妊娠中(マタニティ)の旅行、通称“マタ旅”は、何年にも渡り度々話題になっているトピックです。海外ではハネムーンに因んでベビームーンとも呼ばれているこの旅行、夫婦二人でのゆったりした時間を満喫できる出産前最後のチャンス!と、マタニティライフの楽しみの一つでもありますね。しかし大切な赤ちゃんの命を宿している妊娠中、リスクも軽視できません。今回は、マタ旅について、妊婦さん自身が何に注意してその是非について考えたら良いのかをテーマにしていきたいと思います。
旅行に行くのは良いの?ダメなの?
妊娠中、健診などでハイリスクな状態を指摘されている場合には遠方への旅行は控えておいた方が良いでしょう。
そうではない場合、まずは妊娠中に旅行に行くことによって得られるものとそれに伴うリスクについて考えてみましょう。
<利点>
- 制約が多くストレスが溜まりがちな妊娠中の良いリフレッシュになる
- 夫婦または家族での思い出作りが出来る
- 出産や産後の生活に向けて前向きな気持ちになれる
<リスク>
- 普段と違う事をするので心身に負担が大きく、体調を崩す原因にもなり得る
- 旅先で体調の変化があった場合にすぐに受診出来ない可能性がある
- 家から遠く離れた場所で何週間も入院を余儀なくされるケースもあり、その場合経済的・精神的負担が大きい
自分が特別なハイリスクの状態でないかどうかかかりつけ医に確認する事は大切ですが、経過が順調であっても、上記のようなリスクが誰にでもある以上大手を振って行ってらっしゃいと送り出してもらえることはないでしょう。つまり行く場合にはいつも自己責任という言葉が付いてくることになります。 しかし上記の他にも、後ではなく今行きたいという様々な事情やご自身の想いがあるかもしれませんね。ご家族で話し合い、メリットデメリットを天秤にかけ、後悔のない決断をするようにしましょう。
妊娠中に旅行をする際の注意点
旅行に行くことにする場合には、以下の点を気にかけながら計画を練るようにすると良いでしょう。
旅行の時期
一般的によく言われる安定期という言葉は、実は医療用語ではありません。妊娠そのものが常に体に負荷がかかり続けている状態であり、また胎児も繊細な存在であるため、いつでも問題は起こり得るからです。
しかし “流産が起こりやすくつわりなど体調が不安定な妊娠初期”や、“分娩が始まる可能性が上がってくる妊娠後期”などと比較すれば、その間に当たる妊娠中期(16週〜27週頃)は体調も安定している事が多く、全妊娠期間の中では旅行に最も適した時期と言えるでしょう。
旅行の行き先
一般的に海外旅行保険は妊娠に関連した治療については免責対象のために、何かあっても保険ではカバーされません。海外旅行先で入院治療が必要になると数百〜数千万円単位の医療費がかかることもあります。妊娠中の旅行先は国内旅行に留めておいた方が無難でしょう。
さらに、何か急な体調の変化があった際の受診がしにくい離島や僻地などはあまりおすすめできません。救急などの医療設備へのアクセスがある程度可能であると予測できる場所にしておきましょう。
近場の温泉やリゾートで、何かあっても車ですぐに戻って来られるような距離感であればそれほど問題にはならないでしょう。念の為、宿には妊娠中である事を伝えておきましょう。
移動手段
妊婦さんにとって長時間の移動は体の負担が大きいため、選択肢があるのであればなるべく短時間で移動できる方法を選ぶと良いでしょう。トイレが近くなる方が多いので、車ならこまめにサービスエリアに立ち寄るなどして休憩をとるようにしましょう。渋滞にはまる可能性がある時には携帯トイレなどがあると安心かもしれません。
飛行機や車内で同じ体勢を長時間続ける時には血栓のリスクもあるため、よく水分補給をし、弾性ストッキングを履いたりこまめに足を動かすなど血栓予防の対策をしましょう。もしもお仕事や帰省など避けられない理由で4時間以上のフライトをする場合には、血液を固まりにくくするヘパリン注射(自己注射用として処方)なども検討し医師に相談すると良いでしょう。また飛行機に搭乗する際、後期になると医師の診断書が必要となる航空会社が多いので注意が必要です。
ゆったりスケジュールで
あちこち歩き回ったり長時間立っていたりすると疲れてしまい、お腹が張りやすくなるなどして切迫流早産のリスクも高まります。妊娠中の旅行ではなるべく余裕のあるスケジュールを心がけ、急いだり、走ったりしなくて良いようにしましょう。また体調もよく観察し、お腹が張りっぽければ座って休んだり、その日の計画を柔軟に変更する心持ちでいると良いでしょう。
持っていくと良いもの
- 母子手帳
- 健康保険証
- 診察券
- 普段飲んでいる薬
- カーディガンなど羽織もの(夏でも冷房で体が冷えることもあるので)
- 生理用ナプキン(急な出血や破水などの可能性に備え)
- パジャマ(宿のものだとお腹がきつかったり、浴衣ははだけてお腹が冷えたりする可能性があります)
- ポリ袋(環境の変化や疲れで急に気分が悪くなることも)
おわりに
当日、少しでも体調が思わしくない時には、旅行をキャンセルする勇気も必要です。無理して出かけた旅行先で何かあった場合、とても後悔する事になる可能性もあります。計画の段階から最後まで、ご家族そしてご自身の体とよく相談をし、いつでも大切な赤ちゃんのことを一番に考えて決断・行動するようにしましょう。
妊娠中の旅行に関しては様々な意見がありますが、行く行かないどちらも背景にある事情や想いは千差万別、人それぞれですね。リスクは絶対に冒さない方が良いと言う人もいれば、このタイミングでその旅に行く事が後々の自分にとってとても大切だと言う人もいるでしょう。他人とは比べず、今の自分にとって何が一番大切なのかよく考え、後悔のない決断ができると良いですね。