妊活中のお薬の使用について、赤ちゃんへの影響が気になる方も多いと思います。妊娠初期は、赤ちゃんの神経や心臓などの器官が作られる大切な時期ですが、妊娠していることに気がつかず、薬を使用してしまうこともあるかもしれません。ただ、多くの薬は心配のないものが多く、正しい知識を持って、必要な薬についてはきちんと服用することが大切です。
妊活中の薬
妊活中でも、月経~排卵までの低温期であれば妊娠の可能性は低いためお薬の使用についてもそこまで注意を必要としません。しかしながら排卵~月経までの高温期については妊娠の可能性があるため、薬の使用について慎重になる必要があります。
多くの妊娠検査薬は「生理予定日から1週間後を目安に使用すること」となっていますが、妊娠週数の数え方は、最終月経の開始日が妊娠0週0日となるため、妊娠検査薬が陽性となった時点ですでに妊娠5週以降に突入していることになります。そのため、妊娠に気づかずお薬を使用しているということは容易にあり得ることなのです。
もし妊娠に気づかずお薬を使用していても、ほとんどの場合は問題ありません。それは、万が一妊娠3週までに赤ちゃんに影響のあるお薬を使用し、赤ちゃんに有害な影響があった場合は残念ながらその受精卵は着床せず流産となる可能性が高く、妊娠が継続していればお薬の影響はほぼないと考えて大丈夫であるという考え方に基づきます。
しかしながら、妊娠4週~7週までの妊娠2カ月目は「絶対過敏期」と呼ばれ、この期間は赤ちゃんのさまざまな器官が形成され、お薬の影響を一番受けやすいとても大切な時期とされています。したがって、妊娠検査薬で陽性反応が出た後のお薬の使用については、受診した産婦人科の先生に相談をしてくださいね。
市販薬を使用する場合
ドラッグストア等で購入できる市販薬は、お医者さんから処方されるお薬と比較して穏やかな効き目の場合が多く、また使用期間も短期間で済むように1回の販売量が少なくなっています。ご自身で市販薬を購入される際は、妊活中であることをドラッグストアの薬剤師や登録販売者にご相談いただくと、もし妊娠していても安全な成分を選択してもらえるため、より安心かと思います。
風邪薬
解熱目的の成分としては、通常量・短期使用であれば妊娠中でも「アセトアミノフェン」が安全であることが分かっています。また咳止めに対しては限られたデータとなりますが、「デキストロメトルファン臭化物塩」を頓用で使用する分には問題ないとされています。また、痰が絡んで辛い場合は、「ブロムヘキシン塩酸塩」や「アンブロキソール塩酸塩」などは妊婦さんにも使用経験があります。
便秘薬
基本的には食物繊維を豊富に取り入れたバランスのいい食事をとることで症状の改善を図っていきましょう。それでも便秘症状が改善しない場合は、一時的に「マグネシウム塩酸塩」や「ビオフェルミン製剤」などを使用します。一方で便秘に対する漢方薬の中には流産を誘発する可能性があるものもあり、妊活中の使用は避けることが望ましいとされています。
抗アレルギー薬
妊活中に花粉症の時期が重なり、どうしてもアレルギーの薬を使用したい場合もあると思います。もしお薬を使用する場合は、なるべく局所的に作用する点鼻薬や目薬などを選択しましょう。それでも症状が辛い場合は、経験的に「フェキソフェナジン塩酸塩」や「ロラタジン」などの第2世代抗ヒスタミン薬は比較的赤ちゃんへの影響が少ないことが分かっています。
鎮痛薬
「アセトアミノフェン」が主成分の鎮痛薬であれば、妊娠中でも比較的安全に使用できることが分かっています。
持病で薬を使用している場合
持病がある人が妊活を行っていくうえで大切なことは、ママの病気を上手にコントロールしながら、しっかり主治医の先生と相談の上で妊活を進めていくということです。
たしかにお薬の中には、すべてではありませんが、赤ちゃんに奇形などの影響を及ぼすものもあります。しかしながら、赤ちゃんへの影響が心配だからと言って、自己判断でのお薬の減量や中止をしてしまうと、かえってご自身の体調や赤ちゃんにとって悪い影響を及ぼす可能性があります。
まずは主治医の先生に妊活を行いたいという希望を伝え、日常的に薬を使用している場合はお薬の種類を少なくする、またはより安全性が高いお薬に変更する、治療を終えてから妊活を始めるなど、ママの体調や赤ちゃんにとって一番いい選択となるよう工夫ができないか、よく話し合ってみてください。
また、もし持病でお薬を使用しながら妊活を行う場合、サプリメントなどの使用についても注意を要する場合がありますので、購入する場合は専門家に相談するようにしましょう。
ワクチンについて
不活化ワクチンについては、ウイルスの毒性をなくしてつくってあるため、妊活中いつでも打っていただいて問題ありませんし、避妊期間も必要ありません。
一方生ワクチンは、ウイルスの毒性を弱めて病原性をなくしたものであり、接種後一時的にウイルスに感染した状況をつくります。理論上胎児に感染する可能性が否定できないため、ママは接種後2か月の避妊期間が必要となります。特に風疹については、妊娠中にママが感染すると胎盤を通しておなかの赤ちゃんにも感染し、目や心臓などに障害をもって生まれてくるリスクが高くなりますので、妊活を始める前に抗体検査を受け、抗体を持っていない場合はワクチンを受けるようにしましょう。
パパのお薬について
妊活中の男性がお薬を内服することによって、精子への影響・精液を通しての女性への影響・副作用による精機能への影響、の3つが考えられます。
精子は約74日前後で作られるので、受精前3か月以内に使用した薬の影響が出る可能性はありますが、性交渉の前に風邪をひいて数日お薬を使用した場合など精子はお薬の影響は受ける可能性は低いです。
しかしながら、いくつかの種類のお薬の成分は精液中に微量に溶け出て、パートナーの女性に影響する場合があります。C型肝炎などごく一部のお薬が対象ですので、もし妊活中に対象の薬を内服している場合は避妊期間をしっかり守りましょう。
また一部のAGA治療薬や抗うつ薬など、薬の内服によって精子形成低下や性欲減退などが起こり、男性不妊症の原因になる場合もあります。
まとめ
妊活中、特に高温期は、あくまで妊娠している可能性がある状態であり、すべての薬の使用を制限した方がよいというわけではありません。
また、ここで示したお薬は全てではなく、ママの体調を治すことを優先すべき状況もありますから、まずは主治医の先生や専門家にしっかり確認したうえでお薬を使用してくださいね。
参考文献
Microsoft Word - H24.11.05修正反映 (pref.aichi.jp)
妊活中の服薬について|東京都の妊娠支援ポータルサイト|東京都妊活課 (tokyo.lg.jp)