2024年度も継続中!東京都の卵子凍結に係る費用助成と卵子凍結の流れについて解説

東京都「卵子凍結にかかる費用助成」が2024年度も継続しています。東京都に住む18歳から39歳までの女性に対し、卵子凍結に係る費用の助成額は合計で30万円(最大)、凍結卵子を使用した生殖補助医療の助成額は、凍結卵子を融解し女性を行った場合に1回につき上限25万円(最大6回まで)支払われます。 この記事では、東京都「卵子凍結に係る費用助成」と卵子凍結の妊娠率・スケジュール等について詳しく解説します。

卵子凍結とは?

卵子凍結とは、将来の妊娠・体外受精に備えて、若いうちに自身の質の良い卵子を採取し、凍結保存しておくことです。凍結保存することで、若いときの生殖能力を保ったまま長期間の保存が可能になります。  卵子のもととなる「原子卵胞」は、生まれる前の胎児期から卵巣にあり、胎児期に一番数が多いです。そこから年齢を重ねるとともに、卵子も老化し数も減っていきます。

胎児期出生時思春期35歳
卵子の数約700万個約200万個約20~30万個約2~3万個
※個人差があります。

妊娠に関わる様々な要素のうち、卵子の質が妊娠能力に大きく影響するため、卵子凍結とは、将来の妊娠可能性を広げ、女性のライフプランやキャリアのサポートをする一つの手段と言えます。

卵子凍結における妊娠率

卵子凍結では、凍らせた卵子細胞を解凍して使用します。このため、凍結保存された卵子は大きな温度変化によるダメージを受けてしまいます。解凍した卵子細胞の生存率は40~70%程度と言われています。生存している卵子を精子と受精させ、受精できた卵を培養し、赤ちゃんになりそうな胚のみ移植します。この過程でさらに妊娠成功率が下がってしまい、卵子1個当たりの妊娠率は10%に満たない場合もあります。

しかし、この問題は十分な数の卵子を凍結保存しておくことで回避することが可能であり、できれば10個以上を保存することが重要といえます。

東京都卵子凍結に係る費用の助成について

東京都の「卵子凍結に係る費用助成」とは、将来の妊娠に備える選択肢の一つとして、「卵子凍結・保存費用」及び「凍結卵子を使用し、卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認をする費用」を補助する助成制度です。

対象者と対象要件

東京都に住む18歳から39歳までの女性※です。(※採卵を実施した日における年齢)すでに不妊症の診断を受けており、不妊治療を目的とした採卵・卵子凍結を行う方は、対象外となります。

東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業(小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業)の対象となる方も対象外となります。

また、以下の要件にすべて該当する方が対象になります。

  1. 都が開催する卵子凍結に係る費用の助成対象者向け説明会へ参加した後、調査事業への協力申請を行い、協力承認決定を受けること。
  2. 本人が説明会に参加した日から1年以内に、卵子凍結に係る医療行為を開始すること。
  3. 説明会への参加を申し込んだ日から未受精卵子の凍結が完了し、都へ申請する日までの間、継続して東京都の区域内に住民登録をしていること。
  4. 説明会へ参加した日以降に、登録医療機関において医療行為を開始すること。
  5. 採卵を実施した日における対象者の年齢が18歳以上40歳未満であること。
  6. 凍結卵子の売買、譲渡、その他第三者への提供を行わないこと。また、海外への移送は行わないこと。
  7. 凍結卵子を用いて生殖補助を実施する場合は、必ず夫(婚姻の届出をしていないが、事実上の婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の精子を使用すること。
  8. 卵子凍結後も都の実施する調査に対し、継続的に回答すること。(調査は令和10年度まで)
  9. 調査協力助成を受けようとする医療行為について、他の法令等の規定により、国又は地方公共団体の負担による医療に係る給付の対象とならないこと。

助成金額

助成の対象となるのは、採卵準備のための投薬・採卵・卵子凍結費用です。

助成額は合計で30万円(最大)で、卵子凍結を実施した年度に上限20万円、次年度以降、保管更新時の調査に回答した際に1年ごとに一律2万円(令和10年(2028)年度まで実施)です。※この助成金制度はお一人につき1回のみ受けられます。

また、凍結卵子を将来実際に使用して体外受精をする時にも費用がかかりますが、「凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成」を使用すれば、卵子融解・受精・胚培養・胚移植・妊娠確認までの費用にも助成が出ます。(※受精1回につき上限25万円(最大6回まで))

詳しくは東京都福祉保健局のHPをご確認ください。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/shiyou/gaiyou.html

助成金支給までの流れ

  1. 東京都が開催する説明会に参加
  2. 助成を受ける方向けの調査に協力可能であれば、調査事業への協力申請を提出
  3. 受領されると、調査協力申請決定通知が送られる
  4. 登録医療機関を受診 ※助成金を使うことをクリニックに伝えておきましょう。
  5. 採卵~卵子凍結を実施
  6. 都のアンケート調査に回答
  7. 助成金の申請を提出(上限20万円)
  8. 次年度以降は保管更新時のアンケート調査に回答し、助成金の申請を提出
    (上限2万円/年、最大5年間※2028年まで)

卵子凍結のスケジュール

登録医療機関から採卵する病院を選ぶ

東京都福祉保健局HPの卵子凍結登録医療機関一覧を確認し、登録のある施設から採卵する病院を選びます。

病院によって、卵子凍結の料金や治療方法が異なります。どこの病院で行うかどうかで、最終的な自己負担額に少し差が出てくる可能性があります。 また、卵子凍結が終了するまで病院に数回継続的な通院が必要になります。そのため、「費用」「通院のしやすさ」「病院の成績(妊娠率など)」「待ち時間」「採卵時の麻酔の種類」など、様々な点を踏まえて総合的に自分にあった病院を選択されることが望ましいです。

初診から卵子凍結までのスケジュール

初診から卵子凍結終了までスムーズできても1か月くらいかかります。
卵子凍結の薬開始は、生理が始まってからスタートになるので、生理時期に大きく影響されます。以下が卵子凍結スケジュールの大まかな流れです。※スケジュールは個人差があります。

通院回数来院時期内容注意点
1回目いつでも[初診]
問診
血液検査
超音波検査
採卵のための検査になります。結果が出るまで約1~2週間かかります。検査結果が出るまでは基本的に採卵のための薬を始めることはできません。
2回目生理開始から
1~3日目
[採卵周期開始]
血液検査(ホルモン値)
超音波検査
注射指導
薬処方
クリニック内でホルモン値を測定します。全ての検査・診察・指導が終了するまでおおよそ1時間~2時間ぐらいかかりることがあります。
3回目生理開始から
7~9日目
[卵胞発育をチェック]
血液検査(ホルモン値)
超音波検査
薬処方
4回目生理開始から
11~12日目
[卵胞発育をチェックし採卵日を決定]
血液検査(ホルモン値)
超音波検査
採卵の説明
薬処方
採卵日は、卵胞とホルモン値により決定します。数日は採卵日を都合によって変えることができるかもしれませんが、その場合、採卵が不成功になる可能性が高くなります。
5回目生理開始から
14日前後
[採卵(卵子凍結)]採卵当日は、なるべく安静が必要になります。
6回目採卵後2~3日目[経過観察]
血液検査
超音波検査
採卵後の卵巣の腫れなどをチェックします。

卵子凍結によるリスク・副作用

「採卵」による副作用は痛み・出血・感染などがあります。
「排卵誘発剤(卵胞を育てる薬)」による副作用として卵巣過剰刺激症候群(腹痛、腹部膨満感、血栓症)があります。
上記の、副作用が発生し入院を要するようなケースは、全体の1%以下です。

卵子凍結を受けた方からの声

よくある相談と回答

相談1:採卵の痛みが心配です。痛みを極力抑える方法はありますか?

回答:
採卵の痛みはかなり個人差があります。採卵予定個数が多かったり、内膜症・子宮筋腫などの婦人科疾患があったりすると、痛みが増強します。痛みがご心配なのであれば、静脈麻酔(眠った状態になる)を選択できる病院を選ぶと負担が軽減されると思います。

相談2:助成金の決定通知書がなかなか届きません。来ていなくても準備を始めることはできますか?

回答:
決定通知書交付前の治療も助成対象となりますので準備を始めることは可能です。ですが、万が一所定要件を満たしておらず助成対象外となった場合は、その時点までの医療機関でかかった費用については全額自己負担になります。

卵子凍結を受けてみての感想

今後のキャリアプランで、妊娠について不安に感じていたが、卵子凍結を頑張って、日々の焦りや不安から解放され、より仕事に対して前向きになれた。

病院を受診したら、すぐに採卵できると思っていた。準備から実際に卵子凍結できるまで1か月くらいかかり、申請期限ギリギリになってしまった。

採卵の痛みが怖くて、卵子凍結するのを迷っていたが、静脈麻酔を使ったら、あっという間に採卵が終わった。こんなに痛みを軽減できるなら、もっと早くやっておけば良かった。

自分が思っていたほど採卵で卵子が取れなかった。また、採卵を頑張ろうと思う。

仕事をしながら治療ができるか不安だったけど、夜遅くまで診療している病院を選んで、仕事をあまり休まず、卵子凍結することができた。

まとめ

卵子凍結は、東京都が助成金に取り組む意向を示すなど、女性のライフプランの選択を広げる新しい技術として重要視されていることがおわかりいただけたかと思います。

東京都は他にも、プレコンセプションケアに係る取り組みとして「TOKYOプレコンゼミ」を開催しています。こちらは、妊娠・出産をこれから考える、都内在住の18~39歳の方を対象に、将来の妊娠・出産に向けた検査の助成を行っている事業です。

詳しくは、東京都福祉保健局のHPをご確認ください。https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/gaiyou.html

まずは、検査から受けてみて、自分の身体を知ることから始めるのもいいでしょう。
この機会にぜひ、未来の備えとして「卵子凍結」を一つの選択肢として、お持ちいただければと思います。

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