「仕上げ磨きを嫌がる」「歯みがきをするとすぐ終わらせようとする」など、子どもの歯みがきに悩んでいませんか?しかし、乳歯の時期から身につけた歯みがき習慣は、一生使う歯の健康につながる大切な生活習慣です。
今回は、子どもの歯みがき習慣の大切さと、家庭でできる工夫について紹介します。
子どものむし歯はなぜ予防が大切?
乳歯は永久歯に比べて歯質がやわらかく、むし歯になりやすい特徴があります。また、一度むし歯になると進行が早く、永久歯の生え方や歯並びにも影響することがあります。むし歯は自然に治ることがないため、毎日の予防が何より重要です。
さらに、歯と口の健康は食事や発音、全身の健康にも関わっています。日本歯科医師会が実施する「歯と口の健康週間」でも、歯科疾患の予防習慣の定着が健康づくりの重要なテーマとして掲げられています。
むし歯はどうやって起こるの?
口の中にいるむし歯菌は、食べ物に含まれる糖を分解して酸をつくります。この酸が歯の表面を溶かすことが、むし歯のはじまりです。生まれたばかりの赤ちゃんにはまだむし歯菌はいませんが、歯が生えて甘いものを口にするようになると、周囲の大人からむし歯菌が伝わり、むし歯ができる条件がそろっていきます。
大切なのは、むし歯菌がどのように感染するのかを知ることです。日本小児歯科学会は、スプーンや食器の共有といった日常的な接触が一因となりうると指摘しています。そのうえで、食器を共有しないことだけに気を取られるよりも、保護者自身が口の中を健康な状態に保ちながら子育てをすることが、むし歯予防においてより重要だと述べています。
歯磨きは「乳歯が生える前」から
歯磨き習慣は、歯が生える前から始めましょう。まずは濡らしたガーゼで歯茎を拭いたり、食後にお茶や湯冷ましを飲ませることで、口の中を清潔に保つ練習ができます。
歯が生え始めたら、歯ブラシを用意し歯磨きを習慣に。1歳を過ぎたら、歯ブラシを持たせて自分で磨いてもらいましょう。ただし、自分で十分に磨けるようになるのは、小学校中学年頃といわれています。それまでの間は、毎日の仕上げ磨きが欠かせません。
仕上げ磨きのコツは、子どもを仰向けに寝かせ、両ひざの間に頭を安定させる姿勢をとること。口の中がよく見えて、しっかり確認しながら磨けます。磨く順番を決めて、一筆書きのように口の中を一周するイメージで丁寧にみがきましょう。
フッ化物配合歯磨き剤の正しい使い方
むし歯予防に有効として広く使われているのが、フッ化物配合歯磨き剤です。日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会など4学会の合同提言(2023年)では、年齢ごとの使用量と濃度が次のように示されています。
| 年齢 | 使用量の目安 | 推奨フッ化物濃度 |
| 歯が生えてから2歳 | 米粒程度(1〜2mm) | 1000ppmF |
| 3〜5歳 | グリーンピース程度(5mm) | 1000ppmF |
| 6歳〜 | 歯ブラシ全体(1.5〜2cm) | 1500ppmF |
就寝前を含めて1日2回の歯磨きが推奨されており、磨いた後は歯磨き剤を軽く吐き出す程度にとどめ、うがいをする場合は少量の水で1回だけにするのがポイントです。口に残ったフッ化物が長くとどまるほど効果が高まります。
保護者が知っておくべきポイント
「6歳臼歯」に注意!
5歳半〜7歳ごろに、乳歯の奥歯のさらに奥に最初の永久歯(6歳臼歯)が生えてきます。この歯は生えたてのころは特に磨きにくく、むし歯になりやすい時期です。親が意識して丁寧に磨いてあげましょう。
「乳歯だから」は大きな誤解!
乳歯のむし歯は、子どもも親も気づきにくく、気づいた時にはかなり進行していることもあります。きれいな乳歯は、正しい歯並びやかみ合わせへとつながるもの。「どうせ生え変わる」ではなく、「今ある歯を大切にする」姿勢が、一生の歯の健康を守ります。
就寝前の仕上げ磨きは丁寧に
睡眠中は唾液の分泌が減り、食べ物が口の中に残りやすくなるので、夜の仕上げ磨きは丁寧におこないましょう。
歯科医院での定期健診を
家でのケアと同じくらい大切なのが、かかりつけ歯科医を持つこと。日本小児歯科学会は、小さい時からの定期的な予防と管理が、12歳時点でのむし歯の本数に大きく影響することを示しています。定期健診を受けている子どもは受けていない子どもに比べ、むし歯の数が少ないというデータもあります。
歯の生え方や質によって「むし歯になりやすい歯」「なりにくい歯」には個人差があります。ぜひかかりつけの歯科医に相談し、その子に合ったケアのアドバイスをもらいましょう。
おやつのポイント
①おやつは1日2回まで。
食事とおやつの間は、歯の修復時間として最低2時間は空けましょう。
10時と15時など時間を決めることで、生活リズムも整います。
②組み合わせを工夫して
甘いおやつにはお茶や牛乳を組み合わせるなどの工夫がおすすめです。
スナック菓子や甘いおやつだけにならないように果物やチーズ、ヨーグルトなども取り入れていきましょう。
歯ブラシによるケガに注意
「自分で歯をみがきたい!」と言い始めるのは、子どもの成長の大切なサインです。特に1~2歳頃になると自立心が芽生え、何でも自分でやりたがるようになります。しかしその一方で、この時期は歯ブラシによる思わぬケガが増える時期でもあります。こども家庭庁が公表するCDR(Child Death Review:予防のためのこどもの死亡検証)の報告では、歯みがき中に転倒し、歯ブラシが口やのどに刺さる事故が少なくないことが紹介されています。
歯ブラシの突き刺し事故は、「歩きながら歯みがきをしていて転んだ」「布団の上で歯みがきをしていて足を取られた」「仕上げみがき中にぶつかった」など、日常の何気ない場面で起こります。東京都の報告では、歯ブラシによるケガで救急搬送された多くが1~2歳児だったとのことです。
事故を防ぐためには、子どもを座らせた状態で歯みがきを行い、保護者が必ず近くで見守ることが大切です。また、柄が柔らかく曲がるものや、のどの奥まで入りにくいストッパー付きの歯ブラシを選ぶことも有効とされています。
もし歯ブラシや棒状のものが口の中に刺さってしまった場合は、傷が小さく見えても自己判断せず医療機関を受診しましょう。見た目以上に深く傷ついていることもあります。特に、歯ブラシが刺さったままの場合は無理に抜かず、速やかに救急要請を行うことが重要です。
毎日の歯みがきを、むし歯予防だけでなく安全にも配慮した習慣にしていきましょう。
歯みがきを習慣化する3つのコツ
① 毎日同じタイミングで行う
朝食後と就寝前など、生活リズムの中に組み込むことで習慣化しやすくなります。今は歯磨き習慣を促す様々なコンテンツが展開されていますので、ご家庭にあった方法を探してみましょう。
② 達成感を味わう
歯みがきが終わったらシールを貼る、カレンダーに記録するなど達成感を味わえる工夫も効果的です。
③ 保護者も一緒に磨く
子どもは大人の真似をして学びます。家族みんなで歯みがきをすることで、自然と習慣として定着しやすくなります。
まとめ
6月4日〜6月10日は「歯と口の健康週間」です。子どもの歯みがき習慣は、むし歯予防だけでなく、生涯にわたる健康づくりの第一歩。乳歯が生え始めた頃から無理なく続けられる方法を取り入れ、親子で楽しく歯みがきに取り組みましょう。毎日の小さな積み重ねが、将来の健康な歯につながります。
参考文献
・公益財団法人母子衛生研究会「むし歯にならない食べ方」https://www.mcfh.or.jp/jouhou/ha/mushiba.html
・ 公益財団法人母子衛生研究会「乳幼児期の歯みがきのポイント」https://www.mcfh.or.jp/jouhou/ha/point.html
・ 日本小児歯科学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」https://www.jspd.or.jp/recommendation/article19/
・ 日本小児歯科学会「これからの小児歯科医療と保健~8020の実践のために~」https://www.jspd.or.jp/recommendation/article06/
・ 日本小児歯科学会「乳幼児期における親との食器共有について」https://www.jspd.or.jp/recommendation/article24/
・日本歯科医師会「歯と口の健康週間」
https://www.jda.or.jp/enlightenment/poster/
・こども家庭庁「1~2歳から増える歯ブラシの突き刺し事故を防ぐには」
https://cdr.cfa.go.jp/contents/2024/06/








