硬い便で泣く子どもを助ける!お母さんのための「便秘解消マニュアル」

はじめに

子どもの便秘は、乳幼児から学童期まで幅広く見られる症状です。特に赤ちゃんや幼児は排便の間隔に個人差が大きく、毎日排便があっても便が硬く、排便時に泣いたり嫌がったりする場合もあります。
便秘が続くと腹痛や食欲不振、肛門の傷などを引き起こすこともあります。ここでは、便秘の主な原因、家庭でできる対策、医療機関の受診目安をまとめます。

1.便秘の定義

便秘は単に数日便が出ないというだけではなく、排便が順調に行えず、身体的または精神的に不快な状態が続くことを指します。

一般的に週2回未満の排便や、硬い便が出る・排便時に痛みを伴う・すっきり出ないといった状態が便秘とされます。
小児慢性便秘症診断基準では、以下のうち2つ以上が1か月以上続く場合を便秘としています。

・週2回未満の排便
・排便時の強い痛みや過度の力み
・硬便の排出
・直腸に便がたまっている所見(触診やエコー、レントゲンなど)


図参照 ブリストル便形状スケール

2.子どもの便秘の主な原因 

①食生活の偏り

・食物繊維不足:野菜・果物・海藻・豆類が少ないと便が硬くなりやすいです
・水分不足:体内の水分が不足すると便が乾燥し、出にくくなります
・偏った食事:乳製品や炭水化物ばかりの食事が続くと腸の動きが低下します

②排便習慣の乱れ

・遊びや登園・登校準備でトイレに行く時間がなく排便習慣が乱れます
・排便の失敗や排便時の痛みによるトイレへの恐怖・我慢

③生活リズムの乱れ

・睡眠不足や朝食抜きで腸のぜん動運動(腸の動き)が弱まってしまいます

④病気や薬の影響

・甲状腺機能低下症、ヒルシュスプルング病など
・鉄剤や咳止め薬の副作用で便秘になることがあります

3.家庭でできる便秘対策

①食事の工夫

・食物繊維を多く摂る・・・野菜(ブロッコリー、にんじん)、果物(りんご、キウイ)、海藻、豆類5など
・発酵食品・・・ヨーグルト、納豆、味噌汁で腸内環境を整えます
・水分補給・・・1日600~1000mlが目安ですが、子どもの1日の水分必要量は年齢や活動量、体重によって変わります。

一般的な目安は以下のとおりです。
0~11ヶ月 …体重1kgあたり150ml/日
1~6歳…体重1kgあたり100ml/日
小学生…体重1kgあたり80ml/日

たとえば5kgのお子様ですと5kg×150ml=(1日あたり)750mlが必要な水分量の目安です。
あくまで目安なので、欲しがっていたら1日量を超えて飲ませても問題ありめせん。
夏場や運動時、発熱時には多めに水分を取ることを心がけます。
1日量を超えることができなくても無理に飲ませようとせず、一つの目標として捉えて下さい。

・良質な脂質・・・オリーブオイルやごま油を取り入れることで便が柔らかくなります

②排便習慣

・朝食後にトイレに座る習慣をつけます
・踏み台を使って足がしっかり床につく姿勢で排便を促します
・遊びや外出中でも便意を我慢しないよう声かけをする

③生活リズムを整える

・早寝早起き、毎日の朝食を習慣化
・外遊びや運動で腸のぜん動運動を促進

④ マッサージ・体操

・お腹を「の」の字に優しくマッサージ
・適度な運動で腸の動きを助ける医療機関の受診目安

以下の症状がある場合は、小児科を受診しましょう。

・1週間以上排便がない
・排便時に強い痛みや出血
・お腹の張りや嘔吐がある
・下剤や浣腸がないと排便できない
・成長や体重に影響が出ている

小児科では問診や検査で原因を確認し、必要に応じて小児用の安全なお薬が処方されますが、年齢や体格により使い分けが必要です。
受診時には、症状を詳しく伝えられるようにアプリや冊子等で便秘日誌(排便記録)をつけておくと診断や治療に役立ちます。

図参照 日本小児栄養消化器肝臓学会 子どもの便秘 排便日誌


4.便秘のお薬について


便秘のお薬で最もよく使われるのは、浸透圧性下剤です。代表的な薬にはモビコール®、ラクツロースシロップ、酸化マグネシウム(マグミット®)があり、これらは腸の中で水分を保持して便を柔らかくします。
習慣性が少なく、長期間使えるため、小児の便秘治療の第一選択となります。
腸の動きを促す必要がある場合には、刺激性下剤(ラキソベロン®など)が使われることもあります。
こちらは腸のぜん動運動を活発にして便を出しやすくしますが、長く使うと腸が薬に慣れてしまうため、短期間の補助として使用されます。
また、整腸剤(ビオフェルミン®など)が処方され、腸内環境を整えて便通を改善することもあります。


便が肛門近くで詰まっていて、すぐに排便させたい場合には、坐薬や浣腸(グリセリン坐薬、イチジク浣腸®など)が用いられることもあります。
一時的な対応であり、便の状況と成長発達をみながら治療法は変化していきます。
1歳未満では腸の動きが未熟で、薬の作用が強く出る可能性があるため、坐薬や浣腸、綿棒刺激が勧められる場合が多いです。

それに併用し新生児から使用できる内服薬もあります。
マルツエキスといい、麦芽から作られた自然由来の甘いシロップで、腸内で善玉菌を増やし、腸の動きを活発にして便を柔らかくするお薬です。
生後1か月頃から使用でき、甘くて飲みやすいため、母乳やミルク、離乳食に混ぜて与えることができます。通常は1日3回、授乳や食後に与えますが、年齢や体重により量が異なるため、必ず指示や医師・薬剤師の説明に従います。
マルツエキスは作用が穏やかで、長期間の使用も比較的安全とされていますが、成分が糖に近いため、糖尿病や特別な代謝異常があるお子さんは使用前に必ず医師や薬剤師にご相談ください。


5.まとめ

子どもの便秘は排便回数にとらわれず、排便の痛みや便の性状をみて判断します。
原因は食生活や排便習慣、生活リズムなど様々ですが、子どもの場合は体質による要因も大きく関わります。
重症例や改善しない場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
家庭でのサポートと専門医の診療で、健康な排便習慣を身につけることができます。

参考文献
・日本小児栄養消化器肝臓学会 子どもの便秘
・日本小児栄養消化器肝臓学会 小児慢性機能性 診療ガイドライン

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