「性教育について伝えられる場を作りたい」と、小学生の子どもを持つファミワンのメンバーが話し合い開催している「こども性教育セミナー」も、今年で4年目となりました。今年は2月・8月と2回開催することが決定しており、今回は「進級特別編」として、「今知っておきたいこと ~新時代の包括的性教育~」をテーマに、低学年向け・高学年向け、そして保護者向けの3本立てでの開催となりました。更に今回は、千葉県松戸市施行80周年記念行事として、古ヶ崎市民センターにて現地ライブ上映も行いました。
保護者・関係者向けセミナー
ご参加いただいたのは保護者の方が65%と一番多く、教育関係者、医療関係者、自治体関係者の方にもご参加いただきました。
①包括的性教育について
包括的性教育とは、「性の学習を保障することは性の権利(セクシュアル・ライツ)である」ということを前提に、性に関する知識やスキルだけでなく、人権・ジェンダー観・多様性・幸福を学ぶ性教育です。2009年にユネスコが中心となってエビデンスに基づいて作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、包括的性教育についてまとめられています。
『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』には8つのキーコンセプトがあり、8つ全てが同等に重要であり、他のキーコンセプトと関連付けながら教育をしていくことが意図されています。
また子どもの年齢で4つのグループに分けられており、それぞれの年齢や発達段階に合わせた内容で8つのキーコンセプトについて伝えていくことを推奨しています。5歳未満については、それぞれの国の事情に合わせて判断するべきであるとされています。
包括的性教育には、初交年齢が遅くなる、性交渉の頻度が減る、性的パートナーの数が減る、リスクの高い行為が減る、コンドームの使用が増える、避妊具の使用が増える、などの効果があります。「~してはいけない」を促進する教育のみでは、初交の年齢を遅らせたり、頻繁な性行為を減らしたりする効果はないと言われています。
ここで、包括的性教育を適切に受けることのメリットをご紹介します。
性や人間関係について親へ相談、報告ができる
困りごとがあった時に、信頼できる大人に相談ができるようになります。
そして相談してもらうことで大人が一緒に考えることができ、子どもの意思決定を助けるきっかけにもなります。
困難な状況下で対応できたことでの自己肯定感のアップ
NOの権利を持っていることを理解してNOと主張することができると、状況を変えることができた達成感から自信につながります。
性的な関係において自分が持つ権利への理解が深まる
乳幼児期のうちから、知らない人に体をむやみに触られることはおかしいこと、自分が他人の体に勝手に触るのはおかしいこと、という考えが身につきます。
② 家庭で行う包括的性教育
(1) プライベートパーツ
口、胸、性器、おしりをプライベートパーツと呼びます。
身体は全部、大切です。その中でも特にプライベートパーツは、自分以外の人に勝手に見せたり触らせたりしてはいけない、自分だけの大切な場所です。
遊びのつもりでも、家族や仲の良い友達でも、誰かのプライベートパーツを見ようとしたり、触ろうとしたりしてはいけません。薬を塗らなければいけないなど触る必要があるときは、必ず相手に許可を取りましょう。
(2) 同意
家庭内でも、くすぐり合いをしたりすることがありますよね。遊びの中で悪いタッチが起こるとき、顔は笑っていることも多いです。ですが、例え笑っていても、相手が「嫌だ」「やめて」と言ったときはやめるようにしなければいけません。家庭の中で、自分の「嫌だ」という言葉には価値があること、また相手が笑っているから「嫌だ」と言っても続けて良いのではなく、どんな時でも「嫌だ」と言ったらやめる必要があるという感覚を、幼少期から身に付けましょう。
(3) NO GO TELL
・NO! → いや!だめ!やめて!
嫌だと感じた時に、「いや!」「だめ!」「やめて!」と相手に伝えることは、とても大切です。反対に自分が相手から「いや!」と言われたときも、すぐにやめましょう。
・GO! → その場から離れる・逃げる、安心な場所・人の所へ行く
NO! と言っても相手が嫌なことをやめてくれなかったら、その場から離れましょう。安心な場所・人の所はどこなのか、親子でしっかり話し合っておくことが大切です。
・TELL! → 相談しやすい大人に話す、相談する
嫌だな、怖いな、と感じたことは、信頼できる大人に話しましょう。嫌なタッチをされたとき、誰が相談をしやすいか、どんな風に相談をするかなど、親子で話し合っておきましょう。
お子さんの中には、親や先生など大人の言葉は守らなくてはいけない、嫌と言ってはいけないと思っている子どももいますが、自分の体や心は自分だけのものです。何が嫌なのかは自分で決めて良いということ、そしてどんなに親しい友達や大人だったとしても、嫌なことは嫌と言って良い、ということを、年齢に関わらず繰り返し伝えましょう。
③子どもとインターネット・SNS犯罪
現在、10歳以上の子どものインターネット利用率は98.5%であり、その中で73.4%のお子さんがスマートフォンを利用しています。
保護者に求められていること
子どもがインターネットに触れる上で保護者に求められる責務は、青少年インターネット環境整備法で定められています。
フィルタリングの利用
SNSに起因する事犯による被害が多いのは、高校生、中学生です。XやInstagramは、検索のしやすさやDM機能などにより、特に被害が多いと言われています。また、SNSに関連して被害を受けた児童のうち、88.1%がフィルタリングを利用していなかったというデータもあります。
オンライン上での手口
オンライン上で子どもを手なずけようとする人は、下記のような手口で徐々に距離を詰めていきます。何度もやり取りをしながら、一人で過ごすことが多い子、普段ほめられていない子、話をきいてもらえていない子、ネットリテラシーの低い子、親の監視・管理が弱い子を探します。
警察庁ホームページにて(https://www.npa.go.jp/policy_area/no_cp/prevent/materials.html)、ネット上で起きている事件が漫画でわかりやすく紹介されています。どんなことが加害や被害になるのかを知っておくと、もしも同じようなことが起きたときに、「おかしいぞ」「大人に相談しよう」と気づくことが出来ます。
性的に子どもを手なづける5つのプロセス
こちらはインターネットの世界ではなく、実際の対面の世界で性的に子どもを手なずけようとする場合のプロセスです。これを知っておくことで、どういう風に子どもを手なずけていくのか、またどのような子が手なずけられてしまいやすいかを知ることができます。
親切にしてくれている大人に性的な目的があるかどうかを子どもたち自身が見極めることは難しく、子どもたちだけでは防ぐことができません。必要以上に身体接触をさせないことや、プライベートパーツ、NO GO TELL 、そして何が性暴力で何が被害なのかを親子で学ぶことがとても大切です。
④子どもを守るテクノロジー・サービス
キッズスマホはLINEなどのアプリ、カメラ機能、ネット検索などもできるのでキッズケータイに比べて便利ですが、制限が弱く、トラブルにつながるリスクが高くなります。
キッズフォンは、キャリアによって様々な安全機能が備わっています。保護者の皆さんが、どんな機能があるのかを知っておくことが重要です。
この他にも、以下のような様々なテクノロジー・サービスがありますので、ご家庭の方針に合ったものを選択してください。
- BoTトーク:目的地への到着や出発を保護者のスマホにプッシュ通知、トークを送り合うことも可能な子どもGPS
- みてねみまもりGPS:保護者がスマホアプリから位置情報を確認することができる子どもGPS
- コドマモ:安心して子どもにスマホを使ってもらうためのAIアプリ
- スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ:子どもたちが直面しやすい被害事例を疑似体験できるアプリ
また、保護者が青少年に携帯電話端末等を持たせる必要があると判断した場合に、携帯電話端末等やその機能を選ぶための目安・参考にしてもらうためのものとして作られた、東京都推奨携帯電話端末等及び機能一覧(https://www.pref.chiba.lg.jp/kkbunka/kenzenikusei/hokatoken/documents/r30728suishoichiran.pdf)もぜひ参考にしてみてください。
⑤Q&A
大前提として、プライベートパーツ、NO GO TELL、良いタッチ 悪いタッチを理解している必要があります。NO! という言葉は、その行為・行動を拒否しているのみであり、相手を拒絶している訳ではない(もう一緒に遊ばない、嫌いなどという意味ではない)、ということを親子で繰り返し話し、正しく理解して使用しましょう。
特性は子どもによって異なるので、それぞれに合わせた方法で繰り返し働きかける必要があります。視覚や聴覚、動きなど、何がその子にとって頭に残りやすい方法かを普段からよく観察し、それに合わせたアプローチをしましょう。
性に関する質問など、すぐに適切に答えられる自信がない時は、「今すぐにわからないから、調べる時間をちょうだい、わかったらまたお話しよう」「一緒に調べてみよう」などと伝え、一回時間をおいてきちんと話ができる準備を整えてから話すようにしましょう。また交尾という言葉は、性的な意味だけではなく、様々な意味があります。プライベートパーツなど体の部位の話の延長で、生物学的に説明することも良いでしょう。
ニュースで報じられていることは、何が事実かまだわからない段階で報じられていることもたくさんあることを理解する必要があります。その上で、どんな人であっても、相手の許可なくプライベートパーツを見たり、触ったりしてしまうことは性犯罪であるということを、改めて伝えましょう。
話すのが苦手というよりは、性教育に関する知識がなく、説明がうまくできない可能性が高いのではないでしょうか。例えば性教育の本を子どもと一緒に読んだり、今回のようなセミナーに一緒に参加するなど、子どもと一緒に学ぶ、知識をアップデートすることをおすすめします。
⑥性教育本
<絵本>
- はじめての「からだ」と「性」のえほん 『だいじだいじどーこだ』
(遠見才希子 (著)/川原瑞丸 (イラスト),大泉書店,2021年7月 )
プライベートパーツについて、幼児向けにわかりやすく説明されています。 - いろいろ いろんな かぞくのほん
(メアリ ホフマン (著)/ ロス アスクィス (イラスト)/ 杉本 詠美 (訳),少年写真新聞社,2018年2月)
色々な形の家族があること、多様性についてわかりやすく説明されています。性別の話だけでなく、障がいなどについても盛り込まれています。 - あかちゃんはどうやってできるの?
(コーリー・シルヴァーバーグ(著)/ フィオナ・スミス(絵)/たち あすか(訳),岩波書店,2023年6月)
赤ちゃんを作るには精子・卵子・子宮が必要であるということを説明しています。性別には触れずに説明されているので、ニュートラルな気持ちで読める本です。
<大人・思春期のお子様向け>
- わたしの心と体を守る本
(遠見 才希子(著)/アベナオミ(漫画)/碇 優子(イラスト),KADOKAWA,2022年8月) - おうち性教育はじめます
(フクチ マミ (著)/村瀬 幸浩 (著),KADOKAWA,2020年3月) - 13歳までに伝えたい 男の子の心と体のこと
( やまがたてるえ (著),かんき出版 ,2022年3月)
⑦性教育サイト
- 命育:家庭でできる性教育サイト
https://meiiku.com/ - セイシル:思春期のお子様が性について調べるのにおすすめのサイト
https://seicil.com/
セミナー後の感想
- プライベートパーツ、NOGOTELLなどわかりやすい説明でした。キッズケータイやおすすめの本など、詳しく教えてくださり、大変有意義な時間でした!
- 性に対する興味関心が出てきた頃の子ども達への伝え方が分からない事が多かったので、今日のセミナーを通して日々の声掛けや関わりが大事なことを知ることができました。これから、しっかりと話して、子ども自身で自衛出来るようになれたらと思います。
- 性の話をするプロセスを知ることが出来た。日頃からこどもと信頼を築くことの重要性が分かりました。
- SNS 被害について、とてもわかりやすかったです。SNS 被害が増えていて、子どもが被害にあわないためにも学びが必要と思って参加しました。色々な、ブロックの方法があるので良かったです。ありがとうございました。
2024年夏の開催も決定
毎年夏休みに開催している「夏休みスペシャル」の性教育セミナーにつきまして、今年も開催が決定いたしました!
詳細は改めてお知らせとなりますが、ぜひ決まり次第お知らせがほしい!という方は下記先行フォームへご登録のほどお願いいたします。
▼2024夏こども性教育セミナー 先行ご案内登録サイト
https://event.famione.com/seikyouiku2024summer
終わりに
ファミワンでは、学校や自治体、企業に向け、多岐に渡るセミナーを開催しております。性教育のみならず、健康に関する様々なセミナーの開催が可能ですので、お問合せください。次回夏の性教育セミナーは、皆様のお声を参考に更にパワーアップして開催予定です。ぜひ、親子でご一緒にご参加くださいませ。