今や多くの不妊治療クリニックで行われているERA・EMMA・ALICEのトリオ検査やPGT-A。今回は、この検査会社であるアイジェノミクス社のラボにお伺いし、実際に普段検体が届いてから、どのような流れでどのようなことをされているのか教えて頂きました。
ー 普段、検査室ではどのようなことをしているのでしょうか?
検査室では検体の受領、実験、結果報告の3つの仕事をメインで行っております。
まず、子宮内膜着床の検査の検体、PGT-Aの凍結した検体、血液検体など大きく3つに分けて受領しております。子宮内膜の検査(ERA・EMMA、ALICE検査)の検体については、スペインで検査を行っておりますので、スペインに発送します。PGT-Aの検査は弊社のラボにて行っておりますので、保管して、決まった日にちに検査を行っています。
こちらが実験室になります。実験室は2つに分かれており、こちらは実験室1になります。
実験室1は、クリーンルームと呼ばれており、非常に清潔な部屋になっています。中には、無菌操作できるクリーンベンチがあり、検体が届きましたら、受領室に入りまして内容を確認したのち、検体のみクリーンルームに送られます。
その後、検体は赤い装置のサーマルサイクラーという装置でDNAの増幅を行います。DNAを増幅したものを、パスボックスを通じて、奥の実験室2の部屋に受け渡します。
実験室2で検体を精製して、一番奥にあるNGS(次世代シーケンサー)という装置なのですが、この装置でデータの解析を行いまして、最後はレポートを作って発送するという作業を行っています。
これは実際に輸送に使われるボックスです。このBOXは、0℃以下をキープできる作りになっています。基本国内であればこのボックスで検体の輸送が可能になります。
このBoxの中には、長時間保冷可能な保冷剤を入れて発送してもらっています。検体は温度で色が変わるサンプルラックに収納して頂くのですが、常温だと黄色ですが、冷凍庫に入れると色が緑になります。普段輸送するときには緑の状態で発送して頂いています。緑の状態で発送して頂き、弊社にて受領できていないと、検体の品質に問題が起きている可能性があります。ですので、検体が到着したら、サンプルラックの色の確認を行っています。
ー 患者様から頂く質問の中に「検体を輸送する際に、移送中の外的な影響は何かないんですか」と聞かれることがありますが、いかがでしょうか。
はい、問題はありません。PGT-Aの場合は、細胞がチューブの中で凍った状態になっているので、非常に安定した状態です。輸送BOXには、長時間保冷可能な保冷剤を6個使用し、さらに遮温性のある箱で輸送しますので、常温で送っても温度は上がらない形で発送できます。サンプルラックの色で温度を確認できるため、万一凍結できていない場合は、クリニックと相談することになりますが、今までそういった事は一度も起きていません。この輸送箱も、海外の施設でも使用されているものになります。
ー そうしますと、陸路でも空路でも心配は要らない、ということですね。
はい。
ー 検体がクリニックから届く頻度はどのくらいですか?
毎日です。毎朝9時に検体が届きます。午前9時から10時までの間にどんどん配達されてきます。午後は海外からの検体が届くようになっています。
ー 検体数自体は1日何件くらい届くのでしょうか?
ERA、EMMA、ALICEといった検体は、多い時、例えばゴールデンウィークや年末年始明けなどは1日90~100件ほど届くこともあります。PGT-Aは週に3回、90検体の検査を行っているので、かなり届いていることになりますね。日本全国と、東南アジア、マレーシア、シンガポールなどの検体もここで受領しています。
続いてこちらが実験室2になります。左側の手前にある装置が、イオンシェフ(Ion Chef)という装置になります。(機械に内蔵された)ロボットがチップのローディングを行っています。
緑のランプがついた左の装置で、増幅されたDNAの情報をチップに読み込ませる作業をこの1台で行っています。右奥の白い装置がエスファイブ(S5)という次世代シークエンサーの装置になります。
この装置で、チップのローディングが終わったらDNAのデータ解析まで行います。チップはこのようなものです。こちら使用済みですが、触ってみて下さい。
このチップは、中に一千万個以上の穴があるんですね。DNAがビーズに繋がって、そのビーズをこの小さい穴に入れます。DNAが付いているビーズが一千万個の穴に入ってくるわけです。そこから、pH調整を行いDNAからATCGというシグナルが出ますので、PH調整でATCGの順番を次世代シークエンサーで読みます。そこから、組み合わせて一人一人の患者様のDNAを解析することができるようになります。
ちなみにこの1枚の検体で何検体まで解析できると思いますか?
ー うーん。100ですか?検討もつきません。
正解に近いですね。96検体まで解析可能です。
ー だいたい、検査はどれくらいの時間で行うのでしょうか。
だいたい、トータルで1.5日くらいです。週、3,4回くらい実施しています。本社では、この解析機器が7台ありますので、グローバルで年18万胚検査を行っています。次世代シークエンサーは、アルゴリズムを変更することで、ERA検査、トリオ検査なども行えます。
ー 人が行っている作業としてはどのような事があるのでしょうか。
検体の受領や、装置にかける前のDNAの増幅、前精製です。こちらが完了すればあとは、装置に任せることが出来ます。もちろん、判定も装置に任せます。そして最終的には、装置による自動判定の結果を人間の目でも再確認するということになります。
ー 全件、人の目で確認されるんですか?
はい。見ています。見て、判定して基本弊社で備わっているアルゴリズムを見て、人間がこれは合っているな、と。もし万一、若干異なっていればラボの経験者がおりますので、相談して結果の方をお返しするということになっています。
また、現在、PGT-Aは日産婦で臨床研究が行われていますので、その形式に沿った形で結果をお出しする必要があるため、そこは手作業で編集を行っています。
- 通常御社が出す結果と、日産婦の結果の形式はどのような点が異なるのでしょうか。
書式が異なっています。通常、弊社からお出しする形式の場合は、性別が判明しますが、日本では性別は伏せる必要があるため、性別を隠したり、特定の疾患の可能性についての情報を、補足情報として添えてお渡しする場合もあります。先生には結果としてお渡ししますが、患者様には性染色体の情報は一切お渡ししていない状態になっております。
ー 災害時はどのように対応されるのでしょうか?
停電時の場合は、マニュアルがありますので、それに基づいて行っています。UPSという予備電源があり、20分程度持ちますので、その間に試薬や検体のクリーンアップは行えます。基本的に停電になった場合は、その分の検体は廃棄になりますが、遺伝子は増幅した分がありますので、再度やり直しを行います。冷蔵庫などは、ロックがかかっており、地震などで開かないようにしています。また、停電になった場合でも緊急用電源がありますので、ギリギリまで対応します。復旧後は、メンテナンス、バックアップを行い検査を再開することになっています。
ー 万全な体制で検査を運営されているのですね。本日はどうもありがとうございました。
株式会社アイジェノミクス・ジャパン
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生殖遺伝子検査サービスに特化した検査ラボ、アイジェノミクス。患者様の妊娠、出産をサポートする遺伝子解析サービスを提供しています。