女性の健康を守るための月経ガイド!昔と今で何が変わったのか?

みなさんは、月経(生理)についてどのように感じていますか?
 「当然あるもの」、「妊娠のために必要なこと」と捉える方もいれば、「ブルーデー」、「煩わしい」、「ない方が楽でいい」と否定的に捉える方もいらっしゃるでしょう。
今回は、昔と現代で月経事情がどのように変わっているのか、月経からわかることをお伝えし、皆さんにとって月経がどのような意味を持ち、役立てられるのかを考えるきっかけになればと思います。

女性が生涯で経験する月経回数

初経の平均年齢が12歳ごろ、閉経の平均年齢は50歳前後と現代の女性は約40年近く月経を経験します。
日本では女性の社会進出が進み、進学したり、キャリアを築くようになり、結婚や妊娠・出産の年齢が上がりました。その結果、少子化が進み、1人の女性が一生の間に生む子どもの数を推計した指標である合計特殊出生率が1.20(2023年)である現代では、月経がない妊娠・出産・授乳期間が昔よりもかなり短いといえます。
早婚・多産であった昭和初期の女性は、生涯で経験した月経回数は50回程度と推定されます。それに対して、現代において2度の出産を経験した女性が生涯で経験する月経回数は約460回と推察されるため、昭和初期と比べ約9~10倍に増加したと考えられます。

現代の女性への影響

月経回数が増えると、それだけ月経に伴う諸症状に悩まされる頻度は多くなります。月経が日常生活の中でどの程度支障をきたすかは個人差がありますが、腹痛・頭痛・胸やお腹のはり・むくみ・体重増加などの身体症状や、抑うつ・イライラ・不安などの情緒的症状を含む月経随伴症状に悩む女性は50~70%程度とされています。また、月経回数が増えることで、月経随伴症状以外にも、月経と関係する子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣疾患に罹患する可能性も高くなります。近年、婦人科疾患を抱える女性が増えているのは、月経回数の増加も影響しているといわれています。

「女性だから生理がくることや、それに伴う症状はしかたない」、「みんなも我慢していることだから」など、つらい症状があっても我慢していたり、産婦人科で相談することを躊躇している方は少なくありません。しかし、「これぐらいはふつうじゃないかな」と思っている症状でも、何らかの病気が潜んでいる可能性もありますので、一般的な月経について理解して、病院を受診した方が良いかどうかを検討してみてください。

一般的な月経とは

月経周期

月経がきた日を1日目として、次の月経がきた前日までの期間をカウントした日数を月経周期といいます。正常な月経周期は、25~38日とされており、個人での月経周期の変動は6日以内が基本的とされています。
24日以内にくる場合を頻発月経、39日以上こない場合を稀発月経といい、初経を迎えた頃はまだ成長途上のため、この月経周期も不安定になりがちですが、身体が成熟する中で月経周期が安定するようになります。
排卵があり、正常な月経周期の方の場合、排卵後~次の月経前日までの日数は14日間と推定され、ご自身の月経周期-14日で、ご自身の排卵日を推測することができるため、排卵日ごろの子宮頸管粘液(透明なおりもの)と合わせて、妊活の際に活用することができます。

月経持続期間(経血がある期間)

平均的な月経持続期間は3~7日間ですので、もし、月経が2日以内で終わり、月経があったかどうかもわからないほど短い場合は過短月経、逆に8日以上あるなら過長月経です。

経血量(出血量)

経血量は、20~140mlの範囲であれば正常とされます。一般的には1日目は少なく、2日目に多くなり、その後はまた減っていきます。
140ml以上だと過多月経、20ml以下だと過少月経です。経血を吸収したナプキンで自分の経血量を計ることは大変ですので、目安としては「ナプキンを1時間ごとに交換しなければならない」とか、経血量は3日目以降は減ることが多いですが「3日目以降も量が減らず多い」という場合は、過多月経の可能性があります。反対に出血はあるもののトイレットペーパーで拭いた際に少しつくだけ、とか、ナプキンに少しつく程度という状態が続く場合は、過少月経の可能性があります。

血塊(レバー状の塊)の有無

経血量とともに産婦人科で訊かれるのが血塊の有無です。経血は、子宮内膜の組織が含まれるものの、そのほとんどは体内にある間に酵素の力で溶かされるので、体外へ排出されるときには液状になっているのが一般的です。ただ、身体的な問題がない場合でも、1cm程度の小さな塊が数回でることは珍しくありません。しかし、血塊が大量に出たり、大きなものがでたり、何度も続いたりする場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患の可能性も考えられます。

経血の色は、赤色~暗めの赤色が一般的ですが、酸化することで茶色っぽく変色することがあります。前の周期で排出されなかった経血が子宮内で酸化した場合や、体外へ排出されるまでに時間がかかり、体内にとどまっていた時間が長かった場合など、一時的なものであれば問題ないことがほとんどですが、茶色の経血が大量に出たり、少量ではあるものの長引いたりする場合は、ホルモンバランスの乱れや婦人科疾患の可能性もあります。

月経はあなたの健康のバロメーター

月経周期や経血量などは個人差があるものなので、一般的から外れたからといって、すぐに病気とは言い切れません。また、月経中も量の変化はありますので、まずはご自身の「基本パターン」を把握しましょう!

女性の月経周期は、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの分泌バランスによって作られています。しかし、身体的・精神的ストレスなど様々な影響によって、これらのホルモンバランスが崩れ、月経周期が乱れたり、月経持続日数や量の変化をきたすことがあります。ご自身の状況を観察し、原因となっているストレスや生活習慣の乱れはないかなどを見直し、改善することで、正常に戻る場合もあります。しかし、中には一時的ではなく、婦人科疾患などが原因となっている可能性もあるので、月経をご自身の「健康のバロメーター」として活用し、不調を我慢せず、「あれ?」と思ったら婦人科を受診し、ご自身の状態に問題がないのか確認することをお勧めします。

こんな「あれ?」はありませんか?

  • 月経痛がひどく、普段通りの生活ができない
  • 以前より月経痛がひどくなった
  • 以前より量が増え、夜用ナプキンや、タンポンなどの吸収剤とナプキンの併用でも間に合わない
  • 大きな血塊や多量に血塊が出る
  • めまいや立ちくらみなど、貧血症状がある
  • 不正出血がある(月経以外の時期にも出血がある)
  • 月経周期の乱れが3周期ほど続いている
  • 下腹部にしこりや張り・つっぱりなどを感じる
  • 排便痛がある
  • 性交痛がある
  • 月経前や月経中に抑うつや落ち込み、イライラなど自分ではコントロールしがたい気分の変調がある

どのように月経と付き合っていくか

月経中は経血ケアのためにトイレの回数が増えたり、腹痛や頭痛などの月経随伴症状や集中力の低下など、その煩わしさから、ご自身にとって大切なイベントや仕事、旅行など、やりたいことと月経のタイミングを気にすることは、多くの女性が経験することではないでしょうか?
月経随伴症状や月経のタイミングについては、産婦人科で診察を受け、ご自身の状態を確認した上で、ご自身の状況に応じた対処や治療が提案されます。ホルモン剤によって、月経のタイミングを予定とずらすことができたり、排卵を抑えることで、月経随伴症状が緩和されたり、婦人科疾患の治療になることもあります。
月経を気にしてやりたいことを我慢したり、消極的になるのではなく、ご自身の月経を理解して、産婦人科での治療も含めた適切な対処によって、快適に過ごせるよう、月経をコントロールすることが現代では可能となりました。
また、生理休暇は労働基準法でも定められているものですが、女性の月経に伴う不調に対応する取り組みを先駆的に行っている職場もあります。厚生労働省でも「働く女性と生理休暇」(001150877.pdf (mhlw.go.jp) )の中で、「当事者のみならず、職場の全ての人に生理や生理休暇に対する理解が必要」と明言しており、このような職場の取り組みを活用することも1つの選択肢です。
最近では女性芸能人がSNS上で月経について語ったり、フェムテック製品の特集が組まれるなど、以前よりも月経についてオープンに語られ、共有されることが増えました。あなたはこれから月経とどのように付き合っていきますか?これをきっかけに考えてみてください。

【参考資料およびサイト】
働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
「働く女性と生理休暇」001150877.pdf (mhlw.go.jp)
正常な生理(月経)の目安を教えてください! – 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp)
生理リサーチ|NHKシチズンラボhttps://www.nhk.or.jp/citizenlab/seiri/index.html
バイエル薬品、一般女性を対象とした「子宮内膜症および月経マネジメントに関する意識・実態調査」結果を発表 | バイエル薬品株式会社のプレスリリース (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000034521.html)

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