女の子の中学受験!パフォーマンスを上げる生理との付き合い方

中学受験に挑戦する子どもの増加

 少子化が進む中、中学受験に挑戦する子どもたちが増えています。2023年の中学入試では、首都圏の受験者数は5万2600人(首都圏模試センター)と、これまでの最高水準に達しているとの報告もあります。子どもの夢を叶えるためや、少しでも子どもにあった環境を選ぶために、日々勉強に取り組む家庭が増えています。

 勉強だけではありませんが、試験は水物。当日のコンディション次第ではこれまでの努力が発揮しきれなく悔しい思いをすることもあります。子どものコンディションをどれだけ整えることができるのか、ということも保護者のサポートになります。

「当日もし生理が来ちゃったらどうしよう」

 中学受験に限らず、スポーツの試合や習い事の発表会、旅行など「大切な日」い生理が重なってしまうことは大変不安です。子ども本人だけでなく、サポートする保護者も心配しているのではないのでしょうか。

 「生理は定期的にくるもの」と思っている方も少なくないでしょう。生理はズレることがよくあります。毎月同じくらいの日に生理が来ていても、突然いつもと違う時期に出血がくることはよくあることなのです。

 また、どうしていつもと違う時期に出血が来ることがあるのかについて説明します。それは、「排卵があるかどうか」「ストレスや冷え」などさまざまな要因があり、定期的に必ず同じ日にちに生理を起こすことは生活習慣を整えるのみでは難しいことです。

 また、初経が来たばかりのお子様は、1年くらいは生理周期が安定せず、出血量にもばらつきがあります。つまり、本人にも保護者の方にも「いつ生理が来るのか」は正確には読めないのです。

PMSや月経痛などで本番以外の勉強にも影響

 生理にまつわる辛さは出血の煩わしさだけではありません。本番の生理だけではなく、日頃の勉強や練習にも影響します。ここで、生理にまつわる辛さにはどのような種類があるのかを説明します。

・月経痛

 生理前日から下腹部に鈍痛が起こります。これは、子宮内膜が剥がれ外に出る準備をしている痛みです。その後、子宮内の出血を体の外に押し出す時に子宮が絞られるように動き、痛みを感じます。

・出血

 10代のお子様は出血量が多く、月経初日に急に多くの出血が出てくることもあります。生理用品の準備をしておらず、生理の出血が洋服についてしまった、漏れてしまった、という経験がある方は少なくないのではないでしょうか。

また、塾や習い事の時間の中でなかなかトイレに行くことができない場合もあります。そうするとナプキンを装着していても、足りなかった。「もれていないかな」とそわそわしてしまい、授業や試験にに集中できないこともあります。

・貧血

 生理中は血の気が引いたような感覚になる、「貧血」になりやすいです。また指先や足先が冷えやすく、冷えが余計に症状を悪化させてしまうこともあります。フラフラする、きもちわるい、顔色唇の色が青白い時には貧血のサインです。その原因が月経中であることもあります。

・吐き気

 月経中に吐き気がある場合があります。嘔吐に至る場合もあれば、なんだか気持ち悪い、えづいてしまう、胃酸が上がってくる、などの消化器症状が出る場合があります。

・頭痛

 月経前や月経中に頭痛を訴える場合もあります。天候によってさらに悪化することもあります。頭痛については子ども用の痛み止めなどで対応できる場合もあれば、そうでない場合もあります。偏頭痛の場合はロキソニンやカロナールなどの効果が得られず、偏頭痛薬が必要になります。

・腹痛

 生理中に、下痢になりやすい、また生理前には便秘になりやすくなります。生理前には水分を多く身体に溜め込むため便秘になりやすく、身体も浮腫みます。また、生理中はホルモンの影響でお腹が緩くなりやすいです。

・PMS

 PMS(月経前症候群)とは月経前に身体と心に出る、嫌な症状の総称です。PMSを感じたことのある人は実に9割以上にも及び、その種類は200種類以上あると言われています。これがPMSとはっきりわかるものや、そうでないものもあります。特徴的なのは、「イライラする」「なんだか涙が出る」「たくさん食べたくなる」「人に会いたくない」「人恋しい」などの心の症状です。お子さんの様子にあれ?と何か感じられたとき、もしかしたPMSかもしれません。PMSかどうかについてはその症状が生理の周期に関連して起きているのか、とりわけ生理前の1週間に起きているのかを確認してください。

・その他

そのほかにも生理には人それぞれ症状がでます。皮膚が痒くなる、寒気がする、微熱が出るなどの個性豊かな症状が訪れます。目の前のお子様の生理にまつわる症状を保護者の方が理解してあげることが、生理中のパフォーマンス向上への一歩となります。

Calendar page in planning concept

生理をコントロールする

 では生理とどう付き合うか。ここではピルのお話をします。

ピルと聞くと、避妊のイメージあるかと思いますが、それはピルの作用としての一つの効果であり、「ピル=避妊」ではありません。

 ピルの中にはホルモンが含まれています。そのホルモンによって、生理を止めたり、移動させたり、生理にまつわる嫌な症状を軽減することが効果として起こります。

 ピルには、超低用量、低用量ピル、中用量ピル、といったようにホルモンの含有量別に種類があります。

 一般的に、処方があるのは「低用量ピル」と「中用量ピル」です。低用量ピルの方がホルモンの量が少なく、中用量ピルの方がホルモンの量が多いです。そのため、副作用も中容量ピルの方が出現しやすくなります。

ピルの副作用

ピルにはいくつかの副作用があります。これらを理解した上で内服するかどうかを決めましょう。また副作用がどのくらいでるか、でないかなどは個人差が大きくあります。ピルの中のホルモンの量が多ければ多いほど副作用も強く出やすくなります。

・便秘 下痢 嘔吐

消化器症状が出ます。特に吐き気を感じる方が多くいます。ピルを数日内服していると、吐き気が収まることが多いです。

・血栓症

水分をこまめにしっかりとりましょう。また身体の痺れなどを感じた場合には早めに受診しましょう

・胸の張り

乳房や乳首が膨らんでいるような感覚があることがあります。

・不正出血

ピル開始直後は不正出血があることがあります。「せっかくピルを始めたのにどうして?」と思うかもしれませんが、ピルに含まれるホルモンが身体に馴染んでくるまでに少し時間がかかる場合があります。

大事な日と生理があたらないようにする

 試験本番に生理が当たらないようにしたいと言うことですと、低用量ピル、中容量ピルの両方の選択肢があります。

中容量で月経移動することも可能ですが、副作用が出現する可能性などを考えると、低用量で月経移動した方がリスクが少ないように思います。

その場合は実際に月経移動したい日の2ヶ月前くらいに受診を一度しておくと安心です。1ヶ月以内の月経移動の場合は中容量ピルとなります。

本番以外の勉強のときの影響も減らす

 単に、試験の当日の月経移動ではなく、日々の勉強中も生理の前後はパフォーマンスが落ちてしまうというお子さんも少なくないかと思います。

その場合、低用量ピルを内服することで、パフォーマンスの向上につながることが期待できます。この場合は

毎月出血を起こす

 低用量ピルを1シート内服します。1ヶ月のうちに1週間だけ内服をしない日をもうけたり、ホルモンの入っていないダミーの薬を内服することで出血を起こします。通常の生理とは異なり、排卵がなく、生理痛やPMS症状も軽くなります。出血量も少なくなります。

出血を起こさない

 低用量ピルを毎日1粒内服します。内服を継続している限り出血は起きません。

安全にピルを内服するための工夫

・採血をして、血が固まりにくくないかを確認する

 ピル開始前や、ピル内服開始1ヶ月後に採血をして影響がないかを確認しても良いと思います。

・異変を感じた時はすぐに受診をする

 手足に痺れがある、息切れがある、突然目が醜い、不正出血が続いている、などの時にはすぐに受診をして、主治医の診察を受けましょう。また、副作用が強い時も医師に相談しましょう。

水分をしっかりとる

 血栓予防として、水分をこまめにしっかりとるように心がけましょう。

ピルを内服していることがわかるようにする

 ピルの処方があると、小さなピルの効能が書いてある名刺サイズのカードがもらえる場合があります。財布などにいれ、万が一の時には、お子さんがピルを内服していることが第三者にわかるようにしておきましょう。他の診療科にかかる時に、ピルを内服していることを伝えましょう。

・子宮の発育不全やその他疾患の可能性

 超音波検査を受けましょう。経膣超音波だけでなく、経腹超音波で子宮や卵巣を確認することができます。お子様の婦人科受診が心配な保護者の方は多くいらっしゃると思います。お腹の上からエコーを当てることで検査が可能ですのでご安心ください。

・ピルがなくならないように

 ピルがなくなってしまわないように、残量がある状態で必ず受診しましょう。多くの病院は3ヶ月分まで処方が可能ですが、それ以上は難しい場合が多くあります。逆に考えると、3ヶ月に1回は受診が必要となります。

ピルの費用

 保険適用となるか、自由診療となるかで異なります。

少し専門的な話になりますが、「月経困難症」であれば保険適用となり、自己都合の月経移動などは自由診療となります。

例えば、生理の出血が多すぎて、起き上がれない、など医師が月経困難症であると診断した場合は保険適用となります。

保険適用にてピルの処方が希望の場合は、まず受診したい医療機関が保険診療をしているか、保険診療でピルを処方しているかを確認しておくと良いと思います。

自由診療の場合には1シート1ヶ月分3000円程度が相場となります。

ピル以外の対処法

 月経との付き合い方にはピルだけではなく、さまざまなものがあります。10代のお子様が試験や勉強中において役立つものを紹介いたします。

・大きいナプキン

パンツ型の履くタイプのナプキンがあります。量が心配な場合はパンツ型のナプキンの上に夜用を重ねるなどが併用することをお勧めします。タンポン、月経カップはあまりお勧めしません。

・ホッカイロ

 腰に横向きに貼ってください。あまりに辛い時は、おへその下あたりにも貼ると良いでしょう。低温やけどを避けるため、衣類の上から貼りましょう。

・冷やさない

 短いズボンやスカートではなく、お腹やお尻が覆われる衣類を選びましょう。温めることで生理の辛さが和らぎます。膝まで隠れる衣類で下半身を冷やさないようにしましょう。

リラックスする

 ストレスは身体を硬直させ、生理痛を強く感じやすくします。お風呂であったまりながらリラックスする、好きな入浴剤を入れる、など今の生活習慣の中で取り入れられるリラックスを心がけましょう。生理の出血が出ている時も入浴は可能です。

・休息をとる

 体調がすぐれない時に無理をしてしまうとパフォーマンスが出ないだけでなく、回復が遅くなる可能性があります。しっかり休息をとることも、パフォーマンス向上につながります。

さいごに

今回は女の子の中学受験をテーマにコラムにまとめました。

今回のコラムは中学受験やピルを推奨するものではありません。あくまで、がんばる女の子の選択肢として、このコラムが少しでもお役に立てましたら幸いです。

子どもの頃の選択肢は保護者の意向が反映されやすいです。まずは保護者が正しい知識を得て、お子様の様子を見ながら一緒に考えていけると良いと思います。

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