不妊症と、樹の精霊と、ヤムイモ、のお話し ~ある国に古代から伝わる伝説 Part.①~

皆さんこんにちは。胚培養士の川口 優太郎です。
今回は、古代から伝わる豊穣や子宝の象徴とされる食材と、その地域に伝わる伝説についてのお話しです。
皆さんは、アフリカのある国に、『双子の都』とまで呼ばれる、世界で最も“双子”の出生率が高い地域があることをご存知でしょうか?
そのある国とは、西アフリカに位置するナイジェリアです。
今回のコラムでは、ナイジェリアの『双子の都』といわれるイボ・オラ地域と、ナイジェリアに古代から伝わる伝説・おとぎ話について、生殖医療の視点から解説をしてみたいと思います。
私のコラムはいつも“堅苦しい”と言われがち‥‥ですので、たまにはこんな内容もどうでしょうか??

アフリカで最も人口の多い経済大国

ナイジェリアは、人口がなんと日本のおよそ倍もあり2億1140万人で世界人口ランキング第7位、アフリカ大陸で見れば最大の人口を誇る国でもあります。

また、合計特殊出生率は5.1(※一人の女性が生涯に産む子どもの数/2022年データ)で、若者人口(64歳以下の人口)の割合が世界的に見ても多い国の一つとしても知られており、その人口の数と経済規模から「アフリカの巨人」と称され、南アフリカと並ぶアフリカ最大規模の経済大国でもあります。

そんなナイジェリアですが、オヨ州というところにあるイボ・オラという地域は「世界で最も双子の出生率が高い街」と言われており『Twins Capital of the World;世界の双子の都』として世界から注目をされています。

この『双子の都』について、もう少し深堀してみましょう。

双子の割合については学術的な論文でも数多く報告されている

ナイジェリア南西部オヨ州イボ・オラという地域では、世界の他の都市と比較しても、多胎妊娠が顕著に多いことが知られています。

実際に、2008年にJournal of Biosocial Science(英・ケンブリッジ大学の出版局が発刊する社会生物学誌)に、ナイジェリアとイギリスの研究チームが発表した論文では、一般的に双子の出生率の世界平均は1,000人あたり約12人程度であるとされているのに対し、イボ・オラ地域では1,000人あたり約50~60人であると報告されています。

また、同じ研究チームが2011年に発表した論文では、イボ・オラで生まれる双子のうち、一卵性双生児(一つの受精卵が2つに分かれる。双子で同じ遺伝子を持つ)はごく僅かで、双子の多くは非同一の遺伝子を持つ二卵性双生児(排卵時に複数の卵子が排卵して受精・着床している)であると報告しています。

この地域の文化として、双子が産まれた場合には、性別に関係なく姉・兄を「世界を試す者」を意味するTaiwo(タイウォ)と呼び、妹・弟を「後から追従する者」を意味する Kehinde(ケヒンデ)と呼ぶそうです。

なぜ、イボ・オラに多胎出産が多いのか?については、その理由の解明するために、医学・生物学・社会学的なアプローチだけではなく、歴史学・民俗学・宗教学など、世界中のあらゆる分野の研究者たちが取り組んでいるテーマでもあります。

双子は神様からの贈り物という伝説

イボ・オラは、14世紀~19世紀にかけてナイジェリア西部を支配していたヨルバ族のオヨ王国から、内乱によって国を追放されたオベ・アラデ王子によって建国されました。

ヨルバ族には、さまざまな神話が言い伝えとして残されており、『オグンの神話』は本になったりゲームのキャラクターとして登場したりもしているので、もしかしたら聞いたことがある人もいるかもしれません。

このイボ・オラ地域には、古代からいまもなお語り継がれるこんな「伝説」があります。

オヨ王国を追放された王子は、イボ・オラ地域に移り住み新たな国を建国して、妻とともに新しい生活を始めます。しかしながら、なかなか子どもに恵まれなかった王子夫妻は、ヨルバの神々に毎日祈りを捧げます。

するとある日、ヨルバの神々から、ヤムイモ・イナゴ豆・メロンの種・オクラの葉などの供物を、妻と2人で捧げるようにとのお告げを受け、王子夫妻は神々に言われた通り供物を捧げます。

その結果、ヨルバの神々が供物を大変喜び、そのお礼として王子夫妻のもとに双子を授けました。以後、イボ・オラでは多くの双子が産まれるようになった‥‥というものです。

現在では、これらの供物の食材を使ったIRASA(イラサ)という鍋料理があり、主食であるヤムイモとともに、豊穣を願う儀式などで頻繁に食べられているそうです。

なかなか面白いお話しですよね!

次回の、〖不妊症と、樹の精霊と、ヤムイモ、のお話し ~ある国に古代から伝わる伝説 Part.➁~〗では、なぜ双子が多く産まれるのか?について、その理由や現在までに行われている研究による見解、また、ナイジェリアに古くから伝わるヤムイモにまつわるおとぎ話や、日本の食文化との関わり合いなどをご紹介したいと思います。

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