
ストレスチェックの現状
現在、ストレスチェックは従業員50人以上の事業所に年一回義務付けられています。2015年からスタートした法律で、今年で10年目を迎えます。既に大企業においては通年化していて常識になっていると思われます。しかし従業員50人以下の中小企業では現在は努力義務となっており、一度も実施していない企業もまだ多いでしょう。
そんな中、政府は3年以内にすべての企業にストレスチェックの実施を施行すると決定しました。背景には、仕事が原因で心の病を発症する人が増え続けている現状があります。精神障害による労災はここ10年で2倍になっています。長時間労働や働く環境によるうつ病の発症などは大企業よりも中小企業の方がリスクは高いとも考えられるため、急ぎ改正法案の実施が求められています。ただ、従業員が10人未満の企業においては、プライバシー保護の観点から全員の賛同が得られない場合、結果分析はしないことになっています。
今回は、中小企業でストレスチェックを導入する際に抑えておくポイントを考えていきましょう。
ストレスチェックを実施する際のポイント
ストレスには早期発見と早期対応が大事です。心の病は放置し、悪循環が続けば状態はどんどん悪くなり、一度心の病を発症すると療養には長い時間がかかることが多いです。体と違って見えにくい心の状態を数値化して顕在化するストレスチェックは、本人が気づいていない心の病気のサインをあぶりだすものでもあります。ストレスチェックは効果的に使うと、従業員と会社を守る役割として使えます。まずは基本的な実施ポイントを見ていきましょう。
・簡単で明瞭な質問項目
具体的でわかりやすい質問を設定しましょう。正確性に影響します。
・複数の側面を評価する
心理的ストレスだけでなく、身体的ストレス(睡眠の質、食欲)、社会的ストレス(対人関係)なども含めると、より包括的な結果が得られます。
・プライバシーへの配慮
情報の扱いや匿名性に十分配慮することが大切です。
・定期的な実施
ストレスは時間の経過とともに変化していくものです。定期的なチェックが必要です。
またストレスには早期対応が不可欠です。結果次第では、いち早く対策を打ちましょう。
・結果をファローアップする
チェックを行うだけで終わりではなく、結果に基づいたサポートやカウンセリングを提供する仕組みを作っていきましょう。

中小企業における効果を考える
ストレスチェックを導入するには、手間もかかるし費用もかかります。人出が多くさけない中小企業には負担感も高いことでしょう。どうせ実施しなくてはならないのなら、効果を2点も3点も同時に得られる方が良いと思います。中小企業における効果をここでは考えていきましょう。
従業員の信頼を得る環境づくり
ストレスチェックを導入するということは、従業員の心を企業が気にかけているということでもあります。働く環境を改善しようとする企業の姿勢が従業員に伝わるでしょう。導入に際して、「義務化されたので実施する」というだけでなく、「従業員の心身の健康の為に環境を整備する一環」であることを伝えていきましょう。
実施前の十分な説明
従業員にストレスチェックの目的や意義をしっかりと説明し、参加への安心感を得られるようにしていきましょう。またやり方についても詳しく説明すると、従業員の負担感は少し軽減するでしょう。
実施コストを抑える工夫
外部ツールや簡易的なアンケート形式を採用するとコストが削減できるでしょう。限られた時間や費用の中で実施するので、事前リサーチはしっかりと行いましょう。
個別サポートを強化する
中小企業だからこそ、一人一人に寄り添った対応が可能でしょう。結果に基づいて、具体的なフォローアップや改善策を提供していくことが大切です。
社内の信頼関係への活用
経営者や管理職と従業員の距離が近い中小企業において、関係改善にストレスチェックを生かすことは、大企業よりもやりやすいでしょう。コミュニケーションがとりやすい環境があるというリソースを使い、信頼関係構築に役立てていきましょう。
成果を上げるには、まずは関係の質を上げる必要があります。いわゆるgood cycle
です。組織の成功循環モデルを意識し、ストレスチェックをうまく活用して上司と
部下の関係改善に努めていきましょう。
義務だからストレスチェックを行うのではなく、従業員の健康と生産性向上を目的に行うことが、信頼される企業文化の醸成につながります。そうすれば最大の効果を得ることも難しくはないと思います。ぜひ、今回の改正法案を前向きにとらえて、義務化に向けて社内の環境整備を整えていく機会としてください。従業員の心の健康は、離職率を下げ、仕事へのモチベーションアップにつながります。導入への目的意識を経営者は整えていくことが大事です。
