子宮筋腫など持病がある方の妊娠について

現在、晩婚化に伴い平均出産年齢は上昇傾向にあります。それに伴い、2010年の統計によると32.2%もの妊産婦が偶発合併症(妊娠に関わらず発症する病気)を患っています。

その偶発合併症の内訳としては、多い順に子宮疾患、呼吸器疾患、糖尿病、精神疾患、甲状腺疾患となります。

そこで今回は、子宮の病気と妊娠について説明していきます。

妊娠へ影響が考えられる子宮・子宮付属器の病気は子宮筋腫、子宮内膜症性のう胞(チョコレートのう腫)、卵巣のう腫、卵巣がん、子宮頸がん、子宮奇形などがあります。

その中で、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮頸がんの3つをお話ししていきます。

子宮筋腫

子宮の筋肉にコブができたものを筋腫といいます。子宮筋腫は成人女性に4-5人に1人は持っているといわれており、珍しい病気ではありません。筋腫の大きさや個数、位置によって妊娠への影響や妊娠中の管理が変わってきます。

子宮筋腫の症状は?

  • 月経量の増加
  • 月経が長引く
  • 月経痛の悪化
  • 不正出血
  • 頻尿や便秘、おなかの膨満感
  • 貧血

筋腫の位置によっては妊娠のしづらさや流産につながることもあります。

子宮筋腫の治療法は?

筋腫の個数や大きさ、症状に応じて変わります。無症状で、5-6㎝以下の巨大でない筋腫の場合は定期的な観察を超音波検査やCT・MRIで行います。

症状がある場合は原則は摘出術を行います。摘出術にはお腹を開いて行う方法と、内視鏡で行う方法があります。大きさや位置、個数により手術方法が変わります。妊娠の希望がある場合は医師に伝え、治療や手術の方法を相談しましょう。

妊娠中の子宮筋腫の影響は?

妊娠週数が進むと胎児の成長や筋腫の増大で詳細が見えにくくなるため、妊娠初期に超音波検査によって筋腫の大きさや位置、胎盤との位置関係を確認します。

妊娠中、筋腫によってこのような影響が考えられます。

  • 流産や早産
  • 胎児の成長の遅延
  • 胎児の体勢や位置(逆子や横位など)
  • 胎児が産道を通過できない
  • 胎盤の異常(剥がれてしまったり、子宮口と重なってしまう)
  • 筋腫の痛みが出現する

しかし、妊娠中に筋腫を取ることは流産率の上昇や、出血量の増加が予想されるため一般的には推奨されていません。

妊娠中から、経膣分娩が不可能だと予測される場合は予定的な帝王切開となります。また、筋腫を取る手術をした経験のある人も予定的な帝王切開となることがあります。

お産の時の子宮筋腫の影響は?

  • 陣痛が弱くなる
  • お産が進まない
  • 胎児が生まれるための姿勢をとれない
  • 産後の出血が多くなる

などが考えられます。

場合によっては経膣分娩から急遽、帝王切開になる可能性があります。 

帝王切開と筋腫の切除を同時に手術することは、出血が多くなるリスクが高くなるため、一般的には推奨されていません。

卵巣腫瘍

卵巣は最も腫瘍が生じやすく様々な種類の腫瘍ができやすいです。ですが、卵巣は腹部の奥にあるため初期症状は出にくく、腫瘍が大きくなって初めて気づかれることが多いです。

卵巣腫瘍のうち8割は良性の卵巣のう腫と呼ばれるものです。ほかの2割は悪性のもので、いわゆる卵巣がんに分類されます。今回は卵巣のう腫に絞ってお話をしていきます。

卵巣のう腫の症状は?

初期の段階で自覚症状はほとんどないといわれています。

進行してのう腫が大きくなってくると、腹痛や腰痛、圧迫による頻尿や便秘が起きることがあり、自分でお腹を触って気づく方もいます。のう腫が大きくなると、卵巣の根本が回転してねじれてしまう茎捻転(けいねんてん)といわれるものが起こる可能性が高くなります。茎捻転が起きた場合、激痛が生じます。完全にねじれてしまった場合、ねじれた先に血流がいかなくなるため壊死していきます。

卵巣のう腫の治療法は?

まず、内診や超音波検査、MRIや腫瘍マーカーなどでのう腫の種類を調べます。

7㎝以上ののう腫は茎捻転を起こす可能性があるため、原則としては取るための手術をします。卵巣は妊娠に関わる臓器のため、患者さんと話し合って切除部位を決めていくことが多いです。摘出しない場合は、定期的に通院してのう腫の経過観察をしていくことになります。

妊娠中やお産への卵巣のう腫の影響は?

妊娠中の超音波検査により発見される付属器の腫瘤は増加しており、5-6%に上るといわれています。良性ののう腫の場合、妊娠中継続的に大きさを計測します。チョコレート嚢胞やルテイン嚢胞など、のう腫の種類によっては直径5㎝以下の場合は妊娠16週までには消失することが多いです。一方で、5㎝以上の場合は自然に退縮していく可能性は低くなるといわれています。

また他にも、デルモイドといわれる消失することがないとみられるのう腫だった場合は、妊娠初期に摘出のための手術をするかどうかの選択を医師から聞かれることもあります。

 実は、妊娠中の良性の卵巣のう腫の手術適応の条件はまだ確立されていません。

そのため原則的には非妊時と同じようにのう腫が6㎝以下の時は経過観察を続け、10㎝以上の時は手術を勧めることが多いとされています。

10㎝以上ののう腫の場合、のう腫の破裂やお産の時の障害となることが増えるとされています。妊娠中に破裂や茎捻転が起きた場合は緊急手術となります。

のう腫が産道の通過に障害をきたすのであれば予定的な帝王切開となりますが、基本的には経膣でのお産が勧められています。

子宮頸がん

妊娠中に合併するがんの中で最も多いとされるのが子宮頸がんです。

子宮頸がんとは、子宮頚部という子宮の入り口近くの細胞で起こるがんです。発症の年齢は20代~30代後半であり、妊娠初期検査に子宮頸がん検査が含まれるため、そこで診断される方も少なくありません。

症状は初期はほとんどありませんが、進行するにつれて異常なおりものや不正出血、性行為の際の出血、下腹部の痛みが出現します。

子宮頸がんの検査、診断は?

・細胞診

子宮頚部の細胞を綿棒やブラシでこすって採取し、顕微鏡で調べる検査です。妊娠初期検査や自治体から案内される子宮頸がん検診で行われる検査になります。

この細胞診では、子宮頸がんの可能性があるかどうかを調べることができます。

・コルポスコピー検査

細胞診の検査で異常が見つかった場合、コルポスコピー検査を行う事になります。

コルポスコピーという拡大鏡で子宮頚部の細胞を診察します。

・組織診

コルポスコピー検査の際に子宮頚部の組織を一部採取し、病理検査を行います。細胞の種類を判別することができます。

初期段階の細胞の場合、自然に病変が消失しやすいため経過観察を行います。がんに近い細胞がでた場合は、がん化するのを予防するためにその部分の細胞を切除する手術を行います。

子宮頸がんの治療法は?

外科手術、放射線治療、薬物療法、レーザー治療などがあります。

外科手術の種類としては、

  • 円錐切除…子宮頚部の入り口を円錐型に切除するもの
  • 子宮頚部摘出術…子宮体部と卵巣以外を切除する
  • 子宮全摘手術…子宮をすべて取る

などがあります。妊娠を今後希望する方には円錐切除術や子宮頚部摘出術が推奨されますが、進行度によってはその選択ができない場合があります。

妊娠中の子宮頸がんの治療法は?

妊娠することや、妊娠中の胎児への子宮頸がんの影響はないといわれています。妊娠中であっても、子宮頸がん検査で異常が発見された場合、非妊時と同じようにコルポスコピーや病理検査を行います。病理検査の結果がんが認められた場合は、がんの進行度を診断するために妊娠中でも円錐切除術を行う事があります。その場合は妊娠14-15週に行われることが望ましいとされています。

子宮頸がんの術後に妊娠した場合は?

円錐切除術後の妊娠の場合、早産率が8-15%といわれています。また、後期流産や前期破水、帝王切開でのお産となる確率の増加も報告されています。そのため、円錐切除術の手術歴がある人は早産兆候がないか、頸管長や子宮収縮などについて妊婦健診や普段の生活でも注意していく必要があります。

おわりに

 今回は子宮の病気を持つ方の妊娠やお産への影響についてお話させていただきました。

「いつかは妊娠したいけど婦人科にいったことはないな…」という方もいるかもしれません。

子宮の病気は、妊娠や妊娠生活に影響します。また、妊娠を望んだ時に病気が発覚し、妊活を中断して治療をはじめる方もいらっしゃいます。婦人科での定期健診を受けることは今の自分のためにもなりますし、いつか妊娠したい未来の自分のためにもなります。

ファミワンでは妊娠を希望する方や、いつか妊娠したいという方のお悩み相談も受け付けておりますので、気になることがあればぜひご相談ください。


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