【代表的な性感染症の症状と特徴】梅毒・クラミジア・HIV…早期発見と適切な治療のために

性感染症(STI;Sexually-transmitted Infections)は、性的接触を介して感染する可能性がある感染症で、
口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。
そのため、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。

 感染しても無症状だったり、比較的軽い症状にとどまる場合もあるため、
感染したことに気づかず検査・治療に結びつかなかったり、
知らぬ間にパートナーを感染させてしまうこともあります。

また、性感染症は、かゆみや痛みなどの症状が問題なだけでなく、
感染症の種類によっては、治療を受けるまでの期間が長いと将来の不妊症の原因となったり、
神経や心臓などに深刻な合併症や後遺症を残したりすることもあります。

そして、妊娠・出産する可能性のある生殖年齢の女性が性感染症にかかった場合には、
お母さんから赤ちゃんへの感染(母子感染)により、先天性の身体の障害の原因となる可能性があります。

 ここでは代表的な性感染症について症状と特徴を説明します。 

●梅毒

 梅毒トレポネーマによる細菌性の性感染症

  • 1.症状

 性器や口の中に小豆から指先くらいのしこりや痛みの少ないただれができる

 痛み・かゆみのない発疹(紅斑)が手の平、手背、下腿、足の裏、背中など体中に広がる

 発熱や倦怠感、全身性リンパ節腫脹や消化器系・泌尿器系・筋骨格系の症状がでる場合も

  • 2.特徴

 症状が消えても感染力が残っている

 治療をしないまま放置すると、数年~数十年の間に心臓・血管・脳など複数の臓器に病変が生じ、死に至ることもある

 妊婦さんが梅毒に感染すると、母親だけでなく胎盤を通じてお腹の赤ちゃんも感染し、神経や骨などに異常をきたす場合や、早産や死産になる場合がある。また生まれたときに症状がなくても、大人と同様に遅れて症状がでることもある。

●性器クラミジア

 クラミジア・トラコアチスが病原体

  • 1.症状

 男性では尿道炎が最も多く、排尿痛、尿道不快感、掻痒感、精巣あたりの腫れや発熱などの自覚症状がでる人は半数ほど

 女性では自覚症状が乏しい場合が多く、初期ではおりものの変化や増量、軽い下腹部痛程度。

進行すると不正出血や性交時痛、子宮頸管炎、骨盤内付属器炎、肝周囲炎が起こる場合も。

 咽頭への感染がある場合は、のどの違和感や頸部リンパ節腫脹を認める場合も。

  • 2.特徴

 淋病との重複感染も多く、クラミジア陽性者の約10%が淋菌感染症のため、淋菌性尿道炎の治療をしても症状が軽減しない場合は、クラミジア感染が疑われる

 男性も女性も不妊症の原因になることも

妊婦さんが感染すると、新生児のクラミジア産道感染の原因となり、新生児肺炎や結膜炎、早期流産を起こす場合もある

●淋菌感染症

 淋菌の感染による

  • 1.症状

 男性は尿道に淋菌が感染すると2~9日の潜伏期を経て通常はやや黄色~白みがかった膿性または粘液性の分泌物がでて、排尿時に痛みを感じる。また精巣のあたりが腫れて熱がでることもあるが、無症状に経過する場合もある。

 女性は50%が無症状感染で自覚症状が乏しいが、発熱や子宮頸管炎によりおりものが増えたり、下腹部痛、のどの違和感を起こす場合がある。進行すると不正出血や性交痛を感じる場合も。

性器淋菌感染者の10~30%に咽頭から淋菌が検出されている。咽頭感染は、咽頭炎症状が起こる場合もあるが、多くは無症状である

 感染に気付かないまま経過すると、骨盤炎症性疾患不妊症の原因になることもある

  • 2.特徴

 淋菌感染によりHIVの感染が容易になると報告されている

 淋菌は弱い菌で、感染者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥・温度の変化、消毒剤で簡単に死滅するため、性行為以外で感染することは稀

●性器ヘルペスウィルス感染症

 単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による

  • 1.症状

 感染の機会があってから2~21日後に外陰部の不快感、掻痒感などの前駆症状があり、その後、発熱、全身倦怠感、リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴い、男性の場合は、性器や肛門に、女性では陰唇から膣・会陰部にかけて1~2ミリほどの水泡や潰瘍が急激にできる

 足の付け根のリンパ節の腫れや痛みがあり、男性の場合は、尿道から分泌物が、女性の場合は排尿時痛や排尿障害、歩行困難のため、入院加療が必要な場合も。

  • 2.特徴

 感染しても発症せず、無症状でウイルスを輩出している場合が70~80%と多く、気づかないまま相手に移してしまう可能性がある。

無症状でも性器の粘膜や唾液を含む分泌液中にウイルスが存在する場合には感染する。

 抗ヘルペスウィルス剤を服用すれば病変はいったんは治癒するが、一度感染すると神経節に潜伏し、時に再活性化し、その後長年にわたって再発を経験する。

性器に潰瘍性病変があると、エイズの原因となるヒト免疫不全ウィルスを移したり移されたりする可能性が高まる。

 妊婦が性器ヘルペスにかかり、出産時にウイルスを排出していた場合には、新生児がHSVに感染し、重篤な新生児ヘルペスを発症する危険性が高い。

●尖圭コンジローマ

 ヒトパピローマウィルス(HPV)を病原体とする

  • 1.症状

 男性では亀頭や陰のう、肛門のまわりに、女性では外陰部、膣、肛門の周りに白・薄ピンク・茶色・褐色のイボができる。

 イボの数が増え、ニワトリのトサカのようになったり、乳頭状の隆起になる。

 違和感やかゆみ、軽い痛みを感じる程度で、自覚症状はほとんどない

  • 2.特徴

 潜伏期間は数週間から3か月程度。

 自覚症状は少ない。

 まれに手指を介した幼児への感染や分娩時の垂直感染もみられる

●HIV感染症・AIDS(後天性免疫不全症候群)

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を病原体とする感染症

  • 1.症状
    感染後2~6週間程度で発熱や咽頭痛、皮疹、リンパ節腫脹といった急性期症状が50~90%の人に出現する

未治療の場合、数年から十数年程度の慢性感染期を経て、日和見感染症や悪性腫瘍等を合併し、AIDS発症に至る。

  • 2.特徴

主な感染経路は性的接触、血液感染、母子感染であるが、日本では性的接触による感染がほとんどを占める

  HIVは感染すると排除できないものの、抗ウイルス薬で血中ウイルス量を抑制することにより、免疫機能を維持・回復させるとともに、性的接触による他者への感染を防ぐことができる

 性感染症の予防には、感染が疑われる相手との性行為を避け、完全に治癒するまで性的接触を控えることが大切です。また、避妊だけでなく、性感染症の予防を目的として性交渉の際にはコンドームを正しく用いましょう。もちろんコンドームで覆われていない病変から感染する可能性もあり、コンドームを正しく用いたとしても完全に感染を防げるわけではありません。そのため、違和感を感じたら感染を疑い、病院を受診・検査をすることが重要です。また検査で陽性と診断された場合は、パートナーや性的接触をもった相手に伝え、双方が同時に治療を行いましょう。

 2006年に公共広告機構 エイズ財団が「カレシの 元カノの 元カレを、知っていますか。エイズ検査は、あなたにも、必要です。」というポスター広告を行いました。このセリフを聞いて、皆さんはどう感じたでしょうか?エイズだけでなく他の性感染症も同じで、誰しもに感染する可能性があるものです。他人ごとではなく、自分事として、自分の身と大切なパートナーを守るために、そして、将来生まれてくるかもしれないお子さんの健康を守るために、性感染症に関する情報と予防法を理解し、「何かおかしい」と感じたら、迷わず検査を受け、早期に適切な治療を受けましょう。

・産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編- 日本産科婦人科学会

https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf

・性感染症 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/index.html#:~:text=%E6%80%A7%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%EF%BC%88STI%3B%20Sexually,%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%8B%E3%82%89%E6%84%9F%E6%9F%93%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

・感染症情報提供サイト 国立健康危機管理研究機構

https://id-info.jihs.go.jp/index.html

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