女性活躍推進や両立支援、働き方改革に取り組むさまざまな企業へインタビューし、制度や仕組みづくりへの取り組み、風土醸成や浸透の工夫、担当者の想いなどを聞きました。人事担当者やダイバーシティ推進担当者のリアルな声をお届けします。
今回は、クライアントのマーケティング活動を、広告・プロモーション・デジタルなど、幅広いソリューションで支える「株式会社読売エージェンシー」を取材しました。
「プラチナくるみんプラス」の認定取得の取り組みを中心に、自分らしく働きやすい環境づくりについて、法務・コンプライアンス室 丸山さんにお話を伺いました。
広告、デジタルマーケティングで企業活動をサポート
― 貴社の事業内容についてお聞かせください
1936年に創業し、1975年に読売新聞グループの一員になりました。
広告、デジタルマーケティングなどの分野で、読売新聞や巨人軍といったグループ企業のみならず、中央省庁をはじめとする多くの取引先のビジネス活動をサポートしています。近年では、官公庁の主催するセミナー等の企画や運営など研修事業も手掛け、事業範囲を拡大しています。
― 社員の構成はいかがでしょうか
現在120名の社員が在籍していて、若手からベテランまで幅広い年齢層の社員が活躍しています。 性別にかかわらない公平な採用により、20〜30代の若手社員を中心に女性社員が全体の約40%を占めています。
広告業で初の「プラチナくるみんプラス」認定
― 女性活躍や両立支援にはいつ頃から取り組まれていますか
2016年から取り組みを始めました。仕事と介護の両立の取り組みを行ったのが最初です。ちょうど当時、国が仕事と介護の両立を促進していたというタイミングでしたので、介護離職防止を目的として、両立支援について調べ、社内でリーフレットの配布や講習会を実施しました。
2017年には、女性活躍推進法の制定に伴って始まった「えるぼし認定」の取得に取り組み、当時すでにえるぼしの3段階目の要件を満たしていたこともあり、認定を取得しました。
男性育休の取得促進の取り組みもその頃に始めて、男性の育休取得を応援しますという内容のリーフレットを配布しました。
― 早い段階から積極的に取り組まれていることが伺えますが、業界的にこういった両立支援や女性活躍推進に取り組まれる企業が多いのでしょうか
いいえ、広告業界では、当社のような認定を取得している会社はまだまだ少ないのが現状ですね。「プラチナえるぼし」も「プラチナくるみんプラス」も当社が広告業界で初めての取得となっています。
― いち早く取り組みを始められて、継続された結果として、業界初の認定取得に至られたのですね
性別に関わらず、自身の働きたいような形、自分のペースに合わせた働き方をしやすい環境になっているのではないかと考えています。バリバリ働きたい人も、子育てを中心に仕事はセーブしながらという人もそれぞれ自分に合った働き方ができていると思います。
― なるほど、ワークライフバランスを取りやすい環境が整っているということですね
そうですね。コロナ禍をきっかけに在宅勤務も導入しました。以前からある時差勤務もこの時期に利用が拡大しました。今では全社的に多くの社員が利用していて、ワークライフバランスがとりやすい環境ではないかと感じています。
働きやすさという観点での新しい取り組みとしては、今年(2024年)の4月にフレックスタイム制を全社導入しました。
― 広告業というと、営業職やクリエイティブ職など働き方は様々かなと思いますが、不公平感が出ないような工夫はされていますか
部署によって制度の利用に差が出ないようにしています。
フレックスタイム制は、働き方が変わる、勤怠管理が変わるというどうしても大きな変更になりますので、4月には全社導入する予定ですよ、というお知らせは事前にしっかりした上で、まずは一部の部署で試験的に導入しました。その上で、予定通り4月から全社での実施を開始しました。
―女性の働き方でロールモデルになるような方は社内にいらっしゃいますか
2017年に女性活躍推進の取り組みを始めた当時は、女性が就いていた最高位の役職は「課長」でした。
えるぼしの認定取得もあり、行動計画で女性の管理職登用の目標を立てて取り組んだ結果、現在では、総務部門と営業部門にそれぞれ1名ずつ、合計2名の女性部長がおります。副部長や課長クラスにも女性が増えています。
会社や上司からの後押しがポイント 制度運用の工夫
―「プラチナくるみんプラス」認定ということは、不妊治療に関する両立の支援もされていると思います。なにか制度として運用されたりしていますか
不妊治療のための休暇制度は、2014年にすでに導入していました。
休暇制度自体はありましたので、「プラチナくるみんプラス」認定の申請にあたって、社内講習会の実施やリーフレットを配布することで制度の周知を全社的に行いました。
―不妊治療のための休暇制度は、どのように運用されていますか
「女性休暇」という名称で運用しています。女性を対象に、不妊治療のほか、女性特有の病気や症状の際に、必要な日数の休暇を取得できる制度です。そのうち月1日分が有給休暇となります。
― 「女性休暇」という名称から女性のみが対象の休暇制度なのでしょうか
「女性休暇」の制度に関してはそうですね。男性の不妊治療については、男女ともに理由を問わずに5日間休めるリフレッシュ休暇という制度があり、これを利用することで男性も不妊治療のために休暇を取ることができます。
―制度を浸透させるための工夫は何かされていますか
リーフレットの配布や社内掲示や社内サイトによる広報などを行っています。
休暇の取得に関しては、会社や上司からの後押しもポイントになると思っています。
男性育休も2016年までは取得者はいなかったのですが、2017年に取り組みを始めたちょうどその時期に、お子さんが生まれるという男性社員に部門全体で後押しして取得してもらいましたね。
あとは、社内説明会を行って、男性も育休を取得できるということを知ってもらうなど、そういった取り組みがきっかけで徐々に利用者が増えてきました。最近では男性でも育休の取得が当たり前みたいな雰囲気になってきました。
最近育休を取得した男性社員の話では、同じ部署に育休を取得した経験のある男性社員がいたため、取得しやすい雰囲気が浸透していたことが、取得理由の1つだったとのことです。
―今のお話を伺っていて、やはり管理職側や支える側の理解があって、若い世代に大丈夫だよ、みたいな安心感を持たせてあげるのが大事だなということがわかりますね
そうですね。やっぱり特に営業職の場合は、自分が休むと周りの負担が増えるのではないかと遠慮しがちな中で、上司や同僚が声がけすることで取得につながっているようです。
―働きやすい環境づくりやコミュニケーションの工夫は何かございますか
総務部が中心となってコミュニケーションをとるための取り組みを行っていますね。
業務の節目に大会議室にみんなで集まって、軽食をとりながら懇親会を実施するなど、社員同士のコミュニケーションの場づくりは、その時々でいろいろ工夫しながらやっています。
―今後の展望やより力を入れて取り組みたいことなどがあればお聞かせください
男性育休について言うと、長期間取得する人が少ないことが今の課題と考えています。
女性活躍については、女性管理職の割合20%以上という2017年に掲げた目標がまだ達成できていません。女性の管理職も徐々に増えてきてはいますが、伸び率が鈍いのが現状です。
―なるほど。女性の管理職登用の部分で言うと、男性と違って女性がどうしても慎重になってしまうので、どう声がけをするべきか悩むと言うようなお話もよく聞きます
そうですね。2017年に、女性活躍推進に取り組むにあたっての課題を抽出するために、社内でアンケートをとったことがあるのですが、その回答の中で、女性が管理職になりたがらない理由について、当時はやはり男性中心の管理職の中に女性が入るという状況が管理職になることへの懸念点として挙がっていました。
法務・コンプライアンス室 丸山さん
ただ、今は副課長や主任クラスでは、男女比で半々くらいまで比率が上がってきているので、再度アンケートを取ったら、管理職を目指したいという社員も増えているのではないかと思っています。
― たしかに、その変化は顕著に出そうですね。会社としての行動計画を立てて、目標に向けて継続的に取り組むことで、働きやすい環境づくりにつながっていること、その結果として認定の取得につながっていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。
■ 会社情報
会社名 | 株式会社 読売エージェンシー |
所在地 | 東京都千代田区 |
事業内容 | 広告主の課題解決のための様々なコミュニケーションプランの提供 |
設立 | 1936年 |
従業員数 | 123名 (2024年6月17日現在) |
公式ページ | https://www.yomiuri-ag.co.jp/ |