
冬になると毎年流行する感染性胃腸炎、嘔吐や下痢は突然なので、子どもが胃腸炎になった時の対応に慌ててしまう保護者の方も多いと思います。
今回は、感染性胃腸炎に備えてご自宅での対応やポイントをまとめていきます。
感染性胃腸炎って?
ウイルスや細菌などの病原体が原因で起こる胃腸炎の総称で、嘔吐・下痢・腹痛・発熱などの症状を引き起こします。特に冬場は ノロウイルスやロタウイルス による感染が多く、小児では脱水に注意が必要です。
吐くのは最初の1〜2日で、その後は下痢になり1週間くらいで軽快していきます。
感染性胃腸炎の原因
感染性胃腸炎の原因は細菌性とウイルス性のものです。
細菌性
カンピロバクター、サルモネラなどで血便が出ることもあります。
ウイルス性
ロタ、ノロ、アデノなど。抗菌薬は効かず、対症療法になります。冬に流行する胃腸炎の多くはウイルス性のもので、ノロウイルスとロタウイルスが原因となることが多いです。
ノロウイルス
ノロウイルスは感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスで、年間を通じて発生しますが、特に11月から3月にかけて流行のピークを迎えます。非常に感染力が強く、わずか10~100個程度のウイルスでも感染が成立します。
主な症状
・突然の嘔吐(特に夜間から早朝)
・下痢(水様便)
・発熱(37~38度程度)
・腹痛、頭痛
・症状は通常1~2日で改善
ロタウイルス
ロタウイルスは主に乳幼児に感染する胃腸炎の原因ウイルスです。5歳未満の子どもがほぼ全員感染するとされており、特に生後6か月から2歳の間に重症化しやすい傾向があります。
主な症状
・激しい嘔吐
・大量の水様下痢(白っぽい便が特徴)
・発熱(38度以上の高熱も)
・脱水症状が起こりやすい
・症状は3~7日程度続く
原因ウイルスによる症状の違いはありますが、いずれも”感染性胃腸炎”と診断されるものです。そして、症状軽快までの過ごし方や自宅での対応は同じなので、小児科では原因ウイルスが何かを特定することはほとんどありません。
次の項目から感染性胃腸炎と診断された際の自宅での過ごし方や気をつけるポイントを紹介していきます。
子どもが嘔吐してしまったときの対応方法
嘔吐直後
・子どもが寝たままの体制で嘔吐してしまった時は、誤嚥しないよう顔を横に向けましょう
・子どもを落ち着かせてあげましょう
・嘔吐物に新聞紙などかぶせておく
嘔吐が落ち着いたら
・嘔吐後は口の中を水でゆすぐ
小さな子どもは湿らせたガーゼで口の中を拭く
嘔吐物の処理方法
嘔吐物にはウイルスが大量に含まれており、あっという間に家族内に感染が広がってしまうため、適切な方法で早めに対処する必要があります。
処理の実際の流れ
①手袋とマスクをつける
②換気する
③嘔吐物をペーパータオル等で外側から内側に向かって拭き取る
④嘔吐物が付着した部分を0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ハイターを薄めたもの)で消毒
⑤手洗いうがいを丁寧におこなう
消毒のポイント
感染性胃腸炎を引き起こすウイルスにはアルコール消毒は効果がないので、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が必要です。
塩素系漂白剤としてハイターやブリーチという商品名で市販されていますので、ご家庭に1つは用意しておくといいですね。
0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液を作るには500mlのペットボトルがあると便利です。
ペットボトルに水を入れて、ペットボトルキャップ2杯分の塩素系漂白剤を入れたら完成です。

※この分量は、原液濃度が5〜6%の塩素系漂白剤を使用した場合の目安です。
嘔吐物がついた洋服や食器の処理方法は?
・洋服:85度以上のお湯に1分以上浸ける
・食器:0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に漬けて洗浄する
胃腸炎回復期の水分や食事はどうしたらいい?
吐いているとき
・30分は何も飲ませないで様子をみる
・30分〜1時間経って嘔吐がなかったら小さじ1から様子をみて徐々に水分補給させる
・経口補水液や麦茶を与えましょう
・3時間以上嘔吐がなかったら好きに飲ませる
・食事がとれないうちは経口補水液での水分補給がベスト
下痢のとき(水様便)
おかゆ、うどん、りんごのすりおろし、ジュース、ゼリーなど食べやすく、本人が食べるもの
乳製品は控えておくほうが無難です。
やわらかいうんちのとき
本人が食べたがるものを与えはじめていいですが、揚げ物や生もの、脂身の多いものは控えておきましょう。
医療機関受診の目安
緊急受診が必要な場合
・激しい腹痛が続く
・吐いたものが緑色のとき
・6時間以上吐いているとき
・血便が出たとき
・高熱(38.5度以上)が続く
・意識がもうろうとしている
・水分が全く摂れない
・強い脱水症状がみられているとき
通常受診の場合
・症状が3日以上続く
・高齢者や基礎疾患のある方
・乳幼児(特に1歳未満)
・症状が改善しない
脱水症状について
子どもが胃腸炎になり嘔吐や下痢が続く時には脱水症状に気をつけなくてはなりません。
自宅で脱水症状を観察するポイントもお伝えします。
重度の脱水症状(緊急受診が必要)
・意識がもうろうとしている
・12時間以上尿が出ない
・皮膚をつまんでも戻らない
・泣いても涙がでない
このような場合は急いで受診する必要があります。
登園の目安は?
感染性胃腸炎と診断されたら、在籍している園に報告をしましょう。そして嘔吐や下痢の症状が落ち着き、普段と同じ食事をとれるようになったら登園していい目安になります。
自治体によっては、登園届という書類を提出する必要があるので、園やかかりつけ医に確認してみましょう。
おわりに
今回は子どもが感染性胃腸炎になってしまった時の対処法と自宅での過ごし方をまとめました。最も重要なのは脱水予防と感染を広げないことです。症状が重い場合や改善しない場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。適切な消毒と手洗いうがいの予防策を徹底することで、感染拡大を防ぐことができます。
突然の嘔吐や下痢に適切に対応できるようにしておきましょう。
参考文献
・厚生労働省.「ノロウイルスに関するQ&A(ノロウイルス食中毒の予防)」.
厚生労働省ウェブサイト.作成:2004年2月4日,最終改定:2021年11月19日.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html(参照 2025‑07‑04)
・こども家庭庁・厚生労働省(編).『保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)2023年7月20日一部修正版』.PDF資料.2023年7月20日改訂.
・日本外来小児科学会(編). ママ&パパにつたえたい 子どもの病気ホームケアガイド 第5版. 医歯薬出版, 2020年.