この度の能登半島地震により被災された皆さまへ心よりお見舞いを申し上げるとともに、犠牲になられた皆さまへ心よりお悔やみを申し上げます。普段離れて暮らす家族たちが集い過ごすお正月。そんなときにどうして、と思わずにいられません。
忘れがちですが、日本は世界でも地震が多い国のひとつです。
もう30年近く経ちますが、私は阪神淡路大震災を経験しました。いつも通りの週末を過ごし『明日の体育、マラソンいやだなぁ』と思いながら眠りにつきました。けれど、マラソンのある明日は来ませんでした。夜明け前、ベッドのなかで地球がこわれたのかと思ったほどの揺れを感じながら周りで物が倒れていく音を聞いていました。線路や駅も崩れおち、学校の損壊もひどく何か月も休校になりました。家から見えていた高速道路後は途中で無くなってしまいました。あんな朝を迎えるなんて眠るときは1かけらも思っていませんでした。災害はほんとうに突然なのです。
防災への備え
よく言われる防災への備え、みなさんはいかがですか?
もしまだでしたら今日、防災への備えをしましょう。
備えがあれば地震や災害が来ても大丈夫なわけではありません。しかし、備えがあれば災害時に自分や大事な人たちへの身体的、或いは精神的な影響を少しでも減らすことができます。災害後は非日常の連続です。電気、水、水道等ライフラインは復旧に時間がかかります。食料がいつ届くかもわかりません。怪我をしても病院自体が壊れて機能しないかもしれません。そのような先が見えない環境の中で過ごすことになります。不安、悲しさ、恐さ、様々な感情の中で防災リュックのなかに食べ物がある、飲み物がある必要なものがあることで少しでも安心できればいいのです。
<防災リュックの参考例>
印かん、現金、救急箱、貯金通帳、懐中電灯、ライター、缶切り、ロウソク、ナイフ、衣類、手袋、
ほ乳びん、インスタントラーメン、毛布、ラジオ、食品、ヘルメット、防災ずきん、電池、水
総務省消防庁HPより
(地震などの災害に備えて - 防災グッズの紹介 | データベース | 総務省消防庁)
https://www.fdma.go.jp/publication/database/activity001.html
基本は上記ですが、自分の生活に合わせてアレンジしてください。ライフスタイルが変化したら中身を検討し入れ替えるようにしましょう。
持病がある場合
今回はとくに持病がある方やご高齢の方が準備しておいた方がいい物を中心にお話していきます。
- 持病の内服薬(1週間分)
災害規模によりますが1週間分ある方が安心です。防災リュックの中に普段から入れておき、新しいお薬をもらったら入れ替える習慣にしておくと期限切れを防げます。
糖尿病がある人は飲み薬だけではなくブドウ糖やインスリンも忘れずに準備しておきましょう(日本糖尿病協会のホームページで災害時ハンドブックを確認できます)。
- 自分や家族の情報
災害時に診察や薬を処方する医師は、かかりつけ医とはかぎりません。自分やご家族の持病、内服薬、アレルギーの有無等について把握し、初めての医師に伝えられるようにしておくことはとても大切です。
- お薬手帳
アプリ等で管理している方も多いと思いますが、電源が切れることも考慮し紙のタイプも用意するなど複数の方法で準備しておくと安心です。
- 避難場所の確認
お子さんや持病をお持ちのご家族がいる場合は、避難場所まで実際に歩いて所要時間を確認しておきましょう。
- アレルギー対応
食物アレルギー等がある場合、エピペンなど緊急薬と併せて1週間分ほどのアレルギー対応食を準備しておきましょう。災害時にアレルギー対応食品は手に入りにくくなるため、多めに準備しておく方が安心です。また、避難所で炊き出しや避難物資の誤食を防ぐため、特にこどもの場合はビブスなどを準備しておき、アレルギーがあることが周りにわかりやすくすることも大切です。避難所に担当者がいる場合はアレルギーがあることを伝えておきましょう。
- 喘息
災害時は、倒壊家屋等からの粉じんなどによる空気汚染や心身のストレスなどにより喘息が悪化しやすい環境になります。まずは普段から喘息をいい状態にコントロールしておくことが大切です。備えとしては普段内服している薬、発作時の吸入、ネブライザーやスペーサーだけではなく、避難所で布団などに使用できる防ダニシートも便利です。冷たい空気や乾燥した空気が気管支に刺激を与えないようマスクも準備しておきましょう。
- アトピー性皮膚炎
アトピーは体力が落ちると症状が悪化することがあります。被災後も普段使用している内服薬や外用薬を継続し、お風呂に入れなくても下着を交換するなど皮膚を清潔に保ちましょう。市販の使い捨て清拭用タオル等で汗をかいた部分を洗浄し清潔に保てるようにしましょう。市販のペットボトルシャワーキャップ等を用意しておくと少量の水で部分的な洗浄ができ便利です。
- 酸素使用中の場合
普段から主治医と災害時の対応について相談しておくとともに、災害時のメーカー対応を確認しましょう。近隣の災害拠点病院も必ず確認しておきましょう。
- 透析中の場合
普段から災害時はどのような対応になるのか、施設に確認しておきましょう。災害時は、まずいつも透析をうけている施設に透析が可能かどうかを確認します。遠くに避難したり、かかりつけの施設と連絡がとれず他の施設で透析を受ける可能性もあるため、自分のドライウェイトは覚えておくことが望ましいです。
高齢者の方がいらっしゃる場合
- 高齢者の方向けの準備品
ホッカイロ、マスク、栄養補助食品、嚥下に不安がある人はとろみをつけるもの、紙おむつや尿取りパッド等、普段の生活に照らし合わせながら準備をしましょう。避難所では衛生面やトイレの使いにくさからトイレを我慢したり、飲水を控えたりしてしまいがちですが、これは尿路感染症や便秘につながってしまいます。水分をしっかりとり、軽い運動と腹部のマッサージなどで便秘を予防しましょう。便秘の一因にもなる避難生活時の野菜不足については長期保存が可能な野菜ジュースもありますので準備しておくことをおすすめします。
- 感染症予防物品
避難所では多くの人が生活します。密になりやすく水も少ない状況下では衛生状態が低下し感染症が流行しやすいです。高齢者や持病の治療中で免疫力が低下している人は風邪等を契機に持病が悪化することもあるため手指衛生物品、アルコール消毒、ウエットティッシュ、マスク、うがい薬等を準備しておきましょう。前述のペットボトルシャワーキャップなども活用してください。
以上、災害時への備えについて看護師の目線で書いてみました。ひとつでもご参考になれば幸いです。
ちなみに私の防災リュックにはサランラップとスニーカーが入っています。スニーカーはガラス等が散乱している家の中や外を歩く用に、サランラップはお皿に巻いて使うと洗い物が出ず、衛生的にも良くおすすめです。阪神大震災の経験からです。みなさまもライフスタイルに沿った是非オリジナルの防災リュックを作りながら災害について考える時間をつくってみてください。
おわりに
最後に1点。避難生活が長期化するにつれて、心身ともに様々な影響が出てきます。忍耐強い性格は日本人の素晴らしいところですが、避難所で体調に異変を感じたら「みんなが大変な時だから」と我慢せず、自治体の職員やボランティア、医療チーム等に必ず申し出てください。厳しい環境の中で色々な影響が身体に出て当たり前です。十分がんばっている避難所生活です、それ以上頑張らずに、異変を感じたら遠慮せずにヘルプを出してくださいね。