はじめに
関東を中心に、伝染性紅斑が流行しています。ここ数年、伝染性紅斑の流行はありませんでしたが、今年徐々に増加しており、神奈川県川崎市で6年ぶりの警報発令が出ています。
今は主に首都圏での流行ですが、これから全国的に流行する可能性もあります。11月以降も注意していきたい感染症の1つですので、解説していきます。
伝染性紅斑とは
顔や手足の発疹(紅斑)を主な症状で、小児を中心にしてみられる急性ウイルス性発疹症です。両頬がリンゴのように紅くなるため、「リンゴ病」ともいわれています。2歳〜12歳に多く、最も多いのは5〜9歳です。乳児、成人が罹患することもあります。
症状
潜伏期間は4〜15日です。
発疹
顔、とくに頬に境界が明瞭な紅斑が突然現れます。続いて、手足にレース様の紅斑が出てきます。一度消失した後も日光や精神的なストレス、外傷により再び出現することがあります。痛みや痒みはほとんどなく、1週間程度で改善していきます。
発疹以外の症状
発疹の1週間前に前駆症状として微熱や倦怠感があります。また、関節痛、咽頭痛、鼻汁、胃腸症状、粘膜疹、リンパ節腫張、関節炎を合併することがあります。関節痛・関節炎は、成人に多く、指に痛みや腫れが出ることがありますが、ほとんど合併症を起こすことなく自然に回復します。
合併症
ほとんどなく、予後は通常良好です。 しかし、受精2週以降の妊婦期間中に妊婦さんが感染すると、胎児の異常(胎児水腫)あるいは流産を起こすリスクがあります。妊娠前半期の感染では、より赤ちゃんへの影響があり危険が高いといわれていますが、妊娠どの時期においても注意が必要です。また、溶血性疾患を持っている人が感染すると、汎血球減少を起こし、貧血が強くなり重篤な状態を引き起こすがあります。
診断方法
特徴的な症状から、身体所見だけで診断がつくことが多いです。確定診断をする場合には、血液中のヒトパルボウイルスB19に対する抗体検査を行います。
治療方法
対症療法のみです。発疹の痒みがあれば、抗ヒスタミン剤を内服します。発熱や関節の痛みが辛いときは、解熱鎮痛剤を内服します。
予防方法
ワクチンはまだありません。
発疹がでる前の微熱や倦怠感がある時期には、感染力があります。発疹がでた後にはすでに感染力はなく、人にうつすことはありません。発疹がでるまで伝染性紅斑と気付かずに過ごしていることがあり、知らない間に人に移ってしまうため、感染対策も難しくなっています。
感染対策
感染している人の唾液を介してうつることが多くあるので、「手洗い、うがい、感染している人との接触を避ける」などの基本的な感染対策が必要です。妊婦の方は、とくに予防を徹底するようにお願いします。
感染経路は?
- 飛沫感染
くしゃみや咳、唾液などのしぶきに含まれるウイルスによって感染します。 - 接触感染
ウイルスのついた手で触り、口や鼻などの粘膜に入って感染します。
※感染力が強いのは、発疹がでる約1週間前でかぜに似た症状がある頃です。
妊婦さんの感染
- 手洗いの通常以上の徹底
流水・石鹸による手洗いでウイルスを除去しましょう!! - うがいの徹底
- マスクの着用
- 感染している人との接触を避ける
伝染性紅斑が流行している保育園や学校には行かない、送り迎えは控える、同じ食器は使わない、かぜのような症状がある人との接触を控える、など注意しましょう。
最後に
ワクチンがなく、治療も対症療法のみとなり、妊婦さんや溶血性疾患などの基礎疾患がある方は特に注意が必要です。妊娠前または妊娠中の女性の方は、抗体の有無を把握しておくことが重要です。抗体がなければ、伝染性紅斑が流行している保育園には行かず、自宅保育の選択を考えてください。パパや身近な家族の方の感染対策や協力も必要になってきますので、みなさんで一緒に乗り越えていきましょう。妊婦さんで万が一、感染が疑われるときは、産婦人科を受診してください。
【参考】
国立感染症研究所 伝染性紅斑とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html
厚生労働省 わかりやすい感染症Q&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou16/01.html