自律神経とメンタルヘルス
Depressed man image.

「ストレス」という言葉について、みなさんはどのようなイメージを持っていますか?
ストレスは睡眠の質や日中の活動量、食欲、気分、美容、腸内環境、ホルモン分泌など、さまざまなものに影響すると言われていますね。
ですが、ストレスとは一体何なのでしょうか?
ストレスを0にすることは果たして可能なのでしょうか?

「ストレス」の正体を知る

「ストレス」はもともと機械工学の用語で、「何らかの圧力がかかって物体にゆがみが生じた状態」のことを指します。そのゆがみの要因のことを「ストレッサー」と呼びます。
例えばゴムボールをぎゅっと握ったとき、握りによってかかる圧力のことをストレッサー、ボールがぐにゃりと歪んだ状態を、「ストレスがかかっている状態」と考えます。

この考え方を心身の状態に応用しているのが、私たちが普段から使っている「ストレス」という表現です。私たちに降りかかってくるストレスのもと、あらゆる刺激や出来事、変化のことを「ストレッサー」と呼びます。

例えば、
 ①雨が降ってきた
 ②部屋が暑い
 ③パートナーの小言
こういった様々な刺激をストレッサーといいます。同じ出来事でも、ストレッサーになるかどうかは個人差があります。

ストレッサーにも種類があります。例えば、この5つ。

  • 物理的・環境的ストレッサー…自分の力ではどうしようもない、天気の変化や騒音など
  • 経済的ストレッサー…物ではないが価値がある、お金や時間の不足など
  • 対人関係ストレッサー…人が関わるもの。家族や友人、同僚だけでなく、擦れ違いざまの赤の他人なども含まれる
  • やるべきことに関するストレッサー…日々のタスク、例えば仕事や家事、育児、介護などに関係するもの
  • 健康に関するストレッサー…自分の健康状態に関わるもので、例えば肩こりやだるさ、生理痛、腹痛など

ここに紹介したストレッサーが重複していたり、お互いに関係しあったりして複雑な心理・社会的ストレッサーとなっていることは少なくありません。

このように考えると、日常のあらゆることがストレッサーになるのですから、ストレスを0にすることはあまり現実的ではないと理解することができます。

ストレスへの反応の仕方

ストレッサーが降りかかったとき、心や体に起きる様々な反応のことを、「ストレス反応」といいます。先ほどのストレッサーとの関係をふまえて考えると、次のようになります。

  1. 雨が降ってきた(物理的・環境的ストレッサー)⇒身体が濡れる、冷えるストレス反応。
  2. 部屋が暑い(物理的・環境的ストレッサー)⇒汗をかいて不快だ、イライラするストレス反応。
  3. パートナーの小言(対人関係ストレッサー)⇒腹が立つ、気分が悪い、落ち込むストレス反応。

これらのストレス反応自体がストレッサーになって、さらにストレス反応を引き起こし、悪循環になる場合もあります。
ストレッサーによってストレス反応が引き起こされても、ストレッサー自体が消えてなくなったり、ストレス反応が治まったりすれば、あまり問題はありません。

また、全てのストレス反応は、自分の心や身体を守るために脳が機能して起こる正常な反応です。同じ出来事でもストレッサーになる人・ならない人がいるので、当然、ストレス反応が出る人・出ない人がいます。ストレスの感じ方や反応の仕方は人それぞれ違うということですね。

日常会話でよく聞く「やってもやっても仕事が終わらなくてストレスがたまるんだよ」というのは、次々に振ってくる仕事量の多さ(ストレッサー)に対して、疲労感や焦燥感といった何らかのストレス反応が起きている状態だと考えられます。

ストレスへの対処法、マインドフルネスとコーピング

ストレッサーを除去できない場合や、ストレス反応が継続する場合の対処法として、マインドフルネスや、コーピングという方法があります。

マインドフルネスとは、ストレッサーやストレス反応に気づきを向ける、すなわち自覚するということです。

ストレッサーやストレス反応の「良い」「悪い」「好き」「嫌い」「正しい」「間違い」を判断せず、いまこのとき、自分に起きているストレスとストレス反応に「ふ~ん、そうなんだ」とそのまま受け止める技です。

例えば、雨が降ってきて、体が冷えたとき、「いま、“嫌だ”と思ったな」と自分の状態に気付くこと。これがマインドフルネスです。イライラを感じた時に、ふと自分の置かれている環境や状況に注意を向けてみます。

「そうか、部屋が暑くて不快だからイライラするんだな」
「パートナーにぶっきらぼうな態度を取ってしまった。小言を言われて、責められているように感じたから嫌な気持ちになったんだな」

このように感じたことを自分で理解すると、ストレッサーに対して少し冷静になることができます。

次に、コーピングとは、ストレッサーやストレス反応に対して、何らかの具体的な対処や工夫をすることです。
例えば、このような行動がコーピング行動になります。

「雨が降ってきた。濡れるのが嫌だから傘を買う。」
「部屋が暑くてイライラするから冷たいドリンクを飲む。」
「パートナーの小言で落ち込んだから自室にこもる。」

コーピングには大きく3つの種類があります。(研究によっては6つや9つに分類しているものもあります)

  1. 感情を吐き出す・体を動かすなどリフレッシュ…叫ぶ、泣く、クッションを殴る、ジョギング、ストレッチ
  2. 問題を解決しようと真っ向勝負する… 勉強する、調べる、相談する
  3. 先延ばし・後回しにしておく・他のことをする…トイレにこもる、場所を変える、関係ない事をする、何もしない

3の、先延ばしにする・後回しにしておく・他のことをするコーピングは、一見すると良くないことのように感じるかもしれませんが、すぐに解決しようとせず距離をおくのも自分の身体と心を追い詰めないためには大切なスキルです。

誰もが自分で気づかないうちに、様々なコーピング行動を取っています。そのコーピングが良いか悪いかという評価はしません。どんな内容でもいいから、できるだけたくさんのコーピングを持っていることが重要です。

ご自身の普段の生活の中でも、「ストレッサー―ストレス反応-コーピング」の一連の流れが必ずあるはずです。ストレスへの対処力を高めたい場合は、この流れをまず自己観察してみましょう。

自分のストレスを見える化することが、マインドフルネスの第一歩です。そして、自分が持っている、ストレスを乗り越える力にも気づくことができます。また、余裕があるときに、コーピングのやり方を変えてみようかな、と試みることもできますね。

「人に話す」「情報を知る」こともストレス対処法

面と向かって人に話しにくいことや聞きにくいことが蓄積するのは、「人に言いにくいストレッサーを抱えている」「その話題を安心して話せる関係性の人がいない」といったことが考えられます。

「誰かに話したいな」「人の意見を聞いてみたいな」という自分の状態に気付いたとき、実際にその行動に移せるかどうかはストレス対処法としてとても重要です。

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