北海道の培養士が教える!道内の妊活ポイント ~牛から学ぶ身体作り編~

妊活において、身体作りはとても重要です。普段の日常生活で、食事内容などに気を付けていらっしゃる方も多いと思いますが、どのような点を大切にされていますでしょうか?

今回は、道内では比較的身近に見られる乳牛での例から、妊活における身体作りのヒントを見つけていきたいと思います。

牛もストレスや食事で体が変わる

令和5年農水省畜産統計によりますと、乳牛飼養頭数は全国で136万頭、北海道では84万頭と、およそ6割が道内で飼育されています。

筆者の住む地域には、山地自然放牧で乳牛を飼育している牧場があります。国内でも数少ない稀少な牧場です。

その牧場の牛たちは、山に自生している農薬を全く使用せずに育った牧草や野草を食べて、きれいな水と空気の中、山地を自由に歩き回りながらのんびりと暮らしています。雪に閉ざされる冬の間も、食べるのは夏の間に刈り取って乾燥・発酵させた干し草だけです。

一方で、一般的な牧場では、牛たちは穀物などを加えた濃厚飼料を食べ、牛舎内で管理飼育されています。

両者の牛たちにはどのような違いがあるのでしょうか?

牛乳

前者では穀物飼料を食べていないため、乳量は1頭当たり年間2,000リットル程度にとどまりますが、搾られた牛乳は驚くほどに濃厚です。後者では穀物を多く食べていることから、1頭当たり年間8,000~10,000リットルと、たくさんの牛乳を搾ることができます。

寿命

前者では10~15年ほどですが、後者では平均5~6年となっています。

運動量

前者では山地を歩き回るため運動量は多いですが、後者では牛舎内飼育のためほとんど動くことが出来ず、運動量は少ないです。

健康

前者では運動量も多くストレスが少ないため、病気になることがとても少ない一方、後者では狭い場所に入れられたり、繋がれて飼育されたりしているため、運動不足に加えストレスも多く、病気が増えると考えられています。

人も牛と同じく栄養・運動・休息が重要

この両者を人に置き換えてみるといかがでしょうか。前者は本来の生物学的な消化能力に合わせた、農薬や添加物などの含まれない未加工の食物のみを摂取し、しっかりと運動と休息を確保できる生活です。

後者では、遺伝子組み換え穀物を含む高タンパク高カロリーな加工された食物を摂取し、運動不足でストレスフルな生活です。

どちらの方が、より健康的な身体が作られてゆくのか、お分かりいただけるかと思います。

以前、牛の繁殖に携わっている獣医さんにお話を伺う機会があり、“人の生殖医療と通ずるものもあるのではないか”との想いから、畜産分野での最近の知見や技術について聞いてみたことがあります。

日本における現在の牛の繁殖方法は、ほとんどが人工授精あるいは受精卵移植です。牛の場合、通常用いられる精子は凍結精子ですが、エリート種牛由来であることから、精子の数や質には全く問題がありません(人の場合には、凍結することにより精子の半数ほどが死滅してしまいます)。雌側も基本的には妊娠能に問題がないため、人工授精による現在の妊娠率は、1回あたり70%程と非常に高いそうです(人での人工授精の一般的な妊娠率は、1回あたり5~7%程度)。

しかし、実際には、それぞれの個体や飼育環境などにより、人工授精や受精卵移植による妊娠率には差があるそうです。そして、その差に大きく影響する要因の一つが「個体の栄養状態」であるとのことでした。

つまり、適切な給餌(食事)が妊娠成立には重要であることを意味しています。

卵巣内の卵胞(卵子の入っている袋)は、原始卵胞から一次卵胞、二次卵胞へと発育し、徐々に大きさを増してゆきます。その後、卵胞および卵子へ成熟が進むと排卵へと至りますが、牛の場合、特に卵胞が小さい時期に低栄養状態であると、そこから発育した卵子の質が低下し、変性卵が増えてしまうとのことでした。

人で同じ時期に相当するのは、排卵の10ヶ月~1年前であると考えられています。人も牛と同じ哺乳動物であることから、卵胞発育期の栄養状態は卵質を左右する可能性があります。

おわりに

妊娠を希望されるカップルでは特に、日頃から食事の質にも気を配ることが大切だということですね。

良質な精子や卵子、受精卵は、健康な身体があってこそ育まれます。適度な運動や上手なストレス対処、良質な食事など、ぜひ普段の生活で取り入れてみていただければと思います。

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