アフターピル(緊急避妊薬)とは

避妊方法と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?

日本で一番メジャーな避妊方法はコンドームといわれています。コンドームは正しく使用すれば98%の避妊率ですが、破損や着脱時のミスで避妊率が低下することが分かっています。また普段から避妊のために低用量ピルを服用している人もいるかもしれませんが、こちらも内服し忘れてしまうと避妊効果が低下してしまいます。

もし避妊に失敗してしまった緊急時はどうしたらいいのか、今回はアフターピルについて説明します。

アフターピルってなに?

アフターピルとは、避妊をしなかった、もしくは避妊に失敗した場合に緊急的に利用される薬のことで、月経困難症を軽減したり妊娠を予防するために内服する低用量ピルとは内服の目的が異なります。

薬の主成分は「黄体ホルモン」という女性ホルモンで、主に排卵を抑え遅らせることで受精を起こらなくすることで妊娠の成立を防ぎます。

もしすでに排卵が起こっていた場合でも、アフターピルには受精卵の着床を防ぎ子宮内膜を剥離させる作用があるため、排卵後でも避妊効果はあるといわれています。

しかしながら避妊率や妊娠阻止率は性行為後の時間経過とともに低下するため、可能な限り早期の服用が有効です。

アフターピルの種類とその特徴

アフターピルやその方法にはいくつか種類があります。

※避妊率とは生理周期に関係なく内服した時の妊娠しなかった割合、妊娠阻止率とは、生理周期から妊娠の可能性がある時期に内服した時の妊娠しなかった割合を指します。

ヤッペ法

従来の緊急避妊に使用されていた方法です。

卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤であり、月経異常やホルモンバランスを整える治療薬である「プラノバール錠」を性交後72時間以内に2錠内服し、さらに12時間後に2錠内服するという方法です。

しかし副作用として吐き気が約50%、嘔吐約18%と高頻度にみられます。ヤッペ法は性交後24時間以内に内服すると避妊率は約80%と効果も悪くありませんが、内服が性交後48時間を超えると、避妊率は約30%に大きく下がることが特徴です。妊娠阻止率は約57%です。

1回約5000円程度と比較的安価でありますが、避妊効果や副作用の面から現在ヤッペ法は推奨されていません。

レボノルゲストレル法

現在日本で一番メジャーな避妊方法で、性交後72時間以内に「ノルレボ錠1.5mg(ジェネリック名:レボノルゲストレル錠)」という黄体ホルモン単剤を1錠内服します。レボノルゲストレル法は服用者の3.6%に悪心がみられる程度と副作用の発現率が低く、避妊率も性交後72時間以内の服用で約98%、妊娠阻止率は約85%と高いことがメリットですが、デメリットとしては高度肥満(BMI30以上)や一部の薬を内服している方は効果が減弱する可能性があるということが分かっています。

また、1回あたり10000円〜20000円(ジェネリックだと9000円程度)と値段もやや高価です。

エラワン錠(ジェネリック名:エラ錠)

まだ日本では一般的ではありませんが、その避妊率の高さからアメリカやヨーロッパではすでに承認され一般的なドラッグストアでは販売を開始しています。子宮筋腫や月経過多の治療に使用される選択的プロゲステロン受容体調節薬の「ウリプリスタール酢酸エステル」という薬を性交後120時間以内に1錠内服すれば避妊効果があるというように時間の制約にゆとりがあることや、BMI30以上の方でも内服できることが大きなメリットです。120時間以内に服用すれば避妊率は約95%と高い避妊効果が見込めます。

日本では未承認ですが、国内ですでに取り扱っているオンラインクリニックなどもあり、1回あたり20000円程度です。

アフターピル服用後の身体の変化

アフターピルの服用後副作用で吐き気が生じる可能性があります。服用後2時間以内に薬を吐き出してしまった場合は避妊効果が得られない場合があるので医師に連絡してください。

またアフターピルで避妊が成功した場合、服用約3日~21日程度でほとんどの女性に「消退出血」と呼ばれる生理様出血がみられます。これはアフターピルを服用したことで排卵が抑制されて妊娠が成立せずに生理が来たことを示します。万が一消退出血がなかった場合や通常の生理より軽いような場合は、生理予定日から1週間後を目安に妊娠検査薬の使用や医療機関の受診を推奨します。

アフターピルはその周期の残りの期間の避妊について保証するものではないため、もし避妊に成功して消退出血がみられた場合でも次の生理予定日まで性交渉を避けることが望ましいですが、どうしても性交が避けられない場合は翌日から経口避妊薬を服用するなどできるだけ確実性の高い避妊方法を実施することが大切です。

アフターピルの入手方法

アフターピルはドラッグストアなどで風邪薬やサプリメントのように手軽に購入できる薬ではありません。

一般的な入手方法として、病院・オンラインクリニック・個人輸入の3パターンがあります。

病院で処方してもらう場合

医師の対面診察を受け処方箋をもらい、薬局で薬を受け取ります。直接医師の診察を受けられるという安心感がある一方で、長期休暇中や病院が遠方の場合は診察が困難な可能性があります。またそもそも診察に対する心理的ハードルが高いという可能性も考えられます。

オンラインクリニックで処方してもらう場合

基本的にはスマートフォンやタブレットなどで医師のオンライン診療を受け、情報提供先の薬局の薬剤師の目の前で確実に薬を服用します。しかし前述したように心理的ハードルから受診をためらい、妊娠のリスクがあるにもかかわらずアフターピルの処方を受けられず望まない妊娠につながってしまうケースが考えられることから、医師が対面診察困難であると判断した場合に限り、2019年6月からアフターピルのオンライン処方が可能となりました。

個人輸入する場合

誰でもインターネットで手軽に安価に購入できます。しかしながら品質が保証されていないため避妊に効果がある成分が含まれていない可能性があることや、万が一服用後体に気になることが起こってもアフターフォローを受けられない可能性があります。

アフターピルについての国内での動向

アフターピルをより手軽に購入できるように「処方箋なし」で販売する動きが2017年から始まっています。

国内では2020年に閣議決定された男女共同参画社会基本計画に「避妊をしなかった、又は、避妊手段が適切かつ十分でなかった結果、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性の求めに応じて、緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する」という文言が明記され、2021年から厚労省の専門家が議論を再開しています。

そして2023年夏~2024年3月末まで、研修を受けた薬剤師がいることやプライバシー確保の個室があることなど一定の要件を満たした薬局で「処方箋なし」でのレボノルゲストレル錠の販売を試験的に行うこととしています。

この動きによって、緊急時のアフターピルへのアクセスが改善されることが期待できます。

まとめ

人はだれしも性に関する判断や意思決定をする権利をもっています。

それは全ての女性は意図しない妊娠に対し、アフターピルを服用する権利があることを意味します。

アフターピルを内服したからといって体に後遺症が残ることや、不妊につながるという可能性は限りなく低いこともわかっているため、避妊率を高めるためにも、緊急時には自分に合った方法でアフターピルを入手しなるべく早く内服しましょう。

もしアフターピルの服用について不安がある場合はお近くの産婦人科医やファミワンの専門家にお気軽にご相談くださいませ。

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