<取材>健康経営とキャリア支援の両軸で女性活躍を推進 ワクワクしながら誰もが働きやすい風土づくりのポイントとは −パーソルワークスデザイン株式会社
認定取得への取り組みシリーズ

今回は、BPO、ヘルプデスク、コールセンターなどのアウトソーシングを手掛ける「パーソルワークスデザイン株式会社」を取材しました。

女性活躍推進への取り組みや風土づくりのポイントについて、人事部 人事管理課の課長の児玉さん、健康経営推進リーダーの小田さん、人材開発課で女性活躍、キャリア開発・育成を担当する 曽根さんにお話を伺いました。

(写真は左から曽根さん、児玉さん、小田さん)

社内の有志メンバーの提案からスタートした女性活躍推進への取り組み

― まずはそれぞれがご担当されている業務についてお聞かせください

児玉さん:人事管理課では、人事・労務周りの業務に加えて、健康経営を大きな取り組みのひとつとして行っています。そのほか、人事施策の企画の一環として、女性の活躍推進やエンゲージメントの向上のためにどのような取り組みを行うかについて、枠組みや施策の企画・検討を行っています。

小田さん:私は健康経営が担当となります。健康経営全般の取り組みを担当していて、その中でも女性に関するセミナーの計画、実施などの取り組みを推進しています。

曽根さん:人材開発課で、キャリア開発と育成を中心とする人材開発領域を担当しています。 特に、女性の活躍推進やワークライフバランスの実現に向けて、各社員のキャリアパスの紐付け方や制度の浸透を促進するための広報や取り組みの企画や実施を中心に携わっています。

(すべて取材時2024年3月時点の情報)

― 昨年(2023年)に「えるぼし認定」の最高位の3つ星を取得されたということで、女性活躍推進への取り組みとして、特に注力されている点や、特徴的な部分があればお聞かせください

児玉さん:女性活躍推進の取り組みについては、「健康経営」としての取り組みと「キャリア」の二つの軸があります。

健康経営に関する取り組みでは、女性特有の健康課題を支援する施策を実施しました。特に、”セルフケア”をテーマに、女性が自身の健康や、女性特有の健康課題について、意識を高め、セルフケアできるように取り組みを進めています。

具体的には、健康診断でオプションとなっている婦人科検診の費用を補助するなど、健康保持のための支援の取り組みです。ほかには、女性特有の健康課題に関する研修を社内で実施しています。全社員対象、女性対象、管理職対象という形で、さまざまな層に向けた研修を行い、理解の促進につなげています。

曽根さん:キャリアに関しては、全社員に向けてキャリアデザイン研修を実施するなど、キャリア支援の機会を設けています。

その中で特に女性からは、プライベートと仕事の両立に関してや、管理職になるために必要な経験についてなどを個別に知りたいというニーズがあるため、「女性管理職」や「両立支援」というトピックを立てて、ノウハウの共有や情報交換ができる場を提供しています。制度を使用する際の疑問や不安を取り除くことで、キャリアを考える際に弊害となる要素をできるだけ取り除く形で取り組みを進めています。

そのほかには、キャリア相談窓口を設け、キャリアコンサルタント資格を保有している社内のキャリア相談担当者が、キャリア形成やキャリア実現の相談サポートを行っています。

児玉さん:ちなみに、「えるぼし」の認定取得は、「エルスター委員会」という、社内の有志の組織から、私たち人事に向けて働きかけがあり、取得に向けて動き出したという経緯があります。

「エルスター」という名前は、「えるぼし」に由来しています。
社内の有志メンバーが集まり、女性が働きやすく、活躍しやすい環境を作るための話し合いや取り組みが、人事部とは無関係の場所でスタートしたという経緯です。

自然発生的に社員主体で女性が活躍できる組織づくりを考える委員会が立ち上がったことは、特徴的なのかなと思っています。そのメンバーには男性も含まれ、育児休暇や育児参加などもテーマとして話し合われています。最近では、女性の生理痛を体験してみようといったテーマで取り組みが進んでいます。

― 人事として女性活躍に関するお取り組みもさまざまに行われていますが、特にエルスター委員会という有志の組織からの働きかけが認定取得のきっかけになったという部分はほかにはない特徴的なお話だなと思いながら伺っていました

児玉さん:そうですね。当社は、企業の健康経営を支援するヘルスケアサービスや、採用代行など人事領域のサポートを行うHRソリューションサービスなどを提供しています。この委員会も、そういった部門の中の取り組みのひとつとして始まりました。

女性の活躍を支える、働きやすい環境を作ることを考えた際、女性に関する問題を理解し、議論・検討することが必要です。働きやすい組織をつくるには、というテーマの話し合いの中から生まれたアイデアのひとつだと感じています。

― 人事として取り組みを行う中で、制度や取り組みの周知や浸透をさせる工夫は何かございますか

小田さん:健康に関する動画を配信したので見てください、と言ってもなかなか見てはもらえないなど、健康経営の取り組みに関しては、まだ浸透しているとは言えない状況ではあります。

ただ発信するだけではなく、ツールを使って実際に体を動かす機会をつくったり、レシピを配信してみたりなど、こまめな情報発信を行って、健康に対する意識を少しでも高めてもらうように働きかけています。

先ほど、女性の健康診断の補助の話がありましたが、料金を補助したからといって受診が大幅に増えるわけではないですし、なぜ女性だけ?という声があがることも懸念されました。制度としてあるというだけではなく、なぜこの制度や仕組みが必要なのかなど、背景や意味を伝えるよう心がけています。

ミッションやバリューを自分ごと化する「MVVディスカッション」

― パートタイム勤務の方を含めると幅広い年齢層の方がいらっしゃると伺いました。担当する業務もそれぞれ異なる中で、同じ意識を持つための風土やカルチャーをつくっていくためのコミュニケーションの工夫があればお聞かせください

児玉さん:風土や文化づくりは大事にしています。

私たちは「ワクワクワークのあふれる社会へ」というミッションを掲げています。そのミッションに共感し、自分の仕事に落とし込み、実践することを共通語としてコミュニケーションを取っています。年齢や性別が異なっても、ミッションは共通で変わりません。全員が共通の理解を持って行動するという点を大事にしています。

共通の理解や認識を持つための取り組みとして、「MVVディスカッション」を年に1回実施しています。このディスカッションは、各組織・チームのメンバーが集まり、課長やマネージャーがファシリテーションを行います。「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」について、ディスカッションを行い、理解を深めるための場です。

会社のミッションに対して、自分たちの部署や課のミッションをどのように解釈するか、そしてそのミッションを個々の仕事にどのように落とし込むかを考えます。それぞれが考えたアイデアを共有し、どんな行動がミッションにつながるかをシェアし合うという進め方です。 このディスカッションでは、特に各自が自身の仕事がどのように会社のミッションやバリューにつながっているかを考える部分を重視しています。

曽根さん:会社としての共通言語であるMVVの認識は浸透していましたが、それを具体的な行動に落とし込む部分が重要だと考えています。

MVVを知っているだけの状態ではなく、現場レベルでそれぞれが自分の言葉で表現し、実際に行動することで、より身近で自分ごと化できると考えています。
また、ディスカッションを通じてお互いの理解が深まり、足りていない点が明らかになることも多いため、現場での理解が一層深まり、浸透につながっていると感じています。

― 今の自分の仕事や、自分がいるチームが、どのように会社のミッション、バリューに貢献できているのかを改めて確認して、言語化することで、自分ごと化が進むとても良い取り組みだなと思って伺っていました

曽根さん:普段仕事をする中で、ミッションやバリューについて話す機会は、あえて作らないとなかったりするので、機会提供という位置づけもあります。

キャリア支援を中心にさらなる女性活躍推進を目指して

―今後注力していきたい部分や展望をお伺いしたいのですが、いかがでしょうか

児玉さん:女性の活躍について話すと、女性活躍の推進にはまだまだ成長の余地があると思います。

健康支援や家庭と仕事の両立を支援する制度は整備され、充実してきています。しかし、女性のキャリアサポートについては、まだ取り組むべきこと、できることが多くあると感じています。

女性の活躍を支援することは、単に管理職になることや長期間働くことだけではなく、職場で成長し、自身のキャリアを描き、追求できるような環境と風土づくりを目指すことだと考えています。

曽根さん:そうですね。今児玉さんが言った通り、キャリア支援は、昨年度から本格的に実施をスタートしたばかりで、まだ明確な結果や成果という部分は見えてきていません。キャリアの施策は、時間軸としては長期的に見ていく必要があって、今は、ようやく「キャリア」というものへアンテナが立つような状態になった段階かなと思っています。

特に女性のキャリアは、ライフステージの中で多くの分岐点に直面することがよくあります。そのため、自分らしく自分のキャリアを形成できるように支援することや、自立してキャリアを進められるようなマップを提供することが重要です。私たちは、それらの資源を用意し、それを自身の価値観に基づいて選択できるような支援を提供したいと考えています。

女性の管理職比率についても、まだ改善が必要な点があります。そのため、早期にチャンスや機会を提供し、経験を積んでもらえるようにすることが重要です。育成やキャリアの推進だけでなく、他の人事施策も組み合わせて、しっかりとアプローチしていくことが大切だと考えています。

当社の人事部は、横連携や、それぞれのチームの関係性も強いという部分が武器になると思っています。施策としてつながりを持たせながら、今後も、女性活躍推進や働きやすい環境づくりを推進していきたいと思っています。

― 曽根さんは現在管理職としてご活躍をされていますが、管理職になる際に意識の変化などはありましたか

曽根さん:私の場合は、実は積極的に管理職になりたいというタイプではなかったのですが、周囲からの言葉や声がけが原動力になりました。自分が取り組む意味や期待されていることを周囲から聞きながら、自分自身の中で組織の未来がイメージできた時にはじめて、自分の先のキャリアが見えたと感じました。

特に同僚や部下からの声は原動力になったので、そういった後押しがあるとすごく手を挙げやすいかもしれないと思っています。これからキャリアを考えていく人たちにも、いろいろな段階で、キャリアへのアンテナが立つよう声かけや働きかけができる機会をつくっていきたいと考えています。

―健康経営とキャリア支援の両軸から女性活躍を後押ししながら、ミッションやバリューに基づいた風土づくり、働きやすい環境づくりへの取り組みを伺うことができました。本日はありがとうございました


■ 会社情報

会社名パーソルワークスデザイン株式会社
所在地東京都豊島区
事業内容BPOソリューション・HRソリューション・ITサポート/ヘルプデスク・
コールセンター・健康支援・地域活性化支援・採用代行
設立1971年 1月
公式ページhttps://www.persol-wd.co.jp/