新型コロナウイルス感染症の“5類”移行後から見えてくる男性の妊活への影響 ~前編~

こんにちは、胚培養士の川口です。

3年以上も続いた新型コロナウイルス感染症の感染拡大がやや落ち着きを見せ始め、これまでは、新型インフルエンザ等感染症と同等の2類感染症に相当するとされてきた新型コロナウイルス感染症ですが、2023年5月8日から5類感染症へと移行しました。

参考:厚生労働省 厚生科学審議会感染症部

日本国内だけでも、現在までに累計3,300万人を超える方々が新型コロナウイルス感染症に罹患したと報告されており、これを読んでいる方の中にも実際に感染したという方がいらっしゃると思います。

感染拡大当時は、ヨーロッパ生殖医学会ならびにアメリカ生殖医学会から、一時的に不妊治療を中止する勧告が出されるなど、生殖医療の業界でも大きな混乱を引き起こしましたが、時間が経過するにつれて、実際に新型コロナウイルス感染症が、妊活にどのような影響を及ぼしていたのか?あるいは、及ぼすのか?が、少しずつ明らかになってきています。

今回、新型コロナウイルス感染症が精子に与える影響について、昨年、ヨーロッパの生殖医療専門学術誌Human Reproductionに掲載された研究論文をご紹介します。

新型コロナウィルスが妊活に与える影響

この研究では、新型コロナウイルス感染症に罹患した後、PCR検査等によって陰性が確認された30代から50代までの約40人の男性を対象として、➀一般的な精液検査、➁精液を用いたPCR検査、を実施しました。

その結果、被験者全体の約25%において、精子濃度が200万/ml以下の高度な乏精子症が認められたと報告しています。同時に、精液を用いたPCR検査では被験者の1名に陽性反応があったとしています。

一般的に、無精子症を含めた高度な乏精子症の割合は、男性100人に対して3~5人と言われているため(近年、日本ではやや増加傾向にあるようですが‥‥)、新型コロナウイルス感染症に罹患すると、高度な乏精子症が認められる割合が顕著に増加することがわかります。

また、この研究において高度な乏精子症が認められた男性のうちのほぼ全員が、新型コロナウイルスに感染する前にそれぞれパートナーと自然妊娠によって子どもを授かっていることから、新型コロナウイルスの感染が、高度な乏精子症を引き起こす要因になったのではないかと結論付けています。

この論文の中では、もともとの造精機能が正常の方であれば、新型コロナウイルスに感染してしまっても、時間の経過とともに身体の状態も精子を造る機能も回復してくる可能性についても言及されていました。

しかしながら、少なくとも感染後しばらくは精子の状態に悪い影響があることは確かなようです。

5類感染症へと移行したことで、飲食店などには活気が戻り、マスクを着用していない方々も散見されます。そういう光景を見ると、余計に「もう心配しなくてもいいんだ!」と思ってしまいがちです。

しかしながら、妊活においては引き続き、ソーシャルディスタンス(3密の回避)、手洗い、マスクなどの感染対策が必要となりそうです。(後編へ続く)

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