「性教育について伝えられる場を作りたい」と小学生の子どもを持つファミワンメンバーが話し合い開催している、「夏休みスペシャル!こども性教育イベント」。毎年大変ご好評いただいており、今年で4年目の開催となりました。
今年は低学年向け・高学年向け・保護者向けイベントだけでなく、中学生向けを加えた4本立てでの開催となりました。
このコラムでは保護者向けの回についてお伝えします。
- 1 第1章 包括的性教育とは
- 2 第2章 性暴力被害に遭う可能性を減らすポイント
- 3 第3章 子どもとインターネット・SNS
- 4 第4章 実践!幼児期からの性教育
- 5 第5章 おうち性教育〜絵本紹介を添えて〜
- 6 まとめ
- 7 Q&A
- 7.0.1 Q: 標準と違う体の発達をしていて、それに対する継続的な治療をする、ということは、子どもにとってどういう意味を持つのでしょうか?
- 7.0.2 Q:小学校低学年の子どもが、Youtubeで性的なコンテンツを視聴しているのがわかりました。こういった内容は嘘や過激にしているものが多いので、もう少し大きくなるまで見てはいけないと伝えましたが、その後も親の目を盗んで見ようとしているようでした。今後、どのように注意すればいいでしょうか。
- 7.0.3 Q:2歳のお子さんが男女の違いに気づいてきて、「どうしてママにはおちんちんがないの?」や「パパは男の子だからおちんちんがあるの?」と質問してきます。「ママやパパには何でも聞いていいけど、外では聞きたくない人もいるからおちんちんの話はおうちだけでしようね」と話しています。こうした言い方では、おちんちんはネガティブな言葉と思われるでしょうか?
- 7.0.4 Q:小学6年生の子どもがいまだにふざけて「おちんちん」や「うんち」という言葉を使い、面白がっていますが、最近は性交渉にも純粋に疑問として興味があるようです。きちんと説明をしても真面目に受け取ってもらえなかったり、お友達に話したらどうしようと心配しています。具体的な話は必ずしも親が教えなくても良いのでしょうか?
- 7.0.5 Q:高校生になったら海外留学を考えている娘がいます。海外に行く際に話しておくべきことがあれば教えていただきたいです。
- 7.0.6 Q:バウンダリーについて子どもに分かるように説明してください。
- 7.0.7 Q:小学校で性教育を進めていくにはどうしたらよいのか、歯止め規定を超えることはできるのか?
- 7.0.8 Q:日本はよく性教育が遅れていると言われますが、先生はどういった点が要因だと考えられていますか?
- 7.0.9 Q:小学4年生の子どもが言語化が苦手なこともあり、学校で何を習って、家で何をどう教えれば良いかわかりません。
- 7.0.10 Q:中学生はSNSやオンラインゲームを通して知る人もいます。共通の趣味があることで警戒心も薄れ、リアルで会うこともあると思います。会って性被害が起きてからでは遅いが、簡単に子どものスマホを見ることができないような保護者の場合は、どうすれば未然に防げるのか。
- 7.0.11 Q:中学生にとって身近な親戚から性的ないたずらを受けている場合、信頼できる大人に相談する際の注意点はあるか。相談された大人が必ずしも頼りになるとは限らないから。
- 7.0.12 Q:コンドームを配布するとすると、気をつけたいことは何でしょうか。
- 7.0.13 Q:実際に生徒が性被害に遭ってしまったら、保護者や関係職員は具体的にどのように対処すればいいでしょうか。また、その生徒への配慮すべき点は、こちらも具体的に教えてください。
- 7.0.14 Q:専門家とは保健室の先生も入りますか?
- 7.0.15 Q:(小学校の先生から)低学年の水泳や体育の授業では、着替える部屋を分けていません。見守りのために担任も教室に残るのは良くないのでしょうか。低学年でも部屋を分けた方が良いのでしょうか。
- 7.0.16 Q:性教育とインターネットの使い方は不可分ではないかと思います。子どもにはインターネットを使わせる前にプライベートパーツに再認識をした方が良いでしょうか
第1章 包括的性教育とは
近年、包括的性教育という世界的にエビデンスがある性教育がスタンダードになってきています。
しかし、日本の性教育は遅れています。学習指導要領にも、小学5年生の理科で「動物の誕生」と「人は、母体内で成長し生まれること」は教えるが、「受精に至る過程は取り扱わないものとする」と定義されています。これは歯止め規定と言われます。
精子や卵子、受精卵という名称は学びますが、そのプロセスの性交渉については扱いません。
また、中学1年生の保健体育では、「心身の機能の発達と心の健康」「思春期には、内分泌の働きによって生殖に関わる機能が成熟すること」は教えますが、歯止め規定で「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし妊娠の経過は取り扱わないものとする」とされています。
ところが、中学3年生では、性感染症の予防としてコンドームの使用に関して触れます。妊娠の経過について触れずにどのように学ぶのか疑問ですね。こうした歯止め規定が存在するため、今の日本の性教育は、学校や担当の先生の裁量にかかっているのが現状です。
包括的性教育とは様々なことをお子様に教えるというカリキュラムで、ガイダンスが用意されています。性に関するスキルや知識だけではなく、人権、ジェンダー観、多様性、幸福を学ぶことも含まれます。
世界では、性の学習を保証することは、性の権利であると考えられています。包括的性教育は2009年にユネスコが中心となり「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を作成しており、エビデンスに基づいた学習内容になっています。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスには、8つのキーコンセプトがあります。
- 人間関係
- 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
- ジェンダーの理解
- 暴力、同意、安全
- 健康と幸福(well-being)
- 人間の身体と発達
- セクシュアリティと性的な行動
- 性と生殖に関する健康
性教育とは、生理のことや性感染症について教えるというイメージがありますが、現在世界でスタンダードになっている包括的性教育というのは、それに限らず非常に幅広い内容を子ども達に伝えることになっています。
また、上記8つのキーコンセプトには小分類がいくつもあり、一から順番に子ども達へ教えるのではなく、それぞれの年齢にあった、わかる内容を伝えていくスパイラル型のカリキュラムになっています。
包括的性教育はレベル1からレベル4まであり、5歳から学び始めます。5歳未満の子どもに対しては、その国の事情に合わせて教えていきます。例えば、「セクシュアリティと性的な行動」性的行動・性的反応についてを一部抜粋すると、レベル1では、「人は他者に触れたり親密になることで愛情を示すことができる」けど、そこには「適切なタッチ、不適切なタッチ」がありますよと教えます。そしてレベル4になると、「性的行動は喜びを感じる行為で、自分で自分に責任を持ち」自分の意思決定や体を守ることに責任を持つという話をしていきます。
レベル1の時点で性交渉について教えることに抵抗感があるかもしれませんが、この包括的性教育には様々な科学的な効果があると実証されています。
例えば、
- 初めて性交渉する、初交年齢が遅くなる。
- リスクの高い性的な行為が減る。
- 性交渉の頻度が減る。
- コンドームの使用が増える。
- 特定のパートナーとの性的な行動ができ、性的パートナーの数が減る。
- 避妊具の使用が増える。
といった効果が実証されています。
逆に、日本における性教育でよく耳にする「まだセックスをしてはダメ」や「マスターベーションなんて不潔だからしてはいけない」という、「〜してはいけない」だけを促進する教育では、包括的性教育で得られる効果はないと言われています。
どのようにすれば安全で自分の体を守れるかということを教育する上でも、包括的性教育を適切に受けることで大きなメリットが得られます。
一つ目のメリットとして、人間関係について親に相談できたり、報告できるようになります。
二つ目に、困難な状況下で対応できたことにより、自己肯定感があがります。自分の意思で状況を変えることができるという達成感は、自信に繋がっていきます。
三つ目に、性的な関係において自分が持つ権利への理解が深まります。自分の体や心を大切にする気持ちを理解できるようになるということです。
第2章 性暴力被害に遭う可能性を減らすポイント
ここ数年、子どもへの性暴力被害のニュースが取り沙汰されており、非常に心が痛みますが、この性暴力についてしっかり学んでおく必要があります。そもそも性暴力とはなんでしょう。
性暴力とは、
- 同意のない性的な行為のこと
- 個人の尊厳を著しく踏みにじる重大な人権侵害
- 年齢や性別に関わらず、性暴力の被害を受けることがある
- 子どもや高齢者の被害もある
- 加害者の8割は顔見知り
「知らない人について行ってはいけない、知らない人に話しかけられたら逃げてもよい」と伝えることは簡単ですが、実は顔見知りや知り合い、仲の良い人がある時性暴力をふるう可能性があります。その際に「NO」と言っても良い、逃げていいということを知らないと被害に遭いやすくなります。
「顔見知りだから安心していい、知らない人だから警戒する」ということではなく、「誰でも性被害、性暴力に遭う可能性がある」ということを知っておくことが大事です。
子どもへの性暴力の例としては、着替えやトイレ、入浴をのぞかれたり、抱きつかれたり、プライベートパーツを触られたり、下着姿や裸を写真に撮られたりといったことがあります。そして加害者となるのは、よく知っている身近な大人、友達、兄弟、交際相手、インターネットで知り合った相手というのが多く挙げられています。
ここで皆さんに質問ですが、ご家庭でも着替えてる時にノックをせずに部屋へ入ったりしていませんか?これもNGです。親子であれば性暴力にならないということはありません。どんなに親しい相手であっても、プライベートである部屋や浴室に入る際はきちんとノックをして声をかけてから入るようにしましょう。
子どもが自ら性加害者となることもあります。これは、性暴力被害に遭った子どもが示す反応の一つにもなります。被害に遭った子どもの反応として、体の反応、心の変化、行動面の変化があります。行動面の変化として、不特定多数の人と安全ではない性行動を繰り返すというものがあり、これは被害に遭ったショックからトラウマ反応として起こっています。自分で自分を性的に傷つけて、自分自身が加害者になっている場合があります。
さて、皆さんに普段から子どもに伝えておいてほしいことは、
- プライベートパーツは見せない、触らせない。
- 相手のプライベートパートは見ない、触らせない。
- No! Go! Tell!
- 自分は大切に扱われる存在、相手も自分のように大切に扱われるべき存在
となります。
「プライベートパーツ」、「同意」、「No Go Tell」は絶対です。覚えてほしいのは、「プライベートパーツ」とは、口、胸、性器、お尻の4つで、体の中で特別な場所と教えて頂きたいです。体の全てが大切というだけではなく、プライベートパーツは自分以外の人に勝手に見せたり触らせたりしてはいけない、自分だけの大切な場所で、遊びのつもりでも友達や身近な人に見せない、触らせない、そして見ようとしない、触ろうとしないように伝えます。家族であっても、薬を塗るなどで触る必要がある時には、きちんとなぜ触る必要があるのか許可をとるようにしましょう。
もしお子さんがプライベートを触られたと話してくれた時は、話してくれてありがとうと伝え、遊びでも絶対にしてはいけないことで、触られたあなたは悪くないということも伝えてください。
「同意」に関わる大切な感覚として、良いタッチと悪いタッチがあると教えてください。心がホッとしたり、安心できる良いタッチは、大好きな人にギュッとされたり、怖いことがあった時に背中をさすってもらうというものです。逆に、嫌だなと思う悪いタッチは、勝手に体を触られたり、ふざけてしつこくくすぐられたりというものです。このように伝えると幼いお子さんにも非常に分かりやすいと思います。
嫌なことがあった時の対応策としての合言葉として、「NO、 GO、 TELL」を伝えてください。NOは、「イヤ、やめて、だめ」ということ。GOは、人の多いところに逃げるということ。TELLは、大人に相談してということです。
この「プライベートパーツ」、「同意」、「No Go Tell」は年齢に関わらず繰り返し伝えるようにしてください。
性暴力の話に戻りますが、子どもを性的に手懐ける5つのプロセスがあります。昨今、ニュースでもよくグルーミングという言葉を聞くことがあるかと思います。グルーミングという言葉自体は、動物の毛繕いのことを意味するため、動物を大切にしている方達にとっては、この言葉を性加害の文脈で使ってほしくないということを考慮して、ここでは手なずけるとしています。
まず、加害できそうな子どもを探すところから始めます。その子に近づき、他人から物理的、感情的に隔離しようとします。続いて、子どもとの信頼関係や愛情関係を作ります。急に性加害をするわけではありません。そして少しずつ性的な言動や行為に対して子どもの感覚を鈍らせます。このようなプロセスを経て、性加害となっていき、その後も引き続き優しく接して性的な手なずけを継続していきます。子どもには、性的行為を他の人には言えないように大事な秘密にしようと言ったり、他の人が心配するから内緒にしようと持ちかけます。
こうしたことは誰が行うのか、絶対に分かりません。そのため、家庭内で性の知識をつけておく、自分を大切にすることを伝える、何が性暴力なのか認識を合わせておくことが重要です。
第3章 子どもとインターネット・SNS
青少年のインターネット利用率は、今や98.5%に上っています。そうしたなか、実は保護者に求められていることというのがあります。まず、「青少年インターネット環境設備法」という法律があり、スマホなどのデバイスの販売業者で18歳未満の青少年がスマホを使う場合に設定するフィルタリングの説明や設定方法をその場で行うということが義務化されています。また、保護者側には、青少年のインターネット利用状況を適切に把握し、管理することが求められています。
大人が使用しているデバイスで子どもがインターネットを見ている場合、年齢制限がかからず、青少年にとって有害となり得る情報も簡単に入ってきます。子どもがデバイスを使用する際は、ぜひフィルタリングを使用してください。また、XやInstagramなど、検索がしやすく、ダイレクトメールができるアプリは誰かと繋がりやすく、被害に遭いやすくなります。特に中学生や高校生が圧倒的に多く、このようなアプリを使っても良いのか、きちんとご家庭で話し合う必要があります。
被害にあった児童の88.1%がフィルタリングを利用していませんでした。フィルタリングを利用している家庭と利用してない家庭は、約半々なのですが、被害にあった児童で調べると、圧倒的にフィルタリングしていないという状況があります。そのため、デバイスを使用させるのであれば、フィルタリングを利用することが非常に重要になります。また大人のデバイスを自由に使用させないことも大切です。
オンライン上で子どもを手なずける手口も存在します。少しずつ「いいね」やコメントで近づき、ダイレクトメールが出来るようになると、悩みを聞くようになり、親に邪魔されていないかを確認します。その会話を他の人に見られないように親密な関係を築いていき、徐々に性的な話題をするようになります。何度もやりとりをし、一人で過ごす子、普段褒められていない子、話を聞いてもらえない子、ネットリテラシーの低い子、親の監視・管理が弱い子をターゲットにします。
実際にインターネットでの事件は発生していますので、どのようなことが加害や被害になるのか知識を持つことが大切です。警視庁のホームページでは子どもの性被害をなくすための対策や啓発資料が、子どもにも分かりやすい漫画になっています。
子どもを守るテクノロジーサービスに関してご紹介させていただきます。まず、皆さんも年齢に応じてキッズケータイやキッズスマホを使い分けされているかと思います。
そして、高校生以上には使いやすいと思いますが、スマホにひそむ危険を擬似体験できるアプリもあります。
第4章 実践!幼児期からの性教育
ここからは、身近なところから性教育の意識をもって、実践できることを紹介します。幼児期の性教育とは、子どもに伝えることも大切なのですが、親の意識を作るのもとても大切です。おむつ交換やトイレトレーニングは性教育の始まりです。
まず、おむつの交換場所や着替えの場所などは、他の人からあまり見えないように配慮しましょう。夏に水遊びをして更衣室がない場合でも、タオルを体に巻いたり、隠しながら着替えをする習慣をつけると子どもも人前で体は見せないものと自然に認識していきます。
おむつの中やパンツの中はとても大事なところだと繰り返し伝えます。それによって子どもはもちろん、大人にもその意識がついていきます。その際、性器やお尻は決して恥ずかしかったり、汚いわけではないので、そういったことは言わず、自分の体で一番大事な場所だからと伝えると良いでしょう。
そして、子どもに関わる大人ですが、お母さんだけでなく、お父さんや祖父母など家族全員にプライベートパーツや子どもの性の権利を説明し、それを守るように伝えていくことが大切です。本日紹介させていただく書籍や、先ほど紹介した警視庁のサイト、またネットニュースなどをご夫婦やご家族で話し合う時間をとっていただけると、子どもの性教育を尊重できる環境が作られていくと思います。
また、そこに繋がりますが、大人が子どもの体を尊重する、大切にするところを見せ続けるということが非常に大切です。親が自分の体を大切にしてくれ、触れる時も許可をとってくれ、心を無視されていないという経験を何度もしていくことで、子どもは自分の体は大切なものなんだと理解していきます。自分の体が大切だと分かっている子どもは、説明すればお友達にも痛いことや辛いことをさせてはダメだと理解してくれます。
ご家庭での性教育というのは、日々の積み重ねになっています。子どもに関わっている人みんなが性教育について理解をしていて、子どもを守る尊重していく行動をしていくことで、子どもの理解も進んでいきます。日々の子育ての中で、なかなかうまく行かないこともあるかと思いますが、原点である子どもの気持ちを大切にしようと意識することで違いがあると思います。
具体的に何を行えば良いのでしょうか。子どもの体の権利を守るとはどういうことなのでしょうか。それは、子どもを一人の人間として関わっていくことが根本的な考えです。乳幼児の場合は、おむつを替える時に声かけをしたり、保湿剤を塗る時にも一言声をかけることが大切です。もちろん子どものイヤイヤ期でどんなことにも同意を得られないことがあると思います。時間と余裕があれば、「今はイヤなのが分かったから、これが終わったら替えようね」と子どもの気持ちを一旦受け入れて約束を作ると、子どもも落ち着き、性の権利を守ることに繋がります。
子どもの心の権利を守る点に関しては、例えばくすぐり遊びをしていて、子どもがやめてと言ったら、すぐにやめることが大切です。子どものNOやイヤを尊重し、「やめて」が守られることが普通だと学んでもらうことが大事です。お風呂に関しても、まだ小さいから一緒に入っても良いと勝手に思うのではなく、子どもが嫌がる時は、それを尊重し、しっかり同意を取ることが大切です。
第5章 おうち性教育〜絵本紹介を添えて〜
幼児期の性の質問に対して、こういった本が効果的だよというものを紹介します。まず、とても多い質問ですが、「子どもが性器を触っている」や「子どもが自慰行為をするのをやめさせたい」というものです。厚労省の調査では、3歳から6歳の子どもの性の悩みで1位、35%の親から相談があるそうです。実は、子どもにとって、性器を触ることは自然なことで、安心したり、気持ちをコントロールするために必要な行動な場合があります。場所が違うだけで、指しゃぶりと同じ意味です。
ただし、性器はとても大切でデリケートな場所であることは事実ですから、触る習慣がある時はきちんとルールを伝えてあげる必要があります。綺麗な手で、プライベートパーツだから、他の人から見えない場所で一人だけの場所で優しく触ると伝えてもらえると良いでしょう。
また、なぜ触るのかという理由についても考えてもらえれば良いと思います。単に手持ち無沙汰で触ってしまう子の場合は、一緒に別のことをして遊んだり、おもちゃを渡して気をそらすだけでその行動が変わることもあります。あるいは兄弟が生まれたり、引越しをしたり、環境の変化でそういった行動に出ることもあるので、そういった場合はスキンシップを増やしたり、コミュニケーションを取ることで心のケアをするのが大切です。単純に性器がかゆいということもあります。おむつ交換やお風呂の時に赤くなっていないか、なんで触っているのか実際に子どもに聞いてみるのも良いと思います。
一つお伝えしておきたいことは、これまでしていなかったのに、急に性器を触るようになったり、注意してもずっと触っている場合は、誰かにそういったことを教わったり、性加害が隠れているケースも一部あります。そういった場合は、どうして触っているのか、どこでそれを知ったのか、平常心で聞くようにしましょう。大人が動揺していると、子どもにとても大きな影響を与えてしまいます。子どもは、大人を不安にさせたくない、怒られたくない、自分が悪かったのかもしれないと考えてしまうので、大人は態度に出さず、優しく聞いて、話してくれてありがとうと伝えられれば良いと思います。
こういった際に役に立つ本としては、『うみとりくの からだのはなし』、『あっ!そうなんだ!わたしのからだ』が子どもに説明しやすいと思います。
子どもからの質問で、「子どもはどうやってできるの?」や「交尾ってなに?」と聞かれた場合、大人の態度として大切なのは否定をしない、なんでそんなことを聞くのと怒らない、誤魔化したり、嘘をつかない、からかわないことです。思春期に入ったときに親に相談しなくなってしまいます。性やセックスについて恥ずかしいことではないと大人の態度で示すことが大切です。また、子どもの質問には科学的に事実だけ答えるのが大事です。
例えば、「女性の卵子と男性の精子が繋がって、赤ちゃんの元になる卵が女性の子宮で育っていく」であったり、「オスがメスに精子を届けて子孫を残そうとするのが交尾」という回答であれば、科学的にも良いと思います。
または、絵本を一緒にみるのも良いと思います。フェリシモの性とからだとこころを知るカードは使いやすく、お勧めです。また、『あかちゃんがうまれるまで』という本もしっかりした内容で書かれています。
最後に、よくある質問の一つに、「うんち」「おちんちん」「おっぱい」を連呼するというものがあります。これは、語彙を覚えたばかりで真似をしているのであったり、注目を集めたいという気持ちが大きいです。そのため、無反応、無表情で聞き流すのが一番効果的です。
「いいタッチ わるいタッチ」 触ることの説明ができる本です。
まとめ
性教育は人が健康で幸せに生きていくための知識や経験をつけていくことです。ご家庭での日常会話の中で、好きなこと、嫌いなことを聞いてあげ、それを自分で伝えられるようになるのも性教育のメリットの一つです。子どもの気持ちや行動を、子どもだからと決めつけず、一人の人として受け止めあげて否定しないことがとても大切な会話のルールです。そういったやりとりを今日から行っていただければ幸いです。
Q&A
事前に頂いていた質問や、今届いた質問に答えていきます。
Q: 標準と違う体の発達をしていて、それに対する継続的な治療をする、ということは、子どもにとってどういう意味を持つのでしょうか?
子どもが自分の体や状況を肯定的に受け止めるためのお話を伺えればと思います。
自分の中でどういう意味を持つのかを知るのは、難しいことですので、子どもに聞くのが一番だと思います。その子によって何を思うかは違うとおもいますので、自分の心の気持ちを理解するためにも言葉にして伝えることも包括的性教育に繋がると思います。そして、治療しないと何が起こるのかをきちんと説明し、子どもに理解してもらい治療するのが大切です。二次性徴が早く始まることは、悪いことでも恥ずかしいことでも隠さないといけないことでもないと伝え、マイナスな伝え方は出来るだけ避けるのが良いと思います。他の子にも起こることで、少し早く起こる違いがあるという科学的な事実だけを伝えるのが大切だと思います。
どのお子さんにもあなたはあなたでとても素敵だと伝えること、自分の障害や病気を理解して適切な行動が取れるように接していただけると良いと思います。
Q:小学校低学年の子どもが、Youtubeで性的なコンテンツを視聴しているのがわかりました。こういった内容は嘘や過激にしているものが多いので、もう少し大きくなるまで見てはいけないと伝えましたが、その後も親の目を盗んで見ようとしているようでした。今後、どのように注意すればいいでしょうか。
子どもが性的なコンテンツを見ていると気づいた時、まずは落ち着き、怒らない、問い詰めないのが大切です。ここで怒ってしまうと、今後、性について親子で話しにくくなります。どうしてそれを見つけたのか、どうやってそのページを見たのかを聞きます。使用アカウントで年齢設定がきちんとできているかフィルタリングがきちんと利用できているかも確認してください。お子さんともフィルタリングの必要性を共有してください。
コンテンツがアダルトビデオと呼ばれるようなポルノ動画だった場合、これはフィクションで台本や配信者の意図があって作られていて、出演者はお互いに同意をとって演じているものだということを説明していただきたいです。
Q:2歳のお子さんが男女の違いに気づいてきて、「どうしてママにはおちんちんがないの?」や「パパは男の子だからおちんちんがあるの?」と質問してきます。「ママやパパには何でも聞いていいけど、外では聞きたくない人もいるからおちんちんの話はおうちだけでしようね」と話しています。こうした言い方では、おちんちんはネガティブな言葉と思われるでしょうか?
外で聞きたくない人というのは、本当にいると思います。それがネガティブということではないので、この言い方で問題ないと思います。
Q:小学6年生の子どもがいまだにふざけて「おちんちん」や「うんち」という言葉を使い、面白がっていますが、最近は性交渉にも純粋に疑問として興味があるようです。きちんと説明をしても真面目に受け取ってもらえなかったり、お友達に話したらどうしようと心配しています。具体的な話は必ずしも親が教えなくても良いのでしょうか?
是非、先ほど紹介したような絵本や本を利用して欲しいです。絵本でも非常に科学的に書いてありますので、わかりやすく一緒に見ていただくと良いと思います。
性教育とは「教育」とついているので、教えるものと思われがちですが、是非一緒に読んで一緒に学んで欲しいです。大人の知らないこともたくさんありますので、全部親が教えなければならないのではなく、一緒に調べてみるのが良いと思います。
Q:高校生になったら海外留学を考えている娘がいます。海外に行く際に話しておくべきことがあれば教えていただきたいです。
国や地域によって治安が変わってくるかと思います、しかしお子さんに伝える内容として基本的なことは変わらないです。プライベートパーツを大事にすること、同意を取ること、NO、GO、TELLは本当に大切なことです。また、男女の体のしくみ、妊娠の仕組み、避妊法などの知識も再確認できると良いと思います。留学先での性被害の相談先や受診先を念の為に伝えておくと万が一の時の行動がとれると思います。
Q:バウンダリーについて子どもに分かるように説明してください。
バウンダリーとは、自分と相手の境界線のことです。境界線と言っても分からないと思いますので、大事なのは「あなたと他人はどれもみんな違う人で、たとえ同じものが好きであっても、好きの大きさや中身が違う」ことを話してみてください。「あなたはすごく近づきたいと思っても、相手はそうとは限らないから、NOと言われたら離れてあげよう」と伝えます。「離れたとしても、それはあなたを嫌いということではなく、その人はその距離が心地よいと思っている」と話ができると良いと思います。
バウンダリーとして話すのではなく、プライベーツパーツや同意の話で伝えるのがわかりやすいと思います。
Q:小学校で性教育を進めていくにはどうしたらよいのか、歯止め規定を超えることはできるのか?
歯止め規定を超えて性教育を行っている小学校はありますか?
現在、歯止め規定をなくすことは非常に難しいと思います。そういった活動をしている先生方もたくさんおられますが、文科省の規定自体を今すぐ変える、あるいは近い将来変えることは難易度が高いと考えています。
歯止め規定を超えて性教育を行うということは、外部の先生を呼んで性教育を行うということですが、そのような取り組みをしている小学、中学、高校はあります。学校の教員でできないと感じたら、是非外部の専門家に頼っていただきたいです。
Q:日本はよく性教育が遅れていると言われますが、先生はどういった点が要因だと考えられていますか?
これもやはり歯止め規定が大きいと考えています。また、教員の養成課程に性教育が含まれていないことです。教員は当然、自分も教わっていないので、子どもたちに教えることができません。ですので、やはり外部の専門家に委託して取り組んで欲しいというのが私の意見です。また学校だけではなく、家庭でも大人が学んで欲しいと常に思っています。
Q:小学4年生の子どもが言語化が苦手なこともあり、学校で何を習って、家で何をどう教えれば良いかわかりません。
こちらも、今まで話してきた通り、学校では歯止め規定があるため、小学校での性教育に全て任せるのは心配です。家庭で日頃から話をするのは大切なことで、具体的になにかを教えるのではなく、本日紹介した本を一緒に読むというのも性教育の一環になります。熱のある時には体を安静に休める、体を綺麗に洗う、そういった当たり前のことを伝えるのも性教育の一つだと思います。
Q:中学生はSNSやオンラインゲームを通して知る人もいます。共通の趣味があることで警戒心も薄れ、リアルで会うこともあると思います。会って性被害が起きてからでは遅いが、簡単に子どものスマホを見ることができないような保護者の場合は、どうすれば未然に防げるのか。
予防の観点から、家庭でスマホやインターネットの使い方を管理して欲しいです。前半に、親は子どものインターネットの使い方を管理、確認しましょうと説明しましたが、法律でそのような責務が求められています。いつでも本人の許可なく何でも見て良いわけではないですが、親として安全にインターネットを使えるように手伝う役割があるから、時々確認することを伝えると良いと思います。
共通の趣味で知り合ったオンライン上の知り合いとリアルで会うとなった際は、親の知らないところで勝手に会うのではなく、どういうふうに会えば安全か一緒に相談し、いつ、どこで会うのが良いか、実際会う時に親が付き添えるかどうかも含めて約束をするのが良いと思います。
Q:中学生にとって身近な親戚から性的ないたずらを受けている場合、信頼できる大人に相談する際の注意点はあるか。相談された大人が必ずしも頼りになるとは限らないから。
実際に誰かから性的ないたずらを受けている場合は、身近な大人ではなく、専門家に相談してください。知識のない人が下手に対応しようとすると、二次被害といってお子さんに被害のトラウマを植え付けてしまうことがあります。打ち明けられた大人が落ち着いて子どもの話を遮らずに聞いて、その内容をしっかり記録しておくことが大切です。誰が信頼できる大人なのかを判断するのは非常に難しいですし、知識のない人が対応すると自体が悪化する場合もあることを知っておいてください。
Q:コンドームを配布するとすると、気をつけたいことは何でしょうか。
どんな場面でのコンドーム配布なのか分からないのですが、授業でコンドームを配布すると仮定してお話しさせていただきます。コンドームを配布することで、生徒に実際に触れてもらい、使い方を練習してもらい、実際に使用する際に正しく使い避妊をすることが目的だと思います。コンドームの装着を練習して正しくつけられるようになることを確認するのが配布の前提条件だと思いますが、その場合は性交同意年齢は16歳ですので、16歳以上を対象にしているか、矛盾していないかを考えてください。また、保護者にもその目的も合わせて事前に連絡することが必要だと思います。
Q:実際に生徒が性被害に遭ってしまったら、保護者や関係職員は具体的にどのように対処すればいいでしょうか。また、その生徒への配慮すべき点は、こちらも具体的に教えてください。
まず、学校長の判断で教育委員会に専門家チームを要請してください。必ず、専門家チームというのがあり、性加害・性被害の場合は、それについてよく知る専門家が入る必要があります。その内容に応じて専門家チームを要請していただきたいです。注意点としては、聞き取り調査を焦らないでください。聞き取り調査を焦って行い、何があったのか、教えて欲しいと本人にやってしまうのは、初期対応の典型的な失敗例です。繰り返し子どもに被害の状況を語らせるというのは、二次被害になり、トラウマとしてそれ自体が残りやすいです。
また、大人が子どもを労うつもりでかけたちょっとした言葉、「それは辛かったね」や「怖かったね」という言葉は、記憶の汚染というものを引き起こしてしまいます。これが起こってしまうと、裁判時に本人の証言としての能力を持たなくなることがあります。子どもが話してくれた時はとにかく聞くことに専念し、安心できるトーンでうなずきながら、話を遮らないことが大切です。そしてすぐに自治体の性被害ワンストップセンターや警察児童相談所、教育委員会に連絡をし専門家に必ず対応してもらいましょう。
校内の生徒同士や教員と生徒間での性被害が起きた時、安易に謝罪の場を儲けようとすることも要注意です。謝罪の場とは、本人同士が対面することになり、二次被害につながります。
こういった対応方法を多くの方に知って欲しいので、教員向けの研修を是非定期的にもっていただきたいです。警察署、児童相談所に要請して講師を派遣してもらい、性被害にあった場合、発見した時の大人の対応について知って欲しいと思います。
Q:専門家とは保健室の先生も入りますか?
これは難しいです。養護教員でも性被害にあった場合の対応について研修を繰り返し受けている人もいれば、そうでない人もいます。スクールカウンセラーなら誰でも性被害の対応ができるかといえば、そうではありません。やはり専門としている専門家に頼るべきです。
Q:(小学校の先生から)低学年の水泳や体育の授業では、着替える部屋を分けていません。見守りのために担任も教室に残るのは良くないのでしょうか。低学年でも部屋を分けた方が良いのでしょうか。
分けられるのであれば、分けた方が良いと思いますが、学校のことですので、決まりを大きく変えるのは難しいかと思います。例えば、ここで着替えるのが嫌な人はここで着替えるよという場所を作ってあげられると良いと思います。
学校の先生同士でどうするのが良いか話し合っていただくのが良いと思います。限られたスペースなどもありますので、難しいですが、個人的には低学年であっても男女同じ部屋で着替えるのはどうかと思います。
Q:性教育とインターネットの使い方は不可分ではないかと思います。子どもにはインターネットを使わせる前にプライベートパーツに再認識をした方が良いでしょうか
これは、その通りです。本日の内容で、よりはっきりしたのではないかと思いますが、プライベートパーツはなぜ大事なのかと子どもにも分かるきっかけになりとても重要なことだと思います。
それでは最後に、ファミワンでは、the Letterの重見先生ややっきー先生と性教育についての対談もおこなっており、メール配信もしておりますので是非そちらもご覧ください。