日常の子どもの事故を防ぐ!「ヒヤリ」をなくす安全な環境づくり-誤飲・火傷・転落などを防ぐには-

私たちの身の回りには、大人にとっては何気ない物や行動でも、子どもにとっては命にかかわる危険につながるものが数多くあります。実際に全国の医療機関では、子どもの事故やけがの事例が数多く報告されています。これらは決して特殊な状況ではなく、日常生活のなかで誰の家庭でも起こり得ることばかりです。大切なのは起きてから対処するのではなく、起きる前に防ぐ視点です。ここでは、報告の多い事例を取り上げながら、日常で気をつけたいポイントを整理します。

子どもの事故の現状

電池の誤飲

乳幼児が誤ってボタン電池やリチウム電池を飲み込んでしまう事故は、繰り返し報告されています。特にリチウム電池は強い電流が発生するため、食道に貼りつくだけで短時間のうちに粘膜を傷つけ、穴があいてしまうこともあります。重症化すれば命の危険にもつながります。鶏肉の上にボタン電池を置く実験では、20分ほどで電池の形のくぼみができるほどの化学やけどが確認できます。

出典 政府広報オンライン 赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?

火傷

火傷は家庭内事故の代表です。特に多いのは、電気ポットやケトルのお湯、炊飯器や加湿器からの蒸気、ヘアアイロンの高温部分などによるものです。大人が台所で調理している間、子どもがそばで遊んでいて、カーテンの裾を引っ張るように電気コードをつかみ、熱いポットを倒してしまう。これは決して珍しくない状況です。また、加湿器の蒸気口に手を近づけて皮膚がただれるほどのやけどを負うケースもあります。

窒息・挟まり

赤ちゃんの死亡事故の大きな要因の一つに窒息があります。ベッドと壁のすき間、布団やまくらの位置、ベッドガードの構造によって、子どもの顔が埋もれて呼吸ができなくなる危険があるのです。また、近年は「首浮き輪(ネックフロート)」を使用中の入浴事故も報告されています。一見便利に見える育児グッズでも、わずかな油断が命に直結します。安全基準が整っていない製品は特に注意が必要です。

転落事故

子どもの転落事故は、一人で歩き始める1歳から2歳ごろから増え始め、3歳から4歳で最も多くなっています。3歳から4歳の頃は、好奇心や自我が芽生え、興味本位で何でもしたがり、走ったり登ったり活発な動きができるようになりますが、まだ危険かどうかを判断することが難しく注意が必要です。子どもが窓枠や出窓に座って遊んでいるときに網戸が外れて転落、ベランダで遊んでいるときに置いてあった物を足場にして手すりを乗り越えて転落、保護者が1階にいるときにこどもが2階から転落など、子どもだけで遊んでいるときに多く発生しています。

窓やベランダからの転落事故における年齢別の救急搬送件数
出典 東京消防庁「こどもが住宅等の窓・ベランダから墜落する事故に注意!」

日常の中で気を付けたいポイント

日常にヒヤリとする目を持つ

事故の多くは、特別な不注意からではなく、ちょっと目を離したすきに起こります。親が子どもを守ることはもちろん大切ですが、24時間すべてを監視することは不可能です。だからこそ事故が起きやすい場面を知っておくことが有効です。

例えば、調理中や入浴中など大人が手を離せない時間帯、来客や電話対応など注意が分散している時、 物が散らばっているとき。こうしたヒヤリとしやすい時間帯・状況をあらかじめ意識し行動に移すことが重要です。

安全な環境づくり

危険が起きにくい環境を整えることで、防げる事故があります。

(1)物品管理

リモコン、体温計、キッチンタイマー、子どものおもちゃなど、電池を使用する製品は家庭中に存在します。電池を子どもの手の届く場所に置かない。裏ぶたが簡単に開かないか確認するなど、日頃からの点検が必要です。ボタン電池が使用されている機器や玩具は、電池の蓋がネジで固定できるものを選びましょう。玩具は「STマーク」付きの商品を選びましょう。

(2)熱傷

熱源を床に置かない、コードを垂らさない、調理中はベビーゲートで子どもを遠ざける、など環境を整えることが予防につながります。

火傷をしてしまったら、とにかくすぐに水で冷やします。最低でも10分は冷やし続けましょう。服を着ている部分をやけどした場合は、無理に脱がさず服の上から冷やします。必ず、水道水の流水で冷やしましょう。刺激を避けるため、容器に溜めた水で冷やすか水道水・シャワーを直接当てないようにしましょう。氷や保冷剤で直接冷やすと悪化させることがあるので控えてください。

全身の広い範囲・顔・陰部・気道を受傷した。出血して、顔色が悪い、意識がない、ぐったりしている場合➡すぐに救急車を呼びましょう。

やけどの範囲が片足、片腕以上の広範囲にわたる場合➡救急車を呼ぶか、至急病院を受診しましょう。

やけどの範囲が手のひら以上の場合や水膨れの場合➡潰さないようにして、病院を受診しましょう。

(3)窒息予防

口の大きさより小さい物は窒息のリスクが高いため注意が必要です。トイレットペーパーの芯を通る大きさ(直径約4cm未満)の物は誤飲しやすい目安になります。ボタン、硬貨、電池、豆類、ナッツ、ブドウ、ミニトマトなどは特に危険です。危険な物を子どもの手の届かない場所に置く、食べ物は小さく切って与える、おもちゃは対象年齢を守るといった工夫が大切です。

(4)転倒予防

子どもが勝手に窓や網戸を開けてベランダに出ないように、窓や網戸には子どもの手の届かない位置に補助錠を付けましょう。特に、網戸は小さい子どもの力でも簡単に開くので施錠を徹底しましょう。子どもはプランター、ひもで縛った新聞、段ボール、椅子などを踏み台にします。不要な物はベランダには置かないようにしましょう。また、エアコンの室外機は、手すりから60cm以上離して設置しましょう。ベランダの奥行きが狭く、エアコンの室外機が足掛かりになりそうな場合は、こどもが1人でベランダに出られないようにする必要があります。

出典 政府広報オンライン ご注意ください!窓やベランダからのこどもの転落事故

 おわりに

子どもの事故は、一瞬の出来事でありながら、その後の人生に大きな影響を与えることがあります。うちの子は大丈夫と過信せず、子どもの成長発達に合わせ、身の回りの環境を定期的に点検してみましょう。また子どもの安全は、親だけでなく社会全体で守るものです。保育園、学校、地域が一緒になりこんなところに危険があると共有していくことが、悲しい事故を防ぐ第一歩になります。今日からできる小さな工夫で、大切な命を守っていきましょう。

参考文献

・公益財団法人 小児科学会 Injury Alert(傷害速報)
・公益財団法人 小児科学会 子どもの予防可能な傷害と対策
・政府広報オンライン 赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?
・政府広報オンライン ご注意ください!窓やベランダからのこどもの転落事故
・東京消防庁「こどもが住宅等の窓・ベランダから墜落する事故に注意!」

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