いよいよ胚移殖、これまでの治療本当にお疲れ様でした。ここから先は、ゆったりとした気持ちで 卵を迎えられるといいですね。前半は着床しやすい体作りの基本編、後半は応用編についてお 話致します。具体的な漢方名も載せていますが、もし試してみたい場合は専門家に相談して より 体の状態に合ったものを選んでください。
基本編1 血を増やし巡らせる
胚移植とは、子宮という「土壌」に受精卵という「種」をまくようなイメージです。栄養豊富でふっくら した土壌を準備し、赤ちゃんが育ちやすい環境を整えましょう。着床を助ける体作りの基本は、血 を増やし巡らせること。血を増やすことで、子宮内膜は厚くなり卵に栄養が送られやすくなりま す。また、血を巡らせることで子宮内膜は柔らかくなり、卵が潜り込みやすくなるのです。卵が子 宮内膜に潜り込みそこに根をはやす、これが着床です。
さらに、漢方で考える「血」にはメンタルを安定させる作用があります。不安を感じやすい方は、移 殖周期前から血を増やすことを意識してみて下さい。いくら妊活に冷えが大敵だからといって、激 しい運動やホットヨガなどは体を消耗するので控えめに。
〜血を増やし巡らせる漢方薬〜
- 当帰芍薬散...病院で出してもらいやすく、妊娠中のむくみ改善にも◎
- 婦宝当帰膠...妊活では有名な漢方薬。当帰の含有量が多く優れもの。
「当帰」は流産を予防する安胎薬としても使われます。
基本編2 補腎
漢方では「腎」が子宮や卵巣などの生殖機能をコントロールしていると考えます。妊娠力に大切 なのは実年齢より「腎年齢」と言われるほどです。卵の成長や着床、妊娠の継続をサポートした い時に使うのが補腎薬。補腎とは漢方で行うアンチエイジングを意味します。 補腎薬は体質(ほてりタイプ、冷えタイプ、胃腸が弱いタイプなど)に合わせた使い分けが必要に なりますので、詳しくは専門家にご相談ください。
応用1 緊張をほぐす
妊活中は心配事が多く、なかなか気が休まりませんよね。緊張すると血管が収縮し体も緊張して しまうので、まずは体をほぐしてみましょう。リラックスの養生といえばお散歩です。頑張って歩く のではなく、気の向くままにぶらぶらするくらいが◎ 考えすぎて頭に昇った血を、子宮がある下 半身に降ろすという意味でも足を動かすのは効果的です。体を動かすことに不安があったり、病 院から安静の指示が出ている場合は横になってゆっくりされて下さいね。 おへそから指4本分下のところに「関元(かんげん)」というツボがあり、着床を助けるツボとしても 使われます。また、胸の真ん中にある「膻中(だんちゅう)」も緊張をほぐすツボとしてお勧めで す。押すのではなく、ゆっくり手を当て温めてみて下さい。気休めと思われるかもしれませんが 「気を休める」ことが大事なのです。
〜体をリラックスさせる漢方薬〜
- 帰脾湯...胃腸が弱く、不眠や不安感がある方に向いていて、安胎作用もあります。
- 逍遙散...気持ちが浮き沈みしやすく、睡眠途中に目が覚める方に向いています。
加味帰脾湯より帰脾湯、加味逍遙散より逍遙散をお勧めします。服用量などの調整は専門家に ご相談下さい。
応用編2 安胎に使われる漢方薬
病院の検査で具体的に原因が判明しているけどなかなかうまくいかない場合、漢方薬の服用で 良い結果が出ることがあります。参考までに漢方名を掲載していますが、服用される際は病院や 専門家へご相談ください。また出血がある場合は、必ず病院で診察してもらいましょう。
免疫性不育症:柴苓湯など
不正性器出血:芎帰膠艾湯、帰脾湯など
切迫流産:当帰芍薬散など
〜流産に繋がる漢方薬・ハーブティ〜
胚移植後は、下剤の服用を避けて下さい。特に、大黄(ダイオウ)、センナ、キャンドルブッシュを 含む漢方薬やハーブティーは子宮収縮作用があるので要注意。漢方薬では、大黄甘草湯、防風 通聖散(商品名:ナイシトール、コッコアポA)、桃核承気湯、大柴胡湯などに含まれます。 高温期〜妊娠中はホルモンの関係で便秘になりやすい時期ですが、基本的には食事で改善す ることを心がけて下さい。朝一番のお白湯、具沢山味噌汁、亜麻仁油やえごま油は妊娠中の体 にも良く便秘改善に効果的です。薬を飲む際は、病院で安全な薬を処方してもらいましょう。
まとめ
妊活に関する情報が溢れ、何を信じたら良いのか考えるだけで疲れてしまいますよね。現場では よく使われている漢方薬でも、ネットで調べると「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投 与しないことが望ましい。」と出てくるものが多くあります。 不妊治療をどこの病院で行うかが大切なように、漢方薬を取り入れる際も誰に相談するか、安心 して服用できるかが重要です。身近に妊活相談を得意とする漢方薬局があれば、話だけでも聞 きに行かれると良いかもしれません。体と心を整えるだけでなく、ゆっくり話を聞いてもらうことで 治療が良い方向へ進む事もありますよ。
