年上部下とは
最近では、様々な状況で、自分より年上の社員を部下に持つことも多くなってきました。その状況での付き合いにくさを訴える声もたくさん聞かれます。ここでは、年下上司の視点で、年上部下との付き合い方についてご紹介します。
年上部下が起きる背景
まずなぜ年下上司が増えてきたのでしょうか。大きく理由は3つあります。
① 実力主義あるいは結果主義の採用。
最近の日本企業では、実力主義、あるいは結果主義の人事というものが採用されるようになっています。そのため従来の人事のように、年功序列で、年次が上、つまり年上の人が昇進するということではなくなってきています。このため、年齢に関わらず、実力がある、あるいは結果を残した人が昇進し、年上部下を持つことが起きています
② 転職
また、転職も増加しています。転職によって新しい企業に移った場合、その企業の年次と違うレベルで入ることになるので、年上部下を持つケースもあるでしょう。また、年上部下が転職で入ってくることもあるでしょう。
③ 人口ピラミッド
日本の人口は、2023年で70代前半と、45-54歳が一番多く、その後若くなるほど少なくなるピラミッドになっています。ですので、45-54歳の方々は、組織の長のポストにつくことができない可能性が増え、そこに実力主義等によって、年下上司が来ることが起きるケースが多くなります。
年上部下の問題点とは
では、年上部下を持った場合に起こりうる問題点にはどんな物があるでしょうか。
① 年上部下のモチベーションが下がる
年下上司に使われること、自分が昇進できなかったこと、等によって年上部下の仕事に対するモチベーションが下がり、以前ほどの働きが見られなくなってしまうことです。
② 年下上司が十分な指示・指摘を出せない
年下上司が年上部下のことを気にしすぎてしまい、業務上必要な指示やアドバイスであるにも関わらず、出すことができなくなってしまうことです。このことにより、その部署の成績が落ち、目標などが達成できなくなる危険性があります。
③ その他の部下が取り扱いの違いに不満を持つ
年上部下以外の部下が、年下上司の部下の扱い方に違いを感じ、差別されている。あるいは年上部下が優遇されているという風に感じる可能性があります。そうすると、その扱いの違いに不満をもち、彼らの仕事に対するモラルが低下するかもしれません。
④ 年上部下が他の人を巻き込み部署が崩壊する
さらに状況が悪化すると、年上部下が周りの社員を巻き込み、年下上司に対する反感などをあおり、他の人々も年上部下の方についてしまい、部署内が崩壊状態になることもありえます。
年上部下の組織での利点
当然、年上部下を持つことの利点もあります。それを挙げていきましょう。
① 年上部下の経験の活用
まず、年上部下は年下上司より経験があります。年上部下が転職入社だったとしても、社会人経験は長いでしょうし、人生経験は間違いなく長いです。長いなりの経験を年下上司は持っているはずです。それを活用することができます。
② 年上部下の社内ネットワークの活用
年上部下が年下上司より長く社内にいた場合、その人は社内ネットワークを持っています。そのネットワークを活用することは、業務上かなり有利になるはずです。特に転職して来た年下上司の場合は、そのネットワークはかなり頼りになるもののはずです。周囲もその点を配慮して、年上部下を年下上司の元に置いたのかもしれません。
③ 年下上司へのアドバイス
部下から上司へのアドバイスはしにくいものです。しかし、年上部下であれば、アドバイスは比較的しやすくなります。その経験や技術に基づくアドバイスは、的確に活用すれば組織の力になるはずです。
年上部下と理想的な職場を作るためのステップ
では、問題点の発生を防いで、利点を発揮させるためにはどうすればいいでしょうか。
① 年上部下に対し敬意を示す
まずは、年下上司に対し、敬意を持っていることを示すことがスタートポイントです。
② 敬語を使う
たとえ部下であっても敬語を使いましょう。今は、部下だからと言って昔ほど横柄な態度はとっていないとは思いますが、丁寧なだけではなく敬語にしましょう。年上部下にだけ敬語を使うことに抵抗があるなら、部下全員に対して敬語でもかまわないです。他の部下に対しては、かえってそのほうが差別感なく受け取られる可能性があります。
③ 意見を聞く ただし意見を求めすぎない、責任を負わせない
相手の意見を聞くことは、相手に敬意を持っていることを示すことになります。ですから、年上部下に対して積極的に意見を聞くことは、良い関係を築くことにつながります。ただし、あまり頻繁に聞きすぎることは、年上部下が自分の立場を誤解する可能性がありますので気をつけましょう。また、その意見に基づいて何かを実施した時に、責任を追わせるようなことは、関係悪化につながりますのでやめましょう。
④ 年上部下との1対1(One On One)のミーティングを定期的に持つ
コミュニケーションを良くしておくことは非常に重要です。1対1のミーティングを定期的に持つようにしましょう。お互いが、周りを気にして言いにくいことが話せる機会です。お互いが、普段は周りの社員を気にして言えないことを話すことができます。いわゆる腹を割った話をすることが重要です。
⑤ 周りに影響を与えない
年上部下とした話の内容が、他の部下に知られることは、時に良くない影響を産みます。それを未然に防ぐためにも、1対1で話すことに意味があります。ただし、話した内容で問題のない部分については適宜公表して、差別感が発生しないように注意する必要もあります。
⑥ 年上部下に対して指示すべきところはきちんと指示する
敬意を表することと、言いなりになることは違います。年上部下が自分の立場を誤解しないためにも、また部署として業務を的確に遂行するためにも、必要なときは、年上部下に対しても指示をして、その指示に従わせることが必要です。年上部下に不満が残りそうな場合には、1対1ミーティングなどでフォローしてください。
⑦ 採用すべきところは素直に採用する
一方、年上部下の言う事のほうが正しいと思われる場合には、立場を気にせず素直に採用しましょう。その際は、今度は他の部下に対し、なぜそれを採用したのかを丁寧に説明しましょう。それが公平感を醸成することにつながります。
年下上司と付き合う上で一番重要なこと
そして、すべてに共通する重要なことは、年下上司とビジョンを共有することです。
① ビジョンを共有すること
何が正しい、どちらのほうがいい、などの判断をする基準はビジョンあるいは価値観です。部署にとって何が一番大事なことか、という基準です。これを常に確認し、共有しておくことが重要です。そうすれば、自分の手柄のために、自分の出世のために、という一番持たれたくない、また、持ちたくない誤解を防ぐことができます。
まとめ
年上部下とうまくやっていくことは、難しいことではありません。年上部下も一人の人間です。まず、一人の人間として敬意を持って接するようにしましょう。うまく関係を築けば、年上部下は組織にとって強力な人材となってくれるはずです。ぜひここに書いたことを参考にしていただければと思います。