娘に鍛えられた保育士ママが語るトイレトレーニング

私はトイレトレーニングというワードを聞くと苦い思い出がよみがえりますが、この経験は保育士という職業の私の凝り固まった考えを娘が大きくかえてくれたきっかけとなりました。

まず、私は15年という保育園での現場経験の中で、担任したお子さんたちのトイレトレーニング(以下 トイトレ)に携わり、おむつを外すだけでなく、うまくトイトレが進まなかったり、始め方がわからないという悩みをもったりする保護者の方に寄り添ってきました。

そんな私だったので、娘が生まれたときに自分の頭の中で「2歳ぐらいになったら早めにトイトレはじめて年少児に進級する頃にはとれるな~」なんてすごく軽く考えていました。私には知識や経験がある!と大きな勘違いをしていたのです。

トイトレの準備は万端!?

娘が2歳の誕生日を迎える前に季節は初夏、おしっこでパンツが濡れてしまっても気温が高い日ならそんなに冷たくないし、おむつ替えをしていて、一回に出るおしっこの量が多くなり、溜めることができるようになってきているような感じがしたので、タイミングはばっちりだ!とトイトレを開始しました。

まずは絵本やDVDなどを使ってトイトレが始まることを伝えたり、一緒にパンツを買いに行ったりしました。そしてトイレの補助便座を娘の好きなディズニーキャラクターのものにして、シールを貼るところも手作りで用意し、万全の準備を終えていました。主人からも「すごいね!やっぱり保育士だから準備万端だね!」なんて褒められてすごく調子に乗っていたことを今でも覚えています。

タイミングを見てトイレに誘い、成功体験を重ねて自信をつけて、タイミングが合わなくてパンツが濡れてしまっても「大丈夫だよ。新しいのに替えようね」と声を掛けて濡れる気持ち悪さにも気付けるようにしようと思っていました。

いよいよ始まったトイトレ!

そして始まったトイレトレーニング。
娘はいつも夜寝る前におむつ替えをして、そのまま朝方おむつが濡れておらず、寝起きもとても良く、起きて15分以内におしっこが出ていたので、「このタイミングだ!」と決めてスタートしました。

トイトレが始まる前にトイレにすごく興味を持っていたので、初日は自分から座り、10分弱座っていましたが、おしっこは一滴も出ませんでした。

頃合いを見ておむつをはかせると「ジャー」と勢いよくおむつの線の色が変わりました。

「初日だし仕方ない、娘のペースでやっていこう」と穏やかに初日を迎えたのですが、ここからおしっこのトイトレが完了するまでなんと3年ほどかかってしまったのです。

おむつが濡れていないタイミングで毎回トイレに誘い、おしっこが出るのを待ちますが全くでない。
パンツやおむつをはいているときに出る。はじめは仕方ないと思っていたのですが、失敗どころか一度もトイレでおしっこが出ないことに不安と焦りを感じ始めました。

保育園の先生にも相談しましたが保育園でも全く一緒で出ない。

「なんで?」の繰り返しでした。パンツにでてしまうと必ず「濡れちゃった」と教えてくれるので、出ている感覚はあるのだろうなと思っていましたが、なかなか進まないことに自分の中でずっと何かに追われている感覚がありました。

年少にあがったタイミングで「尿検査」がありました。
その時まだおむつの子もクラスにはいたのですが、お母さんたちがタイミングをみて誘い、尿検査を提出していたのに、クラスで一人だけおしっこをトイレで出す経験がなかった娘は尿検査を提出できませんでした。その時はトイトレを初めて1年が経っていました。

尿検査を出せないということに想像以上のショックがありました。なんでこんなにやっているのに出ないのか。どこか悪いのだろうかと小児科で検査をしてもらったこともありますが、異常なし。
次第にここから娘と私のトイトレ戦争がはじまりました。

娘と私のトイトレ戦争

ネットや本でトイトレの情報を集めとにかく実践しましたし、補助便座は4種類も買いました。シールやご褒美も何種類も用意しましたが出ない。

そんな中同じ年の子を持つ友人とランチする機会があり、話題はトイトレに。

友人からは「うちはさ、全然やってないのに保育園で先生がやってくれてすぐパンツになっちゃったよ!」と言われました。もちろん友人は悪気もないし、ただ起きたことを言っただけなのに、私の心の中では「なんで一生懸命やっている娘がパンツになれないのだろう」と落ち込んでしまいました。そんなモヤモヤが日々続く中で、必死になりすぎてしまい、ある日娘に向かって「なんでおしっこできないの!?」と怒ってしまった日がありました。これは完璧に私が悪く、こんなにやっているのになんでうちの子はできないのだろうと一緒にトイレで大泣きしていました。

そこから「一回トイトレはやめよう」と思い、主人にも相談しました。

主人からは「ここのところ二人ともトイレのことになるとすごく嫌そうな顔していたよ」と言われ、ハッとしました。娘も私も頑張りすぎていたなと。

トイトレは、子どものペースで!

改めて考えたときに、トイトレは大人が主体で準備や補助をするけど、一番大事なのは本人のペースや発達過程が関係してくること。頑張ったらとれるものではないこと。

誰かと比べたり「もう〇歳なのに」などと思ったりしては絶対にいけないこと。

そして!とれる子はすぐに取れてしまうこと。こればかりは運もあること。

と自分の中で気づきがありました。

保育の現場でもそれまでは保護者の方から相談されたときに「おむつを外したい」という気持ちに寄り添いすぎて、トイトレの方法やゴールを勝手に決めつけてしまっていた自分がいました。娘はそんな私にもっと大事なこと、これからの保育や教育の中で個々の成長がとても大事で、そこを上手にアシストするのが私たち保育士の役目であることを教えてくれたようにおもいます。

そこから娘のパンツが完全に外れたのは6歳目前のとき。私の中で決めたゴールから3年も経っていました。

ネットや本では様々なトイトレの知識が混在しているし、様々な子どもに関わるプロたちがより良い方法を伝えてくれています。どれも間違いはないし、実際にそれを見たり聞いたりしてすんなりトイトレが完了した子も多いと思います。

トイトレを通して気づいた大切なこと

ただ、私がこの経験を元にと、保育士である立場から思うことは、トイトレは思ったようには進まないこともあるし、それがお母さんや子どもに原因があるわけではないこと。怠けているから取れないことでは絶対にないこと。

娘のトイトレを経験してから、お母さんたちにかける言葉も本当に変わりました。

「大丈夫ですよ、〇〇ちゃんのタイミングでトイトレが完了するので、一緒に見守りながら必要なことを考えていきましょう」と、頑張っているのに取れないもどかしさや不安、焦りにもしっかり寄り添えるようになりました。

もしもこれで娘がすんなりとれていたらどれだけ天狗になっていたことか、考えるだけで背筋が凍り付きます。努力や理想ではうまくいかないことがある。それが子育てです。その中のトイトレはまさに私を大きく鍛えてくれました。

何度も言いますがトイトレはうまく進まないことを前提に考えていいと思います。
頑張りすぎず、リラックスして、お母さんもお子さんも気持ちよく進めてほしいなと思います。

周りの子と比べず、大きく環境が変わる小学校入学を大きなゴールとして、一歩一歩進めていってほしいです。

私自身はトイトレを始める前にトイレを子どもにも身近な親しみのある場所であることに気づいていてほしいなと思います。

大人が座る便座は子どもからすると大きく、特に便器の中は「落ちたら怖い!」と思う子もいるようです。

一緒にトイレを見たり、大人が座ってみたり、電車に見立てて座らせたりと少しずつ慣れる経験からはじめてみてもいいと思います。

そしていきなり「トイレに座っておしっこがでること」「感覚を掴んでトレにいけること」「パンツで1日過ごせること」とゴールを決めずに、スモールステップで進めていくのがコツかと思います。
パンツになったのが早くても遅くても「おむつが外れる」という行先は一緒です。
競争ではないので、ご家庭での無理ない取り組みを始めてみてください。

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