北海道の培養士が教える!道内の妊活ポイント ~冬の室内空気編~

雪が降り積もり、道内はすっかり冬景色となりましたね。
北海道の寒くて長い冬の到来です。

今回は、冬季ならではの妊活ポイントについて、室内空気の質に焦点を当ててゆきたいと思います。

“空気の質が妊活に関連するの?”と感じるかもしれませんが、人が一日に体内に取り込む物質量は、食料が1~2kg、水が2kg程度であるのに対し、空気は15kgにも及びます。そのため、摂取する空気の質は身体の状態に実は大きく影響しています。

冬季の室内空気の特徴

  • 換気が少ない
  • 室内滞在時間が長くなりやすい
  • 揮発性有機化合物(VOC)濃度が上昇しやすい

換気が少ない

北海道の住宅は冬の寒さに備えるため、他地域と比較すると非常に気密性の高い作りになっています。

建築基準法に則り、現在の住宅には24時間換気システムが備え付けられているケースは多い一方、冬季に換気扇が作動していたり、換気口が開いていたりすると、冷たい外気が室内に侵入して非常に寒いため、実際には換気流量を小さくしたり、換気口を閉じたりするご家庭が増えます。すると、新鮮な外気の流入量が減少し、室内の空気は循環が滞り、結果として空気の質が低下してきます。また、換気不足の中で冬季は常に暖房を使用するため、室内空気の質がさらに低下してゆくことは想像に難くありません。北海道に化学物質過敏症の患者様が多い理由の一つとしても、住宅の高い気密性が指摘されています。

室内空気は、外気と入れ替えることで劇的に質が改善します。換気は新鮮な酸素の供給、結露の予防、カビやダニの繁殖予防、室内で発生する汚染物質の除去など有用性が確認されています。こまめな換気を行うことが大切です。

室内滞在時間が長くなりやすい

現代生活において、人は1日の多くの時間を室内で過ごし、その室内の空気を摂取し続けます。北海道の冬は長く、厳しい寒さが続きます。地域にもよりますが、雪も相当量になり、冬季は室内で過ごす時間が必然的に増えます。

食物や水は摂取すると食道を通り、消化・分解され、肝臓で解毒されたのちに血液を介して全身へ行きわたりますが、一方で、空気は肺から直接血液中へ入り込み、代謝や分解が行われないまま全身へ送られることになります。つまり、呼吸で汚染物質を取り込んでしまうと、そのまま体中に行きわたり、卵子や精子、受精卵の発育にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、室内の空気環境を整えることは、妊活においてもとても大切になります。

揮発性有機化合物(VOC)濃度が上昇しやすい

“揮発性有機化合物(VOC)”という言葉を耳にされたことはありますでしょうか?VOCとは、空気中に常温で揮発しやすい有機物質の総称であり、世界保健機関(WHO)では沸点の違いにより以下の4種に分類され、一般的には1~3を含めて“VOC”と表現されています。

  1. 「高揮発性有機化合物」・・・ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど
  2. 「揮発性有機化合物」・・・トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンなど
  3. 「準揮発性有機化合物」・・・クロルピリホス、フタル酸ジエチルなど
  4. 「粒子状物質」

VOCは建材や家具、家電、接着剤、インク類、化粧品、たばこ、生活日用品、香料製品など様々なものから放出されます。VOCの中には、発がん性や神経毒性、生殖毒性、喘息の誘発、内分泌かく乱作用、脳や内臓への悪影響などを示すなど、非常に有害な物質も存在することが知られています。最近では、消臭除菌スプレーや柔軟剤などの家庭用品に由来するVOCが原因と考えられる、人やペットの体調不良や健康被害も報告されています。

VOCは様々な疾患との関連性も疑われることから、厚生労働省により1997年以降、ホルムアルデヒドを含め13物質および総揮発性有機化合物(TVOC)の指針値が設けられています。

VOCは吸入により血液中に吸収されやすい性質を持っており、生殖細胞の発育にも悪影響を及ぼすことが数多く報告されています。また、培養液中にも容易に溶け込んでしまうため、卵子や精子、受精卵を扱う培養室では、VOCの発生量の多いものの使用を避けたり、外部から持ち込む物品を最小限にしたり、VOC除去フィルター搭載の空調システムや空気清浄機を設置するなど、各施設でVOC発生量の低減に努めています。

VOCは目で見ることはできませんが、数値として測定することが出来ます。

以前、院内でTVOCの簡易測定をしてみたところ、換気の良い場所ではTVOCは全く検出されなかった一方で、換気を行いにくい場所や多くの方が出入りする場所では高値を示すことが確認されました。

まとめ

妊娠や出産を考慮する場合、できる限りVOCへの暴露は避けたいものです。日頃から頻繁な換気を心がけることに加え、ご自宅内やご自身で使用されるものは、VOC発生の少ない製品を選ぶことが大切だと言えます。

普段、食料や水の質に気を付けている方は多いと思います。バランスの良いメニューを心がけたり、添加物や農薬使用の少ないものを購入したり、どんなものを摂取するか、食品についてはある程度ご自身で選択することが出来ると思います。

こちらのコラムが、一日の摂取量の最も多い空気についても意識していただけるきっかけになりましたら幸いです。

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