今回は受精卵の培養液に関するお話です。

受精卵の培養には様々な種類の培養液がある

体外受精治療では、精子と卵子を受精させた後、「培養液」の中に受精卵を入れ、インキュベーターで培養をします。この培養液は、各メーカーが様々な特色を持った多種多様の培養液を出しており、それぞれ特色も少しずつ異なります。

例えば、Vitro Life社から発売されているGX-MEDIAという培養液は、数種類の抗酸化剤が添加されており胚発生率の改善が期待されています。私自身、勤務先のクリニックでこの培養液を使っていますが、特に高齢の患者様で成績に改善が見られる傾向にあります。

また、富士フイルム和光純薬社から発売されているCSC-NXという培養液は、培養液中に含まれる乳酸濃度が他社の培養液よりも低い値で設定されており、その結果、正倍数胚盤胞率に好影響を与えるなどの特色を持っています。こちらも勤務先のクリニックで使っていますが、培養成績が非常に安定しており“使いやすい培養液”という印象を持っています。

このように、各メーカー、各培養液によって強みとなるポイントが違うため、施設によってどのメーカーのどの培養液を使っているかは全く異なります。

GM-CSFとは?

このような培養液のうちの一つに、CooperSurgical社から発売されているGM-CSF含有培養液というリコンビナントヒトGM-CSFが含有された培養液があります。

GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)とは、簡単に説明をすると受精卵側と子宮側のコミュニケーションに重要な『サイトカイン』の一種です。

通常は、母体内において自然に発現されており、受精卵がお腹の中で成長を進めていく過程でこのサイトカインと呼ばれる因子の発現量が増加していきます。サイトカインは、受精卵の成長を促進するとともに、子宮内膜が着床に向けて環境を整えていきます。

サイトカインによる受精卵側ならびに子宮側のコミュニケーションは、妊娠を成立させるために非常に重要な要素の一つであり、2009年にHuman Reproductionに発表された研究結果によると、受精卵側あるいは子宮側のどちらかにその能力が欠けてしまうと、受精率や胚発生率の低下といった受精卵の発育不良が引き起こされることが示唆されている他、2013年にFertility and Sterilityに発表された研究結果によると、子宮側では、着床の失敗(着床不全)、および流産(特に初期流産)が起こりやすくなることが示されています。

また、2018年にJournal of Reproductive Immunologyに発表された研究結果では、サイトカインによる胎盤の形成(子宮環境を着床に向けて整える)が、胎児の成長や、出生後の健康に影響を与える可能性について示唆しています。

「培養液」で着床をサポートする

GM-CSF含有培養液は、サイトカインを添加することによって、より体内の環境に近づけることで、受精卵の発育にかかるストレスを軽減し、子宮内膜の受容力を高め、受精卵と子宮とのコミュニケーションを促進するという非常に画期的な培養液になります。

特に、なかなか着床に至らない方や初期流産、あるいは原因不明の流産を繰り返す患者様に対しては効果的という傾向が見られています。

このような効果が期待されている一方で、GM-CSF含有培養液は他の培養液と比較して高価であることや使用期限も短いことなどから、この培養液の使用をオプションとしている施設が多く、導入できているクリニックもまだまだ限られています。

GM-CSF含有培養液を検討してみたいという方は、各クリニックのホームページなどから、オプションとしての選択肢を持っているか調べてみてください。

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