救急外来の受診タイミングと救急車を呼ぶ判断基準【保存版】

突然の体調不良や事故に遭遇すると、動揺し、戸惑い、どう対処すべきか迷うことが多いでしょう。そのような時、救急外来を受診すべきかどうかの判断に悩む場合もあるかもしれません。

今回は救急医療の現場で従事してきた私が、救急外来を受診すべきタイミングや救急車を呼ぶ判断基準、受診時に持参するべきものについてご案内します。

救急外来と一般外来の違い

救急外来とは、急な体調不良や事故による怪我等で緊急を要する医療処置が必要な患者に、365日24時間体制で、専門の医師や看護師が待機し、応急処置を行う場所です。緊急時に人の生命を守る最後の砦とも言えます。また、一般外来がお休みの土日祝日に受診の必要がある場合にも、軽症から重症まで対応します。

救急外来では、第一優先事項として、「切迫した命に関わる病気や怪我ではないか」を見極め、命を助けるための医療処置を行う場であります。緊急性がない場合には、一般外来を利用することで、本当に緊急で差し迫った状況の患者が適切な治療を受けられるようにしましょう。

一方、一般外来は、緊急を要する状態ではなく、ある程度の時間的余裕がある場合に受診します。時間的余裕というのは、患者自身がすぐに緊急の医療処置を施されなくても待てる状態である、つまり今すぐ命に関わる病気や怪我ではない状態ということです。風邪症状や普段からある高血圧や糖尿病などの慢性疾患の管理・処方は一般外来で行います。

しかしながら、一般外来を受診した患者の中にも、緊急性のある状態の患者が紛れていることがあります。また、来院した時は一見問題がなさそうでも、待ち時間に緊急を要する病状、状態に変化することもあるため、私達医療従事者は常に緊急性の有無を慎重に判断しています。

救急車を呼ぶ判断基準

次に、救急車を呼ぶかどうかの判断基準について話していきたいと思います。
一般的に救急車を呼ぶのは緊急性があるかどうかが判断基準となります。
以下の症状がある場合には、躊躇することなく、速やかに救急車を呼んでください。

  • 呂律が回らない
  • 話しにくい、会話が成り立たない
  • どちらかの口角が下がっている、または片方の口角からよだれが垂れてくる
  • 嘔吐を伴う頭痛やめまい
  • 殴られたような突然の激しい頭痛
  • 手足に力が入らない
  • 締め付けられるような激しい胸の痛み
  • 激しい背中の痛み(時に移動する痛みを伴う)
  • 呼吸困難、呼吸ができないような胸の痛み
  • 激しい腹痛
  • 吐血や下血
  • 痙攣
  • 意識障害
  • 大きな怪我や骨折が疑われる場合

これらの症状がある場合には、生命に関わる可能性が高いため、「もう少し様子をみてから」ではなく、迷わず救急車を呼んでください。

特に、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や心筋梗塞等が疑われる場合には、どれだけ早く治療介入ができるかが、命を救うだけでなく、その後の経過(麻痺が残るかどうか等)にも関係してきます。

救急外来受診の判断基準

上記のような緊急性のある症状がない場合には、一般外来や近隣のクリニックに基本的にはかかりましょう。救急外来が混雑することで本当に緊急性があり、迅速な処置を受けるべき患者が埋もれてしまう危険性があります。

また、風邪や普段から服用している血圧の薬がなくなった等の処方目的で救急外来を受診しても、基本的には短期間分(1~3日分)の薬しか処方されないことが多いです。普段から服用している薬がある場合には、なくなる前に早めにかかりつけ医に相談しておくことが大切です。

それでも、救急車をよぶべきか悩む場合や、救急外来を今すぐ受診すべきかどうか、このままひとまず様子をみていいか悩む場合には「#7119」に電話してみましょう。こちらは救急安心センター事業ダイヤルとなっており、専門のスタッフが相談に乗ってくれます。また、どの医療機関にかかればいいかわからないという相談に対しても、受診可能な医療機関を紹介してくれます。

※救急安心センター事業は全国に拡大してきていますが、全都道府県を網羅しているものではありません。「#7119」以外の番号で救急電話相談等を行っている地域もあります。お住まいの自治体に相談窓口を確認しておくことをおすすめします。

Walk in(予約なしで自家用車や公共交通機関等を利用し、自分の足で直接病院に出向き救急外来を受診する)の場合に持参すべきものは?

  • 保険証とお薬手帳(小児の場合には母子手帳も含む)
  • 現在服用中の薬(残薬も含む)※状態によっては入院になる場合もあるため

救急車で受診する場合にも、上記のものはあった方が救急車の救急隊や病院の医療従事者がスムーズな情報収集を行うことができ、早期治療介入が可能となりますので持参して下さい。また、救急車で受診する際は、履物を忘れやすいので注意しましょう。診療結果によって、入院、帰宅の場合問わず、転倒予防のため、スリッパより足の甲が覆われたスニーカー等の履きやすい靴が無難です。

もし、受診前に自宅で市販薬等を服用した場合には、何時頃、何を、どのくらい服用したのかを必ず医師へ伝えてください。

よくありがちなのは、特に高齢患者が受診する場合に、家じゅうのあちこちに大量の薬を分散して置いており、いざ家族が病院に持参しようにも、何がどこにあるのかわからないということがあります。日頃から、お薬の置き場所は分散させず、一箇所にまとめ、お薬手帳と一緒に、その置き場所を家族に共有しておきましょう。

終わりに

いかがでしたか?急な病気や怪我はならないことが一番ですが、時として避けられないことがあります。しかし、適切な対処方法を知っておけば、いざという時でも慌てずに済みます。今回のガイドを参考に、いざという時のために準備を整えておきましょう。

[参考]
・中外医学社 初期研修医のための外来研修マニュアル
https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse3338.pdf
・総務省消防庁 救急車の適時・適切な利用(適正利用)
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html

企業担当者の方へ

ファミワンでは法人向けサービスとして、女性活躍推進を軸としたダイバーシティ経営を支援する法人向けプログラム『福利厚生サポート』を提供しています。従業員のヘルスリテラシー向上や、組織風土の変容に役立つのみならず、利用促進の広報資料の作成までカバーしており、ご担当者様の負荷の削減にもつながります。