妊娠したとわかったら、まずはお腹の赤ちゃんがすくすく元気に育つ栄養素をしっかり摂りたいですよね。でも、「妊娠中、何を食べればよいのだろう」とよくわからない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
また、妊娠中はつわりや便秘といった症状が起こりやすく、妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群という母子ともに命の危険を伴うリスクも挙げられます。からだに良いと思って食べていたものが「妊娠期は避けないといけなかった!」といったことを防ぐために、今回は妊娠期の食事のきほんから、つわりなどのつらい症状の対処法などをわかりやすくご説明していきたいと思います。
栄養の必要性って?
まず、妊娠期の栄養の必要性から見ていきましょう。
- 胎児の発育・・・赤ちゃんの発育を促す材料。
- 母体の子宮や乳腺の発達・・・赤ちゃんを育てるためのお母さん側の環境を作る。
- 血液の増加・・・赤ちゃんに充分な栄養と酸素を届けるため。
- 分娩・産褥のための体力維持・・・出産にはかなりの体力とエネルギーを消耗。
食生活のポイントは
質・・・何かに偏るのではなく様々な食材から栄養素をバランスよくとる。
量・・・赤ちゃんの分と合わせて今までより2倍食べることではありません。
薬・・・注意!継続して飲む必要があるお薬に関しては主治医にご相談を。
カフェイン・・・胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性が報告されているので控えるようにしましょう。
アルコール・・・禁酒! 胎児性アルコール症候群を引き起こす可能性があります。
タバコ・・・やめる! 受動喫煙もまた早産・低出生体重・胎児発育遅延といった赤ちゃんに悪影響を及ぼします。
意識して摂るべき栄養素
葉酸
・・・胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減。
妊娠1か月前から、妊娠3か月までの間にサプリメントから1日400μg摂ることが厚生労働省で推奨されています。妊娠初期は赤ちゃんの脳や脊椎が作られる期間で、このときに必要な葉酸が足りないと無脳症や二分脊椎といった奇形児の発症リスクを高めてしまうためです。サプリメントは食品からとるよりも効率的に葉酸を体の中に取り入れることができるため、必要量はサプリメントで摂り、また食品からもプラスして摂るように。
葉酸を多く含む食品例)ほうれんそう・こまつな・ブロッコリー・焼きのり・枝豆・いちご など
たんぱく質
・・・赤ちゃんのからだをつくる重要な主成分でもあるので、妊娠中期は+5g、後期は+25gのたんぱく質を摂取するよう心がけましょう。たんぱく質は肉や魚、卵に多く含まれています。しかし大量に摂取してしまうとエネルギー量が増えすぎてしまうため、副菜の中にプラスして取り入れると調整しやすいです。
野菜スープやサラダなどにレトルトの大豆をプラスしたり、おみそ汁にお豆腐や卵をプラスなど。
カルシウム
・・・赤ちゃんの骨を作ります。
1日に650mg摂る必要があるカルシウムは不足しがちな栄養素の為、意識して摂る必要があります。乳製品はカルシウムの吸収率が高いためおすすめです。また、ビタミンDと一緒に食べることで吸収率がアップします。
カルシウムを多く含む食品)牛乳・チーズ・ヨーグルト・さくらえび・高野豆腐・こまつな など
鉄分
・・・妊娠中期・後期になるとお腹の中の赤ちゃんがより大きく育つ時期なので、より栄養素の必要性が高まります。そのため酸素と栄養素を運ぶ血液量が増え、不足すると貧血になりやすくなります。また、赤ちゃんの栄養素が不足し未熟児や早産といった発育不良の原因となります。鉄分の吸収率を高めるビタミンCを多く含む食品とたんぱく質を一緒に摂ると吸収率がアップするのでおすすめです。
鉄分を多く含む食品)豚レバー・赤身肉・まぐろ・豆腐・小松菜 など
注意が必要な食品
ビタミンA
・・・厚生労働省では「妊娠3か月以内または妊娠を希望する女性」においては、ビタミンAの過剰摂取に注意するよう呼びかけています。これは過剰摂取による催奇形性(生まれ持っての先天的奇形児)を産むリスクがあることがあるためです。
ビタミンAの1日の推奨量→700㎍
上限量→2700㎍。
よくある例として、貧血対策にレバーやウナギを頻繁に摂るようにしている方は要注意です。例えば鶏レバーの焼き鳥(30g)を1本食べたとします。4200㎍の摂取となり1日の上限量をはるかに超えてしまいます。
ですがビタミンAは赤ちゃんの皮膚や粘膜を作るのに必要な栄養素です。
かぼちゃやにんじんに含まれるβカロテンは必要量だけビタミンAとして体の中に吸収されるためこれらの色の濃い野菜をしっかり食べましょう。
水銀
・・・お魚には良質なたんぱく質やDHA・EPAといった良質な脂質を摂取できるため妊娠中も食べてほしい食材ではありますが、食物連鎖の影響で大きなお魚には水銀含有量が多く含んでいるものも。水銀を過剰に摂取してしまうと、胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

リステリア食中毒
・・・妊娠中は免疫が低下し、食中毒のリスクが高まります。母体が重篤な症状になることはまれですが、胎児・新生児に感染による悪影響が出ることがあります。
注意が必要な食品→ナチュラルチーズ・生ハム・肉や魚のパテ・スモークサーモン。
妊娠期の体調に合わせた食事の工夫
つわりがつらい時
妊娠初期の胎児はまだまだ小さいので、お母さんの体に蓄えられている栄養で充分育ちます。食べられるときに食べられるものを食べるようにしてみてください。
- ●冷たいものや酸味のあるものが食べやすいです。(スナックパンなど匂いがせず手軽で食べやすいと言う声も)
- ●朝起きる前にゼリーなどを少し食べると楽になることも。
- ●水分はスポーツドリンクや経口補水液も活用で脱水を防ぎましょう。
便秘が気になる時
ホルモンバランスの影響で便秘になりやすくなります。また、朝に排便のスイッチが入りやすいため朝の決まった時間にトイレに行く習慣をつけることもおすすめです。
- ●食物繊維(野菜・果物・海藻・きのこ)を増やす
- ●水分をこまめにとる。
- ●ヨーグルトや発酵食品も役立つ。
- ●安定期に入ったらウォーキングなどの軽い運動で腸を動かしましょう。
体重が増えすぎてしまう時
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病リスクとなるため体重管理は重要です。
妊娠中の体重増加の目安
BMI<18.5(低体重) +9~12kg
18.5<BMI<25(普通) +7~12㎏
25<BMI(肥満) 個別対応
(日本肥満学会 2011より)
- ●食事はゆっくりよくかんで食べる
- ●3食決まった時間に食べる
- ●夜食や間食(菓子類)を控える。
- ●カロリーの多いものを食べ過ぎない(丼もの・ファーストフードなど)
- ●野菜やきのこ・海藻を積極的に食べることでエネルギー量を気にすることなく、満腹感を得やすくなります。
まとめ
妊娠期の食事で大切なのは、「毎日完璧にすること」ではなく、「無理なく続けられること」です。体調は日々変わりますし、食べられるものも変わります。
その中で、少しずつ栄養バランスを整えていくことが、お母さんと赤ちゃんの健康につながります。はじめてのからだの変化に戸惑うことも多くあると思いますが、“とつきとおか”という貴重な時間をゆったりとした気持ちで肩の力をそっと抜きながら過ごしていただければ幸いです。
参考文献:厚生労働省:「妊産婦のための食生活指針」の策定について:妊産婦のための食生活指針 ―「健やか親子21」推進検討会報告書―








