働く妊活女性には、お金と味方と時間が足りない

女性社員の定着と離職防止のために、妊娠・出産・育児のサポートに取り組んでいる企業が増えてきました。よく聞く取り組みの1つが、産育休中もSNSで社内コミュニティに参加できるようにして、「休んでいる間もあなたはチームのメンバーだよ」というメッセージが伝わるよう工夫すること。
これは、休暇中の社員が社会的に孤立しないためにも、とても有益な取り組みだと言えるでしょう。

実は妊活も、当事者が孤立しないようサポートするのが重要なんです!
このnoteでは、妊活当事者がどうして孤立しがちなのか、どのような対策があれば孤立を防げるのか、お話しします。
企業向け妊活セミナーでも必ず取り上げている話題です。

妊活にはお金がかかる

まずは、不妊治療の経済的な負担について見てみましょう。
2021年4月現在、不妊治療は自由診療のため、基本的には10割負担になります。

最も高額な治療は、体外受精・顕微授精です。この治療は、卵子と精子を体の外に取り出して受精させ、受精卵が育ったら子宮の中に移植する方法です。
精子は男性がマスターベーションで射出するか、必要な場合は手術で採取します。卵子は「採卵」という手術で体外に取り出します。卵子が育ちやすいように、お薬を使う場合もあります。
卵子と精子を受精させるためには、卵子に精子を振りかけて自然に受精するのを期待する方法と、特殊な顕微鏡を使って卵子の中に精子を取り入れさせる方法があります。

不妊患者団体NPO法人fineの調査(2018)によれば、体外受精・顕微授精では1回(※)あたり30万〜50万円かかります。1回で妊娠するとも限らないので、この金額の治療を複数回行うことになります。
(※不妊治療では、女性の月経周期に合わせていくつかの工程を踏むので、一回の治療のことを”周期”といいます)

では、トータルの不妊治療費はどのくらいかかっているのでしょうか。

通院開始から治療を辞めるまで、100万円から200万円かかる人が多いという結果になっています。このデータは、妊娠するまでにかかった金額ではありません。これくらいの金額をかけても妊娠せず、経済的理由から不妊治療を辞めるという方は少なくありません。

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治療費が高額だから収入が欲しい。
仕事が好きだし社会と繋がっていたい。
だから仕事と治療を両立したい。

そう願う妊活当事者は多いのですが、仕事をしながら不妊治療を経験したことのある人のうち 95.6%が「両立は困難」と 回答しています。仕事と不妊治療の両立が困難で働き方を変えざるを得なかった人のうち半数が、退職を選択しています。
では職場に協力を求めればよいのかという話になりますが、職場で不妊治療をしていることを話しづらいと答えた人は81.3%でした。
仕事と両立する上で何が難しいのかを示したのが、次の調査結果です。

通院日が直前に決まるから休めない

不妊治療は女性の排卵・月経周期に合わせて進められます。排卵とは、月に1回、卵巣で育った卵子がポンっと卵巣から飛び出す「妊娠のチャンスタイム」のことです。卵子が精子と受精できるタイムリミットは、たったの24時間しかありません。
どんなに月経周期が規則的な人でも、「この日、絶対に月経が起きる」と事前にわかることはありません。同じように、排卵する日もあらかじめ把握することはできません。排卵日を予測するためには、受診してエコーで卵子の育ち具合を確認し、「そろそろ排卵しそうだな」という大体の目安をつけるしかないのです。

つまり、妊娠しやすい日は1か月前や1週間前に予定することができません。
だから、不妊治療の受診日はいつも直前に決まります。


妊活当事者が「仕事と不妊治療の両立が難しい」と感じる理由の上位2つは、
「急に・頻繁に仕事を休む必要がある」
「通院スケジュールを立てることが難しい」

という勤務との時間調整に関するものでした。
次いで、周りに迷惑をかけて心苦しい、上司同僚の理解を得られない、治療のことをカミングアウトすることが難しい、という結果でした。

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味方がいないから、職場に相談するのをデメリットに感じる

職場の理解や支援を受けたいと思っていても、81%の人が職場に伝えにくいと答えています。その理由には、
「不妊であることを伝えたくない」
「わかってもらえなさそう」
「心配や迷惑をかけたくない」

という回答が多くみられます。

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不妊であることを伝えたくない理由には、当事者の「自分が不妊だと認めるのは精神的に苦痛だ」という心理が関係しています。
「不妊治療を受けている」と言葉にするのは、「私は不妊です」と認めることでもあります。子どもを望む当事者にとって、自分が不妊であると認めるのは、実はとても辛いことなのです。

また、周囲が良かれと思って掛けてくれる気遣いや心配の声で逆に傷付いたり、「私は人から気遣いを受ける弱い存在なのだ」と感じられたりすることもあります。ですから、周囲に気遣いをされたくないという気持ちになります。

社内で不妊・妊娠出産に関する啓発や支援制度が整っていない場合、自分の状況を理解して応援してくれる人がどれくらいいるかわかりません。
「相談してもきっと理解されないだろう」
「聞かれたくないことを根掘り葉掘り聞かれるかもしれない」
「相談しても嫌な顔をされるかもしれない」

そういった思いから、職場に自分の状況を報告・相談できない場合もあります。

本当は理解してほしい。でも、誰にも言えない。

これって孤独ですよね。普段一緒に働いて長い時間を共にする職場でも、実は心の中で「きっと理解されないだろう」とあきらめ、味方・理解者のいない中でやり過ごしている人が確かにいるのです。

働く妊活女性のニーズ

ファミワンでは、ユーザーの皆さんにアンケートを取りました。すると、NPO法人fineの調査結果から読み取れる内容と同様に、「金銭的な補助が欲しい」「理解してほしい」「知ってほしい」「通院に使える休暇制度が欲しい」という回答が目立ちます。一部抜粋してご紹介します。

Q.「妊活や不妊治療の支援に関して、就業先へのご要望・ご意見・導入を応援するコメント等があればご記載ください」

「不妊治療に対する金銭的な補助がほしい。妊活のために有給でまとまって休める制度がほしい」

「上司に、不妊治療はいつまで続くのかと言われて傷つきました。通院の大変さやホルモン剤の副作用など、少しでも不妊治療のことを知ってほしいです

「育休や産休制度はあるけど、妊活の時に使える休暇制度が欲しい。上司の妊活や治療に対する理解がない

周りに迷惑をかけたくないから、仕事を辞めざるを得ませんでした」

「企業側も求人を掲載する際に妊活中の方も応募出来るような掲載をして貰えると、理解のある会社なんだとわかるので、お互いにとって負担も少ないと思います

上司はかなり理解をしてくれていて、休みが取りやすい環境です。ただ、同僚に不妊治療をしていることを言っておらず、休みは取れても申し訳ない気持ちでいっぱいになります。病院には通えているけど、何だか苦しいです」

孤立させないために理解する

冒頭で、妊娠出産のため休暇を取っている社員の離職防止のために、「休んでいる間もあなたはチームのメンバーだよ」というメッセージが伝わるよう工夫するのは有効だ、と書きました。それは、休暇中の社員が社会的に孤立しない効果があるからです。
同じように、妊活している社員の離職防止のために、孤立させないことも重要ではないでしょうか。

「妊娠出産と違って、妊活してても会社で人と会って話すのだから孤立とは言えないのでは?」

と思うかもしれません。
ですが、誰かと一緒にても孤立することはありますよね。

当事者が孤立しないためには、不妊に関する理解を深める必要があります。5.5組に一組のカップルが不妊治療を受けている昨今、当事者は身近にいるかもしれません。

ファミワンでは、企業向け妊活サポート研修や、福利厚生としてのサービス活用を行っています。無料お試し体験版のセミナーも開催していますので、ぜひこちらからお気軽にお問い合わせください。

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