
お子さんが保育園に通っていると、「溶連菌感染症」という病気を耳にすることが多いのではないでしょうか?よく聞く病気ですが、「どのような症状?」「家庭で気をつけることは?」と、子どもへの影響や家庭でのケアに悩む保護者の方も多いと思います。
今回は、溶連菌感染症の概要や家庭でのケア、保育園の登園目安についてご紹介します。
溶連菌感染症とは?
「A群溶血性レンサ球菌」という細菌が原因の感染症で、急性咽頭炎や化膿性皮膚感染症(とびひ)などを引き起こします。
潜伏期間は2〜5日で、流行時期は「冬」と「春〜初夏」とされています。
もっとも多いのは急性咽頭炎であるため、この記事ではそれを中心に解説していきます。
感染経路
主に 飛沫感染 と 接触感染 によって広がります。
飛沫感染:くしゃみや咳、唾液などのしぶきに含まれる細菌によって感染します。
接触感染:細菌のついた手で口や鼻の粘膜に触れることで感染します。
症状
・発熱
・のどの痛み・腫れ
・リンパ節の腫れ
・舌がイチゴのように赤くなる「イチゴ舌」
・全身の発疹
・腹痛や嘔吐
鼻水や咳などの風邪症状は見られないことも特徴です。喉の痛みは1〜2日で軽快し、発疹は3〜4日で消えていきます。発疹のあとに皮がむけることもありますが、自然に治るため様子を見ていて大丈夫です。
受診の目安
以下のような症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。
・発熱とともに発疹が出てきたとき
・発熱がなくても舌が赤い、または発疹が全身に広がっているとき
夜間や休日などで受診に迷うときは、#8000(子ども医療電話相談)や、「こどもの救急」HPを活用すると安心です。
診断方法
迅速検査で診断が可能です。喉の粘膜を綿棒でこすって検体を採取し、15分程度で結果が出ます。
治療方法
ペニシリン系抗菌薬が使われます。合併症を防ぐためにも、10日間しっかりと抗菌薬を飲み切ることが大切です。症状がよくなったからといって、自己判断で服薬をやめないようにしましょう。
合併症はなに?
溶連菌感染症の合併症にはリウマチ熱や急性糸球体腎炎が挙げられています。
①リウマチ熱
症状:関節痛、発熱、胸痛や動悸、けいれんのような不随意運動、発疹など
原因:溶連菌感染症後に適切な抗生剤治療が済んでいないことによる
②急性糸球体腎炎
症状:むくみ、血尿など
原因:感染症、遺伝性疾患、自己免疫疾患など、様々な病気
予防策
現在、溶連菌感染症に対するワクチンはありません。
以下の予防策を徹底しましょう。
・手洗いやアルコール消毒による手指衛生
・おもちゃやドアノブなど共用物品の消毒
家庭でのケア
① 食事
のどが痛むため、酸っぱいもの・熱すぎるもの・かたいものは避け、のど越しのよい食べ物を選びましょう。
② 入浴
ぐったりしていなければ、短時間のシャワー程度なら問題ありません。
③ 服薬
決められた期間、抗菌薬をしっかり飲み切ることが大切です。
保育園・幼稚園にはいつから登園できる?
「保育所における感染症対策ガイドライン」では、「抗菌薬の内服開始から24〜48時間が経過していること」が登園の目安とされています。
体温は一日の中で変動するため、熱が下がってから24時間程度は自宅で様子を見ると安心です。症状の程度や園の方針によっても登園の判断が変わることがあるので、主治医や園に確認してみましょう。
こんなときはもう一度受診を
以下のような症状が見られたら、再度受診を検討しましょう。
・2日以上経っても熱が下がらない
・喉の痛みが強く、水分が取れずにぐったりしている
・内服終了後1〜4週間以内に、元気がない、尿が少ない、顔がむくむ、血尿が出る
これらは合併症のサインである可能性があるため、注意して経過を見てあげてください。
知ってる?劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
溶連菌には、多くの種類があるのですが、まれに引き起こされることがある重篤な病状として、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)が挙げられています。
TVニュースでも取り上げられており、近年増加傾向にあるようです。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、突発的に発症し、敗血症などの重篤な症状を引き起こし急速に多臓器不全が進行することがある重症感染症です。その死亡率は約30%とされていますが、重症化するメカニズムはまだ解明されていません。
〔参考文献〕
・日本外来小児科学会(編). ママ&パパにつたえたい 子どもの病気ホームケアガイド 第5版. 医歯薬出版, 2020年.
・保育所における感染症対策ガイドライン (2018 年改訂版)
・“A群溶血性レンサ球菌咽頭炎”. 国立健康危機管理研究機構.参照 2025年4月10日)
・”溶連菌(A群レンサ球菌)感染症”.国立研究開発法人 国立成育医療研究センター.(参照 2025年4月10日)
・”劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)”.厚生労働省.(参照 2025年4月11日)
・Geoffrey A. Weinberg,”リウマチ熱”.MSDマニュアル家庭版.(参照2025年4月11日)
・Frank O'Brien.”糸球体腎炎”.MSDマニュアル家庭版.(参照2025年4月11日)