節分は、日本の伝統行事として多くの家庭で親しまれています。豆まきを通して季節の変わり目を感じ、家族で行事を楽しむ大切な機会である一方で、医療現場では毎年この時期になると、節分に関連した子どもの窒息・誤嚥事故への注意喚起が繰り返し行われています。特に、炒り豆による事故は命に関わる重大なものもあり、節分を安全に楽しむために知っておきたい豆の注意点をお伝えします。
節分の豆による子どもの窒息事故の現状
子どもの窒息事故は、日常の中の身近な食品でも起こります。節分の豆もその一つです。食品を誤嚥して窒息したことによる死亡事故は、5歳以下の子どもに集中しています。これは、乳幼児期の子どもが持つ身体的特徴と深く関係しています。具体的には、奥歯が生えそろっていないこと、噛む力や飲み込む機能が未発達であること、気道が細いことなどが挙げられます。そのため、大人にとっては問題なく食べられる食品でも、子どもにとっては重大な危険因子となる場合があります。
節分で使われる炒り豆は、硬い・小さい・丸いという、窒息・誤嚥事故のリスクが高い条件をすべて満たしています。噛み砕く力が十分でない子どもが口にすると、豆がそのまま喉の奥に入り込み、気道を塞いでしまうおそれがあります。また、豆は表面が滑らかであるため、喉の入り口にぴったりとはまり込み、非常に除去が困難になるケースもあります。

図参照 14歳以下の子どもの窒息・誤嚥事故原因
(消費者庁公表資料、平成26年~令和元年までの6年間分の人口動態調査の情報に基づく分析)
また窒息のみならず、小さな破片が気道に入ったまま放置していると、気管支炎や肺炎を起こす危険があります。気道に入った豆やナッツ類を、病院で気管支鏡(内視鏡の一種)を使って異物除去をした例もあります。
消費者省が発表している豆やナッツ類による事故事例は以下の通りです。
【事例1】
節分の残りの煎り大豆を食べた後からぜいぜいし始め、夜も眠れなかったため、翌日、救急車で来院。全身麻酔の上、気管支鏡検査、気道異物除去を行った。気管支に大豆の破片が3個あったため摘出した。5日間入院。
【事例2】
夕食中、親が与えた枝豆を2~3粒飲み込んでしまった。食べながら、むせてせき込み、窒息しかけていたために、親が慌てて背中をたたいて、枝豆1粒半を吐き出した。その後もぜいぜいし続けて、翌朝になっても治まらず来院し、気道異物の疑いで、全身麻酔の上、異物(枝豆1/2個)を除去。異物除去後、回復まで1か月以上入院した。
このような事例は決して特別な状況ではなく、どのご家庭でも起こりうる出来事です。医療現場では、同様のケースが毎年のように報告されています。
節分行事で注意が必要な場面
節分の事故は、豆を食べる場面だけで起こるわけではありません。豆まき中に床に落ちた豆を、子どもが拾って口に入れてしまうケースも多く報告されています。特に、はいはい期や歩き始めの子どもは、目についたものを反射的に口に入れてしまうため、保護者が想像する以上にリスクが高い状態です。
また、兄弟姉妹がいる家庭では、上の子が食べこぼした豆や、遊び半分で落とした豆を下の子が口に入れてしまうという事故も少なくありません。豆まきが終わった後は、速やかに掃除を行い、豆が床や家具の隙間に残らないよう徹底することが重要です。
事故を防ぐための具体的な予防策
窒息・誤嚥事故を予防するためには、以下のポイントを日常生活で意識することが重要です。
5歳以下の子どもには豆を食べさせない
少しなら大丈夫、見ていれば平気といった判断が、取り返しのつかない事故につながる可能性があります。消費者庁をはじめとする専門家・公的機関は、硬い豆やナッツ類は窒息・誤嚥の原因になりやすいため、5歳以下の子どもには与えないように注意喚起しています。
節分やイベント時の配慮
豆まきを行う場合は、炒り豆の代わりに、誤嚥の危険がない代替品を活用することも有効です。例えば、個包装された豆を投げる、新聞紙を丸めたものや柔らかいボール、折り紙などを使うことで、行事の雰囲気を保ちながら安全性を高めることができます。いずれも子どもが拾って口に入れてしまわないように後片付けまで徹底することが重要です。
食事中の注意喚起・見守りを徹底する
豆を食べる年齢の子どもであっても、必ず座った姿勢で、落ち着いた環境で食べるようにしましょう。歩き回りながら食べる、笑いながら食べる、遊びと食事が混在する状況は、誤嚥のリスクを高めます。子どもが口の中に物を入れているときは、目を離さないことが大切です。また、おしゃべりをしている最中や笑っているとき、泣いているときなどは誤嚥のリスクが上がるため、食べ物を口に入れたままでの行動には注意が必要です。
周囲の大人全員での共通理解が重要
節分は、祖父母や親戚が集まる機会でもあります。その中で昔は普通に食べていた、自分の子どもは大丈夫だったといった経験談が優先されてしまうことも少なくありません。しかし、医療の現場ではそうした油断が事故につながるケースを数多く見てきました。大切なのは、最新の医学的知見と公的機関の注意喚起を共通認識として持つことです。事前に5歳以下の子どもには豆を食べさせない、床に落ちた豆はすぐに片づけるといったルールを家族全員で共有することが、事故防止につながります。
事故が起きてしまったときの対応
突然声が出なくなった、首をおさえ苦しそうにしている、唇が紫色になったなどの場合は窒息を疑います。万が一、子どもが窒息したり誤嚥してしまった場合に備えて、保護者自身が基本的な救命処置を学んでおくことは大切です。
1歳未満の乳児には背部叩打法と胸部突き上げ法、1 歳以上の子どもには背部叩打法と腹部突き上げ法を、それぞれ5回ずつ1サイクルとして繰り返します。
窒息が解除されず子どもの反応がなくなった場合(刺激に全く反応がなく、呼吸もしていない)は、直ちに心肺蘇生を開始してください。周りの人に応援を頼むことも忘れず、救急隊が到着するまで処置を続けます。


図参照 公益社団法人 日本小児科学会 子どもの救急(ONLINE QQ)
おわりに
節分は、子どもにとって日本の行事を学ぶ大切な機会でもあります。
一方で、節分の豆は身近な食品でありながら、子どもにとっては窒息の危険があることも忘れてはいけません。少しの工夫と周囲の見守りがあれば、こうした事故は防ぐことができます。
事故を未然に防ぐための情報共有や家庭内での工夫は、子どもたちの安全と健やかな成長を支える大切な取り組みといえるでしょう。年齢や成長発達に合わせた正しい知識と、ほんの少しの配慮が、子どもたちの命と笑顔を守る大きな力になります。
参考文献
・消費者庁Vol.617 節分は窒息・誤嚥に注意! 硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで!
・消費者庁公表資料、平成26年~令和元年までの6年間分の人口動態調査の情報に基づく分析 14歳以下の子どもの窒息・誤嚥事故原因
・公益財団法人日本小児科学会 食品による窒息 子どもを守るためにできること
・公益社団法人 日本小児科学会 子どもの救急(ONLINE QQ)








