セックスレスとは、特別な事情がないにもかかわらず、カップル間で1カ月以上の性行為やセクシャルコンタクトがないこと。とてもプライベート性の高い悩みなので、誰にも相談できない。でも自分ではどうしたらいいのかわからない、と悩んでおられる方はとても多いです。このコラムでは、心理士の目線からセックスレスとどのように向き合えばいいのか、解決の糸口をお伝えします。
セックスレス解消はみんなむずかしい
当事者の方は実感されていると思いますが、セックスレスそのものの解消は簡単ではありません。なぜならセックスレスは相手ありきの問題だから。もしどちらか一方がセックスレス解消に向けてがんばったとしても、それがよりプレッシャーになって状況を悪化させてしまうこともあります。セックスレスに至った背景もお互いの認識も人それぞれなので、万人にあてはまる解決法があるわけでもありません。焦って自信がなくなってしまうこともあります。大切なのは、自分と相手のことをよく知ってお互いを尊重し、2人に合った方法を模索していく。一長一短でいくものではありません。
ただお伝えしたいのは、「セックスレスを解消するのがむずかしい」というのは多くの人に当てはまる、ということ。あなただからむずかしいわけではないのです。
セックスレスで困ることは?
セックスレスそのものを解消するのは長期戦の覚悟が必要ですが、セックスレスに伴う悩みについてはすぐに対応できることもあります。例えば、
- 妊活がうまくいかない
- 自身が否定されたように感じる
- パートナーに対して罪悪感がある
- 2人でいる時間が楽しくなくなる
これらはセックスレスに伴う困りごととしてよく挙げられるものです。
個人的には、これらの悩みとセックスレスの悩みは“いったん分けて考える”ことをおすすめします。例えば妊活のことであれば、現在は家庭で手軽にできるシリンジ法もありますし、他の不妊治療方法を選択することもできます。
また、セックスの頻度と自分の価値は必ずしも直結しているわけではありません。その証拠に、「ふだんはとても仲が良い。異性として昔も今もすごく好きです」とお互いおっしゃるカップルの方からのセックスレス相談もたくさんあります。
セックスレスの種類
セックスレスを大きく分けると3種類になります。
- 両者とも納得のうえでセックスレスである夫婦カップル。
- 一方はセックスしたい・一方はしたくない夫婦カップル
- セックスしたくないわけではないけど、物理的にできない夫婦カップル
①の方たちはセックスレスだからといって困っていることはあまりありません。あるとすれば妊活するときですが、上記にも挙げたようにシリンジ法もありますし不妊治療に頼ることもできます。
困っているのは②と③のカップルです。セックスレスにお悩みの方々。自分たちはどちらのタイプでしょうか?
セックスレスはすれちがいが生まれやすい
実はここで落とし穴があります。実際の相談でもよくあるのが「自分たちは②だと思っている一方で、もう一方は③だと思っている」というようにお互いの認識にズレがあるパターン。
例えば、男性は「昔は拒否されることもなかったのに、子どもができてから応じてくれなくなった。子どもの方に愛情がいってしまって、自分のことはもうどうでもいいのだと思う」と仰っていることに対して、女性の認識では「自分は昔からセックスの時に痛みがある。それでも子供がほしかったからガマンしてきた。でも今はもう子どもがいるので、これ以上痛みをがまんしたくない。でも夫の気持ちをないがしろにしているのも申し訳ない」と仰っている。これはよくあるパターンの1つです。このように、お互い関係を円満にしたいという気持ちは共通していても、認識にズレがあるとセックスレスの解消どころか関係も悪化してしまいがちです。
すれちがいにならないためにはどうすればいいか。それはやはりコミュニケーションです。ただ、セックスのことについて延々話すのがいいかというとそうでもありません。ふだんからどのようなコミュニケーションを取っているかがポイントになります。
セックスはコミュニケーションの延長
私が見ている限り、性生活に満足しているカップルにはある共通点があります。それはセックスのときはもちろん、日常生活から自分も相手も大切にする自己表現を使ったコミュニケーションをしている、ということです。
お互いのすべてを知ろうとしなくても大丈夫。まずはふだんの会話から相手の話に共感してみましょう。「私もそう思う」と同調する必要はありません。ただ、「うんうん、そうなんだね」と受けとめることがポイントです。
そして、自分の気持ちには“私”をつけて、「私はこう思う」「私はこう感じている」とアイメッセージで伝えてみましょう。「わかるでしょ」とか「もっとこうしてよ」など、主語をYOUにすると自分の気持ちがうまく伝わらず相手を責めるような文脈に→相手は萎縮して気持ちを伝えづらくなる→相手の考えていることがわからずイライラする、というような悪循環もうまれやすいのです。
身体のコミュニケーションは段階的にあげていく
会話だけでなく、身体的コミュニケーションもとても大事です。といっても、いきなりベタベタするのではなく、お互いの反応を見ながら段階的にするのがオススメ。行動科学者デズモンド・モリスの「親密さの12段階」という理論があります。男女の親密さは12段階のプロセスがあり、この行程を丁寧に行うことで2人の信頼関係が築かれやすいとされています。
STEP1 目を相手に(普段から相手の様子に目をくばろう)
STEP2 目を目に(ふだんから目を合わせる機会はありますか?)
STEP3 声と声で(まずは目を合わせて会話してみましょう)
STEP4 手を手に(触れ合いはまずここから)
STEP5 腕を肩に(肩をほぐすマッサージや、肩を優しくさすってみて)
STEP6 腕を腰に(腰をさすったり腰があたるくらい近くに座ろう)
STEP7 口と口で(まずは軽いキスから始めて、いろんなキスをしてみよう)
STEP8 手を頭に(なでなでしたりぽんぽんしたり)
STEP9 手を身体に(ゆっくり優しく身体にさわってみよう)
STEP10 口を胸に(相手の反応を聞きながら進めてみて)
STEP11 手を性器に(決して焦らずに、丁寧に優しく)
STEP12 性交(身体の準備ができているか確認しながら2人で楽しんで)
ぜひ参考にしてみてください。
1人で抱え込まないで
セックスレスで悩んでおられる方は、「気持ちを吐きだす場所がない」「1人でがんばっているようで孤独を感じる」とおっしゃることがとても多いです。身近な信頼できる人に話せると心強いですが、セックスのことについては話しにくいことも多いです。そんな時はぜひカウンセラーを頼って下さい。心理カウンセリングで話す内容は外部には漏れないよう守られます。また、セックスレスの対応方法はカップルによって十人十色。場合によっては、お2人にあったセックスセラピーを提案することもできます。
ただ気持ちを吐きだすもよし、これからの解決方法を一緒に考えるもよし。1人で悩まなくて大丈夫。相談できるカウンセラーもいる、ということを頭の片隅に置いておいていただけたらと思います。
セックスレスは2人の関係を見直す機会になる
セックスレスというとついネガティブな側面に意識が向きがちです。でも、セックスレスに2人で向き合ったことでこれまで以上にいろんなことを話せるようになった、お互い無理をしたりすれちがうことが少なくなった、というパターンもあります。
セックスは手段であり目的ではありません。ゴールは2人の関係をより良くすること。2人の関係がよくなることで、セックスレス解消の答えも自ずと見えてくるでしょう。セックスレスに悩むすべての方を応援しています!