何歳くらいから妊娠しにくくなる?

みなさんは加齢と妊娠の関係って聞いたことがありますか?
高齢でも出産している人もいるし実際それほど影響ないんじゃないの?
男性は関係ないでしょ?といったお声もあるかと思います。
しかし、実際は加齢によって性別問わず妊孕性(妊娠する力)が低下していくことが色んなデータから分かっています。 今回は加齢と妊娠の関係と、その背景にある体の変化についてお伝えしていきますね。

女性の年齢と妊娠の関係

出典:日本産科婦人科学会ARTデータブック(2021年)を参考に作成

こちらは2023年に日本産科婦人科学会から発表された、2021年の体外受精に関するデータから体外受精における年齢別の妊娠率・流産率を表すグラフです。

横軸が女性の年齢、縦軸が割合を示しています。

まずは青い線のグラフで妊娠率を見てみましょう。
30歳くらいまではほぼ横ばいですが、30歳以降は緩やかに低下していきます。35歳から40歳で急激に低下し始め40歳からは更に急激に低下していきます。このように女性の年齢によって、特に35歳あたりから妊娠率は低下していくのです。

また、オレンジの線は流産率を示しています。
流産率も妊娠率と同様に30歳まではほぼ横ばい。その後徐々に上がり始め、35歳から40歳に向けて急激に上昇していきます。45歳を超えると、55%以上が流産ということになるのです。

つまり体外受精のような不妊治療を受けていたとしても、年齢が高くなるにつれ妊娠しづらくなるだけでなく、ようやく妊娠しても流産する確率も高くなってしまうのです。

女性の加齢によって妊娠率が低下する原因

どうして女性の加齢によって妊娠率が低下したり、流産率が増えるのでしょうか。
その原因については大きく分けて2つあると言われています。

加齢による卵子の数や質の低下

まず1つ目は、加齢による卵子の数や質の低下。

卵子のもととなる細胞(卵母細胞)は胎児のときに作られたきり、増加することはないということをご存じでしょうか?

卵母細胞が一番多いのは胎児の時期で約700万個持っていると言われています。その後急速に数が減少し、出生時には約200~100万個、排卵が起こり始める思春期頃には、30万個まで減少します。その後も20代で10万個、30代で2~3万個と減少していき、最終的には1000個程度まで少なくなり閉経します。

毎月の排卵1回につき約1000個の卵母細胞が消費され、その1000個の中で一番良い卵子が1つだけ選ばれて排卵に至る、という流れで卵子は発育しているので、補充されることなく減っていく一方です。

たくさんある卵母細胞の中でも卵子として成熟し、排卵に至るのは一生のうちで400~500個とも言われています。

こうした数字と年齢で見てみると、妊娠するチャンスはかなり限られていることが分かります。

また、卵子は精子と受精するために染色体の数が半分になるように分裂(減数分裂)して成熟します。卵子は卵母細胞として胎児期に作られた後、減数分裂の途中で卵子形成が止まっており、排卵の直前に減数分裂が再開して成熟した卵子になります。そのため排卵までの時間が長い(高齢になってから排卵する)と、減数分裂がうまく起こらず通常と異なった染色体の数を持った卵子ができてしまいます。

それらの卵子が受精すると染色体が3本あるトリソミーや1本しかないモノソミーと呼ばれるような染色体の数的異常が発生することがあります。モノソミーやトリソミーの受精卵の多くは妊娠に至りません。妊娠に至ったとしても、途中で発生が止まり、結果として流産となることが多いです。このように染色体の異常という理由から、不妊症や流産が増加します。

婦人科疾患など母体側に疾患を抱えている確率が多くなる

2つ目は婦人科疾患など母体側に疾患を抱えている確率が多くなること。

子宮筋腫や子宮内膜症、性感染症など婦人科疾患を抱えている人は年齢とともに多くなります。これらの婦人科疾患は排卵や着床を障害するため、不妊の原因になります。

何より厄介なのが、これらの疾患は適切な治療を受けていないと、時間とともに悪化していくことです。場合によっては不妊治療をするにあたって、手術が必要になることもあります。

また、35歳以上での妊娠は35歳以下と比べると、妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病といった妊娠中の合併症のリスクが高いことも指摘されています。そのような合併症が原因で早産になったり、お母さんと赤ちゃんを守るために緊急で帝王切開をしなければならなかったり、と妊娠や出産へ影響を与えることもあります。

男性の年齢は関係ある?

生涯を通して精子自体は作られているため、両方の精巣が無くならない限り妊孕性が全くない状態になることはありません。女性でみられる閉経のような変化が無いことや、個々の健康状態にも違いがあることから、男性では年齢で不妊症に区切りをつけることは難しいと言えます。

しかし、精子を作り出す能力(造精機能)や、まっすぐ泳ぐことができて形の良い精子の割合も低下するので、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療による受精率や妊娠率が低下する可能性があります。精子DNAの断片化の比率も加齢とともに上昇すると言われていて、受精能力に異常がなくても、受精した後の胚の発育や着床、妊娠に影響を与える可能性があることが複数の論文で報告されています。

女性の年齢や他の要因の影響を除いても、男性の加齢によって自然流産の確率が上昇するという報告もあります。また、45歳以上の男性では25歳未満と比較して自然流産の確率が約2倍になるとするものや、自然流産に与える影響は男性の40歳以上は女性の30歳以上に相当するとの報告もあります。

また、勃起不全や射精障害などの性機能障害の割合も加齢によって増加します。

今できることと、これからできること

ここまで色んなデータから、加齢が妊孕性を低下させることをお伝えしてきました。その事実だけ切り取って考えてしまうと、ご自身の置かれた状況によっては子供を諦める選択肢しかないのかな、と落ち込んでしまう方もいらっしゃると思います。

不妊治療を含め医療の世界は日々進化していますが、それでも加齢を止めることは未だに実現せずにいます。どのタイミングであっても今が一番若いんだ!と捉えて、今できることや、これからできることに目を向けていきましょう。

妊活中ならお互いの年齢を考慮して、効率の良さにこだわるのも大切です。2人目・3人目も考えるなら、体外受精なども視野に入れて効率良く進めた方がベストな場合もあります。ご自身で妊活するのであれば、不妊治療へのステップアップするタイミングを事前に話し合っておくことが大切です。

一般的には1年間妊娠しなければ不妊症と診断されます。「1年間トライしてみて妊娠しなければ受診する」など受診の目安もありますが、ご自身の年齢が35歳以上であるならば「半年間妊娠しなかったら受診を」40歳以上であるなら「妊活を考えたらすぐに受診を」とお伝えしているので、ぜひ参考にしてみてください。

今すぐ妊娠を考えていないのであれば、婦人科疾患がないか定期的に検診を受けることや、健康的な生活習慣へ今から整えていくことが大切。ブライダルチェックや、場合によっては卵子凍結も手段の一つです。

迷ったらお近くの婦人科や不妊治療クリニックへ気軽に相談してみてくださいね。

まとめ

妊娠や出産を考えたときに、大きく影響を与えるのが年齢です。正直向き合うのが怖いと感じる方もいらっしゃると思います。とはいえ、目を背けてはいられないのも事実です。焦る気持ちや落ち込む気持ちも当然あるかと思いますが、何よりも大切にしていただきたいのが後悔の無いように妊活を進めていくことです。パートナーの方と妊活について話し合う際や、ご自身のキャリアプランを考える際の参考になればと思います。

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