現在臨床研究段階と言われているPGT-Aですが、アイジェノミクス社はPGT-Aのパイオニアとも言うべき検査会社です。PGT-Aは、体外受精で得られた受精卵の染色体を調べる検査で話題となっていますが、どんな検査なのかご存知でしょうか。

このPGT-Aについてもっと深く知りたい!ということで事業開発部長の西山様にお話しをお伺いしました。

PGT-Aってどんな検査?検査の流れは?

ー PGT-A検査は何を調べる検査になりますか?

PGT-A検査は、受精卵(胚)の染色体の数が正常であるかどうかを調べる検査になります。

流産の原因の約6割は染色体異常によるものと言われています。そのため、PGT-Aで胚の染色体の状態を調べることで、流産してしまう可能性を抑え、妊娠の確率を高めることが目的です。

ー PGT-A検査はどのような流れで行われているのでしょうか。

PGT-Aの流れは、医療機関で胚盤胞の胚の一部の細胞(胎盤になる部分)をバイオプシー(生検)した後、チュービングをし、そこからアイジェノミクス社のラボへと送られます。その後、採取した細胞のDNAを増やしてから次世代シーケンサーで染色体が何本なのかを解析していきます。

最終的に検査結果で「ノーマル(正常)」の胚を移植に用いることになります。卵がいくつか採卵できた場合には、どの胚を戻せば流産の可能性を抑えられるのかということを確認する目的でPGT-A検査を行います。

PGT-Aは年間どれくらい行われている?

ー PGTAは御社のラボで実施されているということですが、PGT-Aが現在実施できる施設は日本でどのくらいあるのでしょうか。

今産婦人科学会で取り組んでいる、PGT-Aの特別臨床研究はクリニックでいうとおそらく100施設くらいが参加している状況かなと思います。また、検査を供給する会社の数で言うと10数社あると思います。

ー PGT-Aの検査自体は、今日本で年間どのくらいの検体が検査されているのでしょうか。

特別臨床研究は、1000人の患者様の予後調査まで行う、という内容になっています。この研究は開始からもうすぐ2年で、まだ研究が完了していないため、詳しい検体数は分かっていない状況です。おそらく臨床研究の中で、2000、3000などの検体数で、患者様の数からするとおそらくそれの1/3~1/5ではないかなと思います。

ー 御社の海外におけるPGT-A検査のシェアはいかがでしょうか?

グローバルでいうと、弊社はシェアが6、7割くらいではないかと思います。全世界では年間、約25万検体を扱っています。

日本の場合は、反復着床障害で、なおかつ高齢の患者様が多いので、患者様お一人の検体数が少ないのではないかと考えられています。海外の場合は患者様お一人あたり、10検体などのケースがあります。

ー 海外は、一人あたりの検体数が多いのはなぜですか。

反復着床障害ではない患者様が検査をされるケースが多いためです。

ー 海外では多くの場合、体外受精の始めの段階で、どの胚が一番移植に適しているか、ということを調べているということですか。

その通りです。そういう意味で年齢も日本と異なりますし、対象となる患者様の状況が違いますので海外では検体数のボリュームが多くなってくるということになります。

PGT-Aのメリット・デメリットって?

ー PGT-Aのメリットはどのようなことが挙げられますか。

まず、移植に最適な胚を選べるということ、それによって流産率が下がるということです。検査を実施することで健康な赤ちゃんが生まれる可能性にも繋がります。また、海外で多く実施しているのはPGT-Aを行う事で、不妊治療の治療期間を短縮することにも繋がり、結果的に治療の費用も抑えられることになります。

弊社が以前アメリカとヨーロッパで行ったPGT-Aの臨床研究の論文*では、移植する時間や周期が短くなると共に出産までかかった費用がトータルで1割位は安くなっているという論文もあります。 
*Rubio et al: In vitro fertilization with preimplantation genetic diagnosis for aneuploidies in advanced maternal age: a randomized, controlled study. Fertil Steril. 2017

ー 逆にPGT-Aを行うデメリットはどのようなことがありますか。

まず、バイオプシー(生検)を行うため、胚に対して侵襲性があるため傷つける恐れがあります。

また、何のためにPGT-Aを行うのかという目的に立ち返った時に、日本の場合、患者様が高齢であったり、患者様お一人お一人の胚の数が少ない、ということがあるため、移植をするために検査をしているのに、結果的に移植できる胚がありません、という結果が想定されます。それがいいのかどうか、という点があります。

また、日本の場合は「異数性」または「モザイク」という結果が圧倒的に多いので、「正常」という結果の割合がかなり少なくなっています。例えば、5個検査に出された方が、正常という結果が出てくる胚は、1~2個ということもあります。もちろん、状態が良い方は5個正常ということになることもありますが、逆に0個の方もいらっしゃいます。

ー モザイク胚とはどんな胚ですか。

モザイク胚とは、生検で採取した細胞の塊の中に、染色体異数性を持たない(正常な)細胞と染色体異数体性を持つ細胞が混在している状態をモザイク胚と言います。下の図を見るとわかるように、このイラストで、バイオプシー(生検)した際に、青とオレンジが混ざっている場合に「モザイク胚」と言えます。

PGT-Aは万能ではない?検査の限界も?

PGT-Aの検査の限界とも言えますが、バイオプシーして取ってくる細胞は、将来赤ちゃんの胎盤になる細胞の一部です。そのため、胚全体の情報ではありません。PGT-A検査で検査結果が異数性だった場合、かなり高い確率で異数性ではあると考えられます。しかし、検査は異数性だったけれども、健康な赤ちゃんが生まれてくる可能性も否定できない、という点にあります。

つまり、検査の結果は異数性であったけれども、もしかしたら正常だった胚が選べないということもあり得ますので、その点をしっかりと理解されてからPGT-Aの検査を受ける必要があると思います。

おそらく、移植するかどうかを悩まれるのがモザイク胚の場合です。弊社の場合は、他の検査会社様よりもモザイクの割合がかなり低く出ていると思います。

 御社の検査でモザイクの割合が低く出るのはなぜですか?

それはアルゴリズムを実装できているからです。当社は世界的にはPGT-A検査の圧倒的なシェアがあり、研究段階で、ある程度検査結果が分かっている胚から逆算してアルゴリズムを組み立てる、ということも行っているため、目視で生データを見ても「モザイク」と分類せざるを得ない胚でもAIによって「正常」、「異数性」などを判定できるようなアルゴリズムになっています。

アルゴリズムの実装ができていないと、判断が曖昧な場合は全て「モザイク」になっているケースが多いのではないかと思います。

ー 御社で扱っている検体が世界的に見ても多いために、そのアルゴリズムが実装できているということですね。

そうですね。

PGT-Aの検査結果はどのように出てくるの?

ー アイジェノミクス社のPGT-A検査結果は、どのように表現されるのでしょうか。

アイジェノミクスのオリジナルの検査結果では、「正倍数性」、「異数性」、「低頻度モザイク」、「高頻度モザイク」、「複数の異数性」、「多数の異数性」という分け方をしています。

正倍数性は染色体数が正常ということです。例えば、PGT-Aをやって細胞が10個あった時に、7個正常であれば、正常ということになります。10個中、8個正常であれば正常とする検査会社が多いのですが、弊社の結果では7個で正常であれば正常と判断されます。これは、解析アルゴリズム、臨床研究データを基にし、7割正常であれば正常と判断しても良いとしています。

10個中、正常な細胞が7個以下の場合、モザイクになってくるのですが、10個中、5~7個正常な細胞であれば、低頻度モザイクとなります。また、10個中、5~7個の細胞が異数性の細胞になると、高頻度モザイクになります。

異数性とは、1から22番の常染色体および、性染色体のいずれかに異数性または染色体の部分的な重複・欠失が検出された場合、異数性という結果になります。

その他、複数の異数性と多数の異数性という結果も出ることがありますが、1番から22番のXYの染色体がある中で、どのくらいの異数性の状態であったか、ということを検査結果で確認している結果を示しています。いずれにしても複数以上の異数性が出ると言うことは、移植の優先順位はかなり低くはなります。

移植の優先順位は、正常、低頻度モザイク、高頻度モザイク、異数性という並び方になってきます。もしモザイクがあった場合でも、低頻度モザイクであった場合は移植する価値はあるかなと思います。

ー 日産婦のPGT-Aの結果は御社と形式がことなるのでしょうか。

はい。日産婦の臨床研究での結果は、高頻度モザイク、低頻度モザイクといった表現ではなく、A:移植に適している、B:モザイク、C:移植に適していない、D:結果不良となります。そのため、弊社のオリジナルの結果とは異なっています。弊社も、臨床研究に参加するにあたって日産婦の様式に合わせて結果はお出ししているのですが、オリジナルからそこが若干変換されているかなというところはあります。

ー ABCDのうち、御社の結果でいうところの「低頻度モザイク」というのは、B:モザイクという結果になる、ということですか。

はい、そうなります。

ー 移植できないことはないけれども、モザイクです、という結果になるわけですね。

そうなります。

ー DNAが検出されなかった場合は、再検査になるのでしょうか。

多くの場合は、細胞からDNAが生成されれば、いったん増幅しますので、一回目にNGS(次世代シーケンサー)で読めなかったとしても、検体のサンプルは残っているため、もう一度検査することが可能になります。場合によっては、どうしても細胞からDNAが抽出できなかったり、細胞がバイオプシー(生検)で十分採取し切れていない場合は、そこでDNAが抽出できないので、結果が出ないという形になってしまいます。

もう一度、バイオプシーするというのはかなり難しい判断になってきます。行う事もありますが、かなり慎重に判断することになると思います。

アイジェノミクス社オリジナルの「ミトスコア」とは?

ー 御社のオリジナルの結果では、ミトスコアというものが出るようになっていますが、

どのようなものなのでしょうか。

ミトスコアというのは、正常胚だけに付けるスコアになります。正常胚の中でどれから優先的に移植したら良いかという指標、アドバイス的なスコアになります。

生物学的な話になりますが、ミトコンドリアというのは、卵子に存在し、男性からは由来せず、女性から由来するのですが、卵子の初期の段階では、卵子自体の栄養を使って成長するため、ミトコンドリアはあまり増えないと言われています。

受精卵が分割し、桑実胚(そうじつはい)という4日目くらいの胚から、ミトコンドリアのエネルギーを使うことになるため、ミトコンドリアが増える、ということが生物学的には分かっています。

一方、卵子の初期の段階からミトコンドリアが増えているとしたら、これは仮説的なところはありますが、何かしらのストレスが卵にかかっていたり、エネルギーが不足しているので、ミトコトンドリアを増やそうということになっている可能性があり、エネルギーが不足していてミトコンドリアを強引に増やしている、ということが考えられます。

ー 卵(受精卵)自身が初期の段階でミトコンドリアを増やしてしまうことがあるのですか。

ミトコンドリアというのは、細胞のエネルギー工場ですが、受精卵の初期の時点は、エネルギーが卵そのものに存在している、という状態です。

PGT-Aを行った時点の受精卵は受精後から分割5日~6日後の胚盤胞です。胚盤胞の時点でミトコンドリアが多すぎるとしたら、初期の段階でなんらかのストレスがかかっていて、ミトコンドリアを増やしてそこでエネルギーを作らざるをえない状態になっていたのではないかと考えらます。胚盤胞の時点ではミトコンドリアが少ない方が卵の質が良いのではないか、という仮説があります。

ー そうしますと、ミトスコアは高すぎてはいけないということですね。

そうです。低い方が良いとされています。ミトスコアは相対値を見ています。

正常胚の中で、どれを比較的優先するかという指標としては、まだ研究段階ではあります。

そのため、弊社ではPGT-Aを行うとミトスコアも自動的に出てくるようになっています。

アメリカのクリニックでは、胚移植の優先順位を決める際に、PGT-Aの検査結果をもとに移植をすると言われていますが、その次に何を優先するかというと、形態(グレード)を優先するそうです。

グレードでもあまり差がつかない、といった場合にミトスコアを用いる、という運用をしているクリニックがあるようです。

日本のクリニックの中でも、ミトスコアが低い方が良さそうだ、という事を仰って頂いている先生も中にはいらっしゃいます。正常胚が複数ある場合では、その中で優先順位を付ける指標がなかなかないため、それを決める際にはお役に立てるのではないかなと思っています。

グローバル展開で、年間25万件という検体を検査しているアイジェノミクス社。独自のアルゴリズムにより、詳細に結果を出したり、ミトスコアなど独自のスコアを設けるなどPGT-A検査ではまさにパイオニアと言えます。流産率の低下や、不妊治療における時間の短縮などにメリットがあるPGT-A検査ですが、日本においては、まだ臨床研究中で道半ばの検査です。検査のメリットがある一方で、モザイク胚の結果が出た際に、移植を迷うこともあり、検査の限界というデメリットがあることを念頭においておく必要があります。しかしながら、日本において今後、PGT-Aが治療の中でどのように活用されていくのか注目していきたいと思います。

株式会社アイジェノミクス・ジャパン
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生殖遺伝子検査サービスに特化した検査ラボ、アイジェノミクス。患者様の妊娠、出産をサポートする遺伝子解析サービスを提供しています。

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