「酷暑日」からおなかの赤ちゃんを守るために。妊娠中の暑さと切迫早産の関係とは

2026年4月、気象庁は最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と決定しました。これまでの「猛暑日」では言い表せないほどの過酷な暑さが、いまや私たちの日常になろうとしています。

そんな中、これから出産を迎えるママに、知っておいてほしいニュースがあります。東京科学大学の研究チームによって、「妊娠中期の暑さ」が早産のリスクに関係していることが明らかになったのです。

今回のコラムでは、妊婦さんは酷暑とどう付き合っていくべきかをまとめます。

猛暑日よりも暑い日がある

最近の天気予報では「夏日」「 真夏日」「 猛暑日」といった言葉を耳にする機会が増えました。実はこれらには、それぞれ意味があります。

・夏日:最高気温25℃以上
・真夏日:最高気温30℃以上
・猛暑日:最高気温35℃以上

そして2026年、新しく酷暑日:最高気温40℃以上という言葉が加わりました。

これは、これまでの「猛暑日」という言葉だけでは表現しきれないほど、日本の夏の暑さが厳しくなってきていることを示しています。

暑さと切迫早産の関係

東京科学大学の研究チームによって、「妊娠中期の暑さ」が早産のリスクに関係していることが明らかになったのです。研究では妊娠5~6カ月に当たる16~22週で高温にさらされたグループは、早産のリスクが統計的に明らかに上昇していたと発表しています。妊娠19週ごろに極端な暑さにさらされると、早産のリスクが16%高まるという結果が出ています。

切迫早産に繋がる原因として、子宮の出口にある子宮頸管(けいかん)が高温の影響で炎症を起こして通常よりも早く緩み、早産につながる可能性があるとのことでした。

切迫早産とは

今回の研究結果で暑さが切迫早産に関係すると発表されましたが、切迫早産について改めておさらいしていきましょう。

切迫早産とは、妊娠22週0日から36週6日までの間に、規則的な子宮収縮が認められ、子宮頸管が開き出しているなど、早産となる危険性が高い状態を指します。

切迫早産の原因

1. 既往歴や手術の影響

過去の妊娠経過や子宮への処置が、現在の切迫早産のリスクを高めることがあります。

  • 早産・後期流産の経験: 過去に早産や後期流産(妊娠12週以降の流産)を経験している場合、繰り返すリスクが高くなります。
  • 子宮頸部の手術: 子宮頸がんの前がん病変などに対して行われる円錐切除術の既往があると、早産のリスクが通常の1.5〜3倍高まります。
  • 放射線治療: 骨盤領域への放射線治療は、子宮や産道を硬くさせ、早産のリスクを高めることが知られています。

2. 今回の妊娠における要因

  • 多胎妊娠: 双子などの多胎妊娠は、単胎に比べて早産のリスクが非常に高くなります。
  • 子宮頸管短縮: 妊娠18〜24週頃の経腟超音波検査で子宮頸管が短い(目安として25mm未満)と診断された場合、早産の可能性が高まります。
  • 子宮筋腫: 子宮筋腫がある場合、妊娠中に切迫早産を引き起こす要因となることがあります。
  • 絨毛膜下血腫: 胎嚢周辺に血腫がある場合、流産や早産のリスクが上昇する可能性があります。

3. 感染症と炎症

感染は早産の主要な原因の一つです。

  • 細菌性腟症: 腟内の細菌バランスが崩れ、炎症が子宮内に及ぶ(上行性感染)ことで早産率が2倍以上高まると報告されています。
  • 歯周病: 妊婦が歯周炎にかかっていると、早産や低出生体重児出産の頻度が約2倍になると指摘されています。
  • 無症候性細菌尿: 自覚症状がない尿路感染も早産に関連する可能性があります。

4. 生活習慣・栄養状態

  • 喫煙: ニコチンによる血管収縮が胎盤への血流を減少させ、切迫早産や前期破水、早産のリスクを増加させます。受動喫煙も同様に悪影響を及ぼします。
  • 低体重(やせ): 妊娠前のBMIが18.5未満の女性は、切迫早産や早産、低出生体重児分娩のリスクが高くなります。
  • 飲酒・薬物: アルコール摂取や危険ドラッグの使用は、胎児の発育不全とともに早産のリスクを高めます。
  • 過度な労働: 週40時間以上の勤務や夜勤、長時間の立位作業などは流早産のリスクを高めるという報告があります

切迫早産の治療法

切迫早産の治療の主な目的は、妊娠期間を延長させて胎児の成熟を図ること、および出生後の児の予後を改善するための処置を行うことにあります。

1. 子宮収縮抑制薬(陣痛どめ)の投与

子宮の規則的な収縮を抑えるために、子宮収縮抑制薬を使用します。状態によって、内服薬+自宅での安静、もしくは入院し点滴をするかになります。

2. 感染症への対応(抗菌薬)

絨毛膜羊膜炎への対応: 母体に発熱や炎症反応(白血球増多やCRP高値)が認められ、臨床的絨毛膜羊膜炎が疑われる場合は抗菌薬が投与されます。感染が重篤な場合は、妊娠の継続よりも早期の娩出が優先されます。

3. 外科的治療(子宮頸管縫縮術)

頸管縫縮術: 頸管無力症(痛みがないのに子宮口が開いてくる状態)が原因の場合、子宮口を縛る手術(マクドナルド法やシロッカー法)が行われることがあります。ただし、すでに感染や強い子宮収縮がある場合には適さないことがあります。

切迫早産の治療は、母体の状態だけでなく、お腹の赤ちゃんの週数や推定体重を考慮して方針が決定されます。

妊婦の夏の過ごし方

「40℃」という気温は、もはや根性や我慢で乗り切れるものではありません。おなかの赤ちゃんとの健やかな毎日のために、今年の夏はさらに意識して生活しましょう。

「安定期」だけど要注意

妊娠16週以降は一般的に「安定期」と呼ばれますが、切迫早産の可能性もありますので、自分の体調と相談しながら、行動するようにしましょう。外出の予定がある日は、まず最高気温をチェック。40℃近い「酷暑日」なら、予定をずらすことも検討しましょう。

WBGTを確認する

WBGTとは暑さ指数と呼ばれ熱中症を予防する目的として定められています。①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標から熱中症の危険度を表しています。

(熱中症予防サイトより引用)

最高気温が高くなくても、湿度が高い場合は熱中症リスクが高まるので、注意しましょう。

「のどが渇く前」の水分補給を

「のどが渇いた」と思ってからの水分補給では遅く、熱中症リスクもあります。自分が「暑い」「のどが渇いた」と感じる前に、こまめに水分と塩分を摂りましょう。

エアコンを使用する

電気代や冷えを気にしてエアコンを控える方もいますが、適切な室温(26〜28℃目安)を保ち、外気との温度差で疲れないよう工夫して、快適に過ごせるようにしましょう。

職場や外出先でのエアコンによる冷えが気になる時はレッグウォーマーを使用し、足首を冷やさないなど工夫をしましょう。

おわりに

「酷暑日」という言葉が新たに定められ、夏の暑さにより一層気をつける必要があります。「安定期だから大丈夫」と思いがちですが、新しい研究結果から暑さから身を守るための「新しい意識」が必要です。

「今日は暑いから、お家でゆっくりしよう」

「無理して歩かず、タクシーを使おう」

そんな風に柔軟に予定を変えることが結果として赤ちゃんを守ることにつながります。これからの新しい夏、体の声にいつもより少しだけ敏感に、ゆったりとした気持ちで過ごしていきましょう。

参考文献

・「早産リスク 猛暑で増 東京科学大チーム 妊娠中期 19週は1.16倍に」毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20260420/ddn/041/100/004000c

・「最高気温が40℃以上の日の名称を「酷暑日」に決定」気象庁

https://www.jma.go.jp/jma/press/2604/17a/40degree_name.html

・プレコンサポーターテキストブック

・産婦人科診療ガイドライン産科編2023

・産婦人科 診療ガイドライン ━婦人科外来編 2023

・プレコンノート

・熱中症予防のための情報・資料サイト 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html

・熱中症予防サイト

https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

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