
熱中症とは、高温多湿な環境下にいることで体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をさします。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、場合によっては死亡することもあります。
熱中症について正しい知識を身につけ、 体調の変化に気をつけるとともに、 周囲にも気を配り、熱中症による健康被害を防ぎましょう。この記事では熱中症予防について紹介していきます。
熱中症はどれくらい起こってるのか
近年の猛暑により、熱中症による救急搬送者数は増加の傾向があります。熱中症による救急搬送人員の増加の要因として、気温や湿度等の上昇が関係していることが分かっています。今後、気候変動による気温の上昇により、搬送者数や死亡者数(超過死亡)がさらに増加することが予測されています。特に、梅雨明け前後の暑さには、最も注意が必要です。

熱中症が起こる条件
熱中症になりやすい環境
・気温や湿度が高い
・日差しが強い
・閉め切った室内
・風通しが悪い
・車の中
・急激に気温が高くなった
特に気温が28℃以上、湿度70%以上になると注意が必要です。
熱中症になりやすい方
・乳幼児
・高齢者
・肥満の方
・持病がある方
・低栄養状態の方
子どもは体温が上がりやすく、自分で予防できないことが多いため、熱中症になりやすいです。
年齢区分別では、高齢者が最も多く、次いで成人、少年、乳幼児の順となっています。

【熱中症になりやすい状況】
・激しい運動
・慣れない運動
・長時間の屋外作業
・脱水状態(下痢など)
・体調不良(寝不足など)
・ベビーカー(地面からの照り返し)
熱中症の症状
【軽症】
・めまい ・筋肉痛 ・筋肉のこむら返り ・汗が止まらない ・手足のしびれ
【中程度】
・頭痛 ・吐き気 ・だるさ ・集中力や判断力の低下
【重症】
・水分補給が自分でできない ・よびかけに反応しない ・まっすぐ歩けない ・高体温
・意識がない ・痙攣
熱中症の予防と対策
熱中症を防ぐためには、それぞれの場所に応じた対策を取ることが重要です。適切な対策をとりましょう。
屋内では
・エアコン等で温度を調節
・遮光カーテン、すだれを利用
・室温をこまめに確認
環境省では熱中症を未然に防止するため、環境省熱中症予防情報サイトにおいて、熱中症へのかかりやすさを示す「暑さ指数(WBGT)」の情報提供を行っています。さらに、同サイトの暑さ指数の情報を「民間のメール配信サービス(無料)」でお知らせしています。これらの情報を活用することも重要となります。
また令和6年(2024年)4月から、熱中症警戒アラートの一段上の熱中症特別警戒アラートが新たに創設されました。熱中症特別警戒アラートが発表される場合は、過去に例のない危険な暑さが予測され、人の健康に係る重大な被害が生じる恐れがあります。ニュースや天気予報、環境省及び気象庁の熱中症予防に関する情報も確認し、適切な熱中症予防行動をとりましょう。
屋外では
・日傘や帽子の着用
・日陰の利用、こまめな休憩
・天気のよい日は、日中の外出をできるだけ控える
からだの蓄熱を避けるために
・通気性のよい、吸湿性・速乾性のある衣服を着用する
・保冷剤、氷、冷たいタオルなどで、からだを冷やす
市販のアイスパックなどがあれば、それを頚部、腋窩部(わきの下)、鼠径部(大腿の付け根、股関節部)に当てて皮膚の直下を流れている血液を冷やしたり、また、頬、手のひら、足の裏を冷やすことも有効です。

こまめに水分を補給する
室内でも、屋外でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分を補給しましょう。
高齢者は暑さや水分不足に対する 感覚機能やからだの調整機能も低下しているので、注意が必要です。
経口補水液やスポーツドリンクは、水分と塩分をスムーズに体に吸収できるため、大量に汗をかいたときや炎天下で作業したときなどに良いでしょう。
経口補水液が苦手な場合はリンゴジュースなど塩分・糖分が入っている飲料がおすすめです。
いつもより飲水が少ない場合は、排尿の量や性状も確認しましょう。体の中の水分量が不足していくと、尿の黄色味は濃くなっていき、オレンジ色から茶褐色へと見た目が変化します。
熱中症になった場合の対処法と受診の目安
熱中症が疑われる人を見かけたら?
・涼しい場所へ
エアコンが効いている室内や風通しのよい日陰など、涼しい場所へ避難させる
・からだを冷やす
衣服をゆるめ、からだを冷やす (特に、首の周り、脇の下、足の付け根など)
・水分補給
経口補水液などを補給する
受診の目安
一度熱中症にかかると、正常に回復するまで数日以上かかります。熱中症は急速に進行して重症化しますので、早めに異常に気づき、応急処置を行うことが大切です。めまいや頭痛、吐き気等、熱中症が疑われる症状がある場合には、まず涼しい環境で十分に休息させ、症状が改善しない場合には医療機関を受診しましょう。
また、「呼びかけや刺激に対する反応がおかしい」、「応答がない(意識障害がある)」ときには、誤って水分が気道に流れ込む可能性があるため、口から水分を摂らせるのは禁物です。すぐに救急車を呼び、医療機関を受診しましょう。意識があっても自力での水分の摂取ができない場合は症状が重くなっていると考えられます。救急車を呼ぶなど、すぐに病院に搬送する手段をとりましょう。ペットボトル飲料のフタを自力で開けられるかどうかも、判断材料のひとつになります。自力でフタが開けられない場合は、すぐに病院に搬送しましょう。
〈参考〉
・熱中症予防のための情報・資料サイト(厚生労働省)
・子どもの予防可能な傷害と対策「熱中症」(公益社団法人 日本小児科学会) ・政府広報オンライン「熱中症は予に防が大事!熱中症特別警