【ニュース】妊婦さん向けRSウイルスワクチンの定期接種が開始します

2026年4月から、妊婦さんを対象にしたRSウイルスワクチン「アブリスボ(ファイザー)」が定期接種として無料で受けられるようになります。
厚生労働省が正式に決定したニュースで、出産を控えた方には関心の高い話題かと思います。

RSウイルス感染症とは

RSウイルス感染症は、乳幼児がかかると重症化することがある呼吸器感染症です。
大人では風邪のような軽症で済むことが多いのですが、赤ちゃんは気道が狭く呼吸器の抵抗も弱いため、重症化しやすい傾向があります。
特に生後6か月未満の赤ちゃんは細気管支炎や肺炎にかかる可能性が高く、入院が必要になることもあります。

厚生労働省の過去のデータでは、生後12か月未満の赤ちゃんでRSウイルスに感染する割合は5〜10%、生後6か月未満でも2〜3%と推定されており、出生直後の期間がいかにリスクの高い時期かがわかります。

RSウイルスは季節性の感染症ですが、流行時期は年によって前後するため、生まれる季節によっては生後すぐに感染リスクが高まることもあります。

RSウイルスは空気感染ではなく、主に接触感染や飛沫感染で広がります。
感染者と直接触れる、あるいは感染者が触れたものを触った手で口や鼻に触れることで感染します。

現時点でRSウイルス感染症の治療には特効薬がなく、酸素投与や点滴、呼吸管理など症状を和らげる対症療法が中心です。赤ちゃんの機嫌や授乳状況を見ながら、必要に応じて早めに受診することが大切です。

従来の予防法

これまでの予防法は、手洗いやマスク、身の回りの物の消毒など、感染経路を防ぐ方法が中心でした。
また、重症化リスクの高い赤ちゃんには抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤「シナジス」がありましたが、対象が早産児や先天性心疾患などに限られ、正期産の赤ちゃんには使えないという課題がありました。
さらに毎月の接種が必要で、流行期の把握も難しいという問題がありました。

RSワクチンの登場

そこで登場したのが、妊婦さん向けワクチン「アブリスボ」です。
2024年1月18日に承認され、6月から国内で発売されました。
妊婦さんへの接種は1回筋肉注射で行われます。ワクチンを接種すると、母体で作られたRSウイルスに対する抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。

その結果、出生直後から赤ちゃんのRSウイルス感染症を予防できることが期待されています。

臨床試験の結果では、RSウイルスを原因とする中等症以上の下気道感染症の発症率は、生後90日までに接種した赤ちゃんでは約57%減少、生後180日では約51%減少しました。
より重症度の高い下気道感染症では、生後90日で約82%、生後180日で約69%減少しています。
つまり、ワクチンを接種した妊婦さんから生まれた赤ちゃんは、生後3か月までに約8割、半年までに約7割程度、重症化する下気道感染症にかかるリスクを減らせることになります。
これは、出生直後の赤ちゃんを重い呼吸器感染症から守る力が十分にあることを示しており、妊娠中の接種が赤ちゃんへの大きな「プレゼント」になると考えられます。

ワクチン接種のタイミングは妊娠28~36週が望ましいとされています。

この期間に接種すると、母体で作られた抗体が胎盤を通じて効率よく赤ちゃんに移行します。
また、抗体が十分にできるまでには約2週間かかるため、出産予定日より14日以上前に接種することが理想です。しかし、出産は予定どおりに進むとは限らないため、妊娠週数が近づいたら主治医と相談して、無理のないスケジュールで接種を調整することが重要です。

妊娠中から接種のタイミングを考えておくことは、生まれてくる赤ちゃんを守るための準備につながります。
基本的にはどなたでも接種可能なワクチンですが、妊娠高血圧症候群の方は体調や合併症の有無に応じて、医師と相談しながら接種可否を判断する必要があります。

定期接種になるにあたり

今回定期接種に変更になることによって、これまで任意接種だと1回あたり約3万円だった自己負担が、公費(無料)で受けられるようになることも大きなメリットです。

定期接種になると聞くと、「必ず受けなければいけないの?」と不安になる方もいるかもしれませんが、「定期接種=義務」ではありません。
任意接種の対義語が「必須」ではないことを知っておくと安心ですね。
また定期接種になることで、副反応が起きた場合の救済制度が手厚くなるというメリットもあります。

副反応は接種部位の痛みや頭痛などが多く、現在までに早産や低出生体重など胎児への影響は報告されていません。

まとめ

生まれてくる赤ちゃんを守るための準備を妊娠中から自分の手で選べるのは、とても素敵なことだと思います。
もちろん、考え方は人それぞれで良いので、このニュースがワクチン接種について考えるきっかけになれば嬉しく思います。

参考文献:
定期接種、任意接種、臨時接種の違いを教えてください。 | FAQで学ぶワクチン | ワクチンを学ぶ
小児に関するRSウイルス感染症の予防について001597064.pdf

企業担当者の方へ

ファミワンでは法人向けサービスとして、女性活躍推進を軸としたダイバーシティ経営を支援する法人向けプログラム『福利厚生サポート』を提供しています。従業員のヘルスリテラシー向上や、組織風土の変容に役立つのみならず、利用促進の広報資料の作成までカバーしており、ご担当者様の負荷の削減にもつながります。