予防としてハラスメントの知識に関する周知、起こった時の対応策について研修や朝礼、会議などを通じてハラスメントについて教育していきます。また、普段から職場の環境を整えておく環境改善は大事な再発防止策です。そもそもハラスメントが起きない職場環境に整えるために、従業員同士の信頼関係の構築、心理的安全性のある空気感を作っていくために今すべきことを見直していきましょう。

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