何種類もある!?インフルエンザの治療薬

2020年以降新型コロナウイルス感染症が流行しマスクの着用や手指消毒などの感染対策が行われたことで、インフルエンザの感染も抑えられました。そのため多くの人がインフルエンザに対する免疫を持っておらず、今年の夏はインフルエンザが季節外れの感染拡大となっています。

この冬のインフルエンザは感染規模が大きくなる予想もなされており、引き続き注意が必要です。

妊娠中にインフルエンザに感染するリスク

妊娠中は胎児を異物として攻撃しないよう、母体の免疫が低下しているため、インフルエンザをはじめとする感染症にかかりやすいとされています。加えて、つわりで十分にお食事がとれない、大きくなる子宮に圧迫されて心肺機能が低下するなどの条件も重なり、非妊娠時よりも抵抗力が低下し、インフルエンザにも感染しやすくなるのです。

妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化しやすいことが分かっています。基本的にインフルエンザウイルス自体が胎盤を通過して胎児に影響することは非常にまれだと考えられていますが、流産率や死産率が上昇した報告はあります。自宅の常備薬で療養すれば大丈夫と思わずに、なるべく早めに医師に相談しましょう。

インフルエンザ治療薬と妊娠中・授乳中の使用について

ここでは一般的なインフルエンザに対する抗ウイルス薬の特徴と妊娠中(妊活中)・授乳中の使用についてそれぞれ説明していきます。

タミフル(オセルタミビル)

全世界で使用され、最もエビデンスのある薬剤です。一時期異常行動が話題になったこともありましたが、現在は薬によるものではなくインフルエンザそのものによるものであることがすでに分かっています。内服薬で、カプセル剤か粉薬の2種類の剤形があります。
妊婦〇、授乳婦△(微量に移行するが1歳未満への投与量に満たないため安全性は高いと考えられる)

リレンザ(ザナミビル)

吸入薬で、乳糖が含まれているため牛乳アレルギーの人は使用できません。
妊婦〇、授乳婦△(局所で作用するがラットで母乳への移行が報告されている。メーカーは授乳を避けることを推奨しているが、産婦人科学会は通常の使用範囲であれば危険はないと結論付けている。)

イナビル(ラニナミビル)

リレンザ同様吸入薬ですが1度の吸入で効果があります。こちらも乳糖が含まれているため牛乳アレルギーの人は使用できません。
妊婦〇、授乳婦×(局所で作用するがラットで母乳への移行が報告されている。メーカーは授乳を避けることを推奨しているが、産婦人科学会は通常の使用範囲であれば危険はないと結論付けている。)

ゾフルーザ(パロキサビル)

2018年に販売された治療薬で、1回内服するとインフルエンザウイルスが体内から比較的早く排泄されるというお薬です。
妊婦△(データ少ない)、授乳婦△(7日間の授乳中止が必要)

これらの抗ウイルス薬は妊娠中の使用による胎児への影響は現在のところ報告されていないため、もし処方されたら重症化しないためにもしっかり内服するようにしましょう。

また妊娠中に感染した場合は抗インフルエンザ薬の予防投与が有効であることが分かっており、家族や同僚など近しい人がインフルエンザに感染した場合は、基本自費診療になりますが抗ウイルス薬が服用できる場合があります。

インフルエンザワクチンの接種について

妊娠中のインフルエンザ感染は重症化のリスクが高いため、インフルエンザワクチンの積極的な接種が勧められています(義務ではありません)。ワクチンを接種しても発症を完全に防ぐことができるわけではないため、人ごみに行かない、手指消毒をするなど、基本的な感染対策を行うことが大切です。

またインフルエンザワクチンの効果は接種してから約2週間後から表れ、5か月程度続くと考えられています。妊娠中にインフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザワクチン接種対象ではない生後6か月未満の乳児のインフルエンザ罹患率を低下させるという報告もあり、母体と胎児の両方を守るという意味でもワクチン接種にメリットがあるといえます。授乳中のワクチン接種については支障はありませんが、母乳を介して乳児に予防効果を期待することはできません。

インフルエンザワクチンは病原体を無毒化した「不活化ワクチン」であり、胎児に影響を及ぼすことはないとされています。したがって医師の判断で妊娠中のすべての時期で接種が可能です。

ワクチンの中に防腐剤として少量の水銀を含んでいることを不安に思う方もいるかもしれませんが、その濃度は極少量であり、胎児への影響はないとされ、自閉症との関連も否定されました。

またインフルエンザワクチンの製造過程でわずかながら卵由来の成分が残存しますが、金根は高純度に精製されているため、卵アレルギーであっても全身症状もしくはアナフィラキシーショックを起こしたことがなければ接種可能です。

2023年9月から2024年3月末までは初回接種を終えた生後6か月以上の全ての人が新型コロナウイルス感染症の「XBB.1系統」対応ワクチンの接種対象となっていますが、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルス感染症ワクチンの同時接種は可能なため、希望がある人は接種予定施設に問い合わせてみてください。

インフルエンザ感染時の授乳の注意点

一般的に、インフルエンザウイルスは母乳を介しての感染はしないことが分かっています。しかしながら授乳時に母体の手や洋服についたウイルスによる接触感染や、咳やくしゃみによる飛沫感染は十分に考えられるため、感染中の授乳については十分な注意が必要です。

厚生労働省はインフルエンザ感染中の授乳の条件として、

  1. 抗ウイルス薬を2日以上服用している
  2. 解熱している
  3. 咳や鼻水がほとんどない

といった状態をあげています。これらをクリアしていれば乳児への感染リスクは限りなく低いことが予測されますので、ぜひ参考にしてみてください。また、もし上記の条件は満たしていないが母乳を継続したいという場合は、搾乳した母乳を症状のない家族から乳児に与えるという方法をとることもできます。

まとめ

通常であれば冬に流行するはずのインフルエンザが夏に流行するような異常事態が続いており、この感染拡大がいつまで続くのか予測が難しい状況が続いています。

万が一妊娠中のインフルエンザ感染が疑われる場合、かかりつけの産婦人科を受診すると、ほかの妊婦さんに感染を広げかねません。妊娠していること、インフルエンザの疑いがあることを電話で伝え、かかりつけの内科を受診するようにしましょう。

今回のコラムでは妊娠中・授乳中に使用可能なお薬があることをお伝えしましたが、感染しないに越したことはありません。しっかり感染対策をして、ご自身と大切なお子さんのことを守ってくださいね。

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