忙しく働く世代のための睡眠の話― 循環器看護師として、どうしても伝えたいこと ―

夜遅く帰宅し、やっと一息ついて携帯電話を手に取る。
「今日もよく頑張った」と思いながら、気づけば日付が変わっている。
そして翌朝、重たい身体を引きずるように起きる。。。

これは特別な誰かの話ではなく、今を忙しく生きる私たち世代の日常です。

忙しく働く世代にとって、睡眠は「削れる時間」になりがちです。

けれど循環器病棟で働く私は、高血圧、心筋梗塞、心不全、不整脈などの多くの患者さんを見ながら何度も思ってきました。睡眠を削った代償は、ある日突然、血管に現れる。

今日は、忙しい世代のあなたにこそ知ってほしい、睡眠の話をさせて頂きたいと思います。

目次

睡眠は“休憩”ではなく“血管の修復時間”

睡眠中、私たちの身体では何が起きているのでしょうか。

・血圧が下がる
・心拍数が安定する
・自律神経が整う
・脳の老廃物が除去される

睡眠は単なる休息ではありません。脳の老廃物を除去し、血圧を下げ、血管を修復し、自律神経を整える夜間のメンテナンス時間です。日本循環器学会や日本高血圧学会の報告でも、慢性的な睡眠不足は高血圧や心血管疾患のリスク因子であることが示されています。

睡眠中、とくにノンレム睡眠では血圧は10~20%低下します。これを夜間ディッピングといいます。このディッピングが起きないノンディッパー型は、脳卒中や心疾患のリスクが高いことが知られています。つまり、眠れていない夜は、血管が休めていない夜でもあるのです。

睡眠時間は長いほど良いの?

米国睡眠医学会(AASM)や厚生労働省の指針では、成人の適正睡眠時間は7時間前後とされています。興味深いのは、6時間未満でも、9時間以上でも、心血管リスクが上昇するU字型の関係が報告されていることです。

大切なのは時間の長さではなく

・朝すっきり起きられる
・日中に強い眠気がない
・集中力が保てる

という日中の状態です。

忙しい世代が陥りやすい睡眠の落とし穴

① 夜のスマホ

ブルーライトはメラトニン分泌を抑制し、入眠を遅らせます。

② 交感神経の過活動

仕事の緊張が抜けないまま布団に入ると、身体は戦闘モードのままです。

③ 週末の寝だめ

体内時計を乱し、月曜の朝をさらに辛くします。

④ 隠れた睡眠時無呼吸症候群

いびきや日中の強い眠気がある場合は要注意です。日本では成人男性の約3~7%、女性の約2~5%に中等度以上が存在すると報告されています。

良い睡眠と悪い睡眠

良い睡眠

・30分以内に入眠できる
・中途覚醒が少ない
・熟眠感がある
・日中眠くない

悪い睡眠

・1時間以上眠れない
・夜中に何度も目が覚める
・早朝覚醒
・朝からだるい

不眠症は日本人の約20%が経験すると言われています。

実は多い、気づいていない睡眠障害

「私は眠れている」と思っている方の中に、睡眠障害が隠れていることがあります。

① 不眠症(最も多い)

・布団に入っても考え事が止まらない
・夜中に何度も目が覚める
・朝から疲れている

週3回以上が3か月続く場合、慢性不眠の可能性があります。

② 睡眠時無呼吸症候群(とても多い)

・大きないびき
・日中の強い眠気
・朝の頭痛
・血圧がなかなか下がらない

日本では中等度以上が男性3〜7%、女性2〜5%と報告されています。ご本人は眠れていると感じていることが多いのが特徴です。しかし、実際は夜間に何度も呼吸が止まり、血圧が急上昇しています。高血圧が改善しにくい方は、一度疑ってみる価値があります。

③ 概日リズム睡眠障害(体内時計のずれ)

・平日はつらい
・休日は昼まで寝ている
・月曜の朝が地獄のようにしんどい

これは夜型体質ではなく、体内時計の乱れかもしれません。

④ むずむず脚症候群

・横になると脚がむずむずする
・動かすと楽になる
・夕方から悪化する

冷えだと思い込んでいる方も少なくありません。

⑤ 過眠症

・7時間以上寝ても眠い
・会議中に耐えられない眠気

背景に無呼吸が隠れていることもあります。

睡眠が悪いと起こること

慢性的な睡眠不足は、

・高血圧
・糖尿病
・肥満
・うつ症状
・認知機能低下
・免疫低下

と関連します。

睡眠不足は食欲ホルモン(グレリン)を増やし、満腹ホルモン(レプチン)を減少させることも分かっています。

「最近太りやすい」は、睡眠のサインかもしれません。

睡眠薬は悪いもの?

誤解されがちですが、適切に使えば有効です。

現在主流なのは
オレキシン受容体拮抗薬(例:デエビゴ、ベルソムラ)
メラトニン受容体作動薬(ロゼレム)

依存性は従来薬より低いとされています。

ただし根本治療は睡眠習慣の改善(睡眠衛生指導)です。

忙しくても今日からできること

  1. 起床時間を固定する
  2. 朝日を浴びる
  3. 就寝90分前にぬるめ入浴
  4. 夜は間接照明へ
  5. カフェインは夕方以降控える
  6. 寝床で考え事をしない
  7. 夜のスマホ時間を30分短くする。

完璧を目指す必要はありません。まずは「起きる時間を守ること」から初めてみましょう。

最後に

忙しく働くあなたへ。

睡眠は怠けではありません。仕事や家庭で多くの責任やプレッシャーなどを背負っているみなさん。あなたが健康でいることは、家族や職場にとっても大きな価値です。

今夜、あと30分だけ早くスマホを置いてみてください。その30分が、10年後の血管を守るかもしれません。

眠ることは、自分を守ること。

どうか今日から、睡眠を「削る時間」ではなく「守る時間」にしてください。

今日からできる小さな1歩を始める。それだけで、血管は静かに守られ始めます。

参考文献

  1. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針」
    https://www.mhlw.go.jp
  2. 日本循環器学会「循環器病予防ガイドライン」
    https://www.j-circ.or.jp
  3. 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」
    https://www.jpnsh.jp
  4. American Academy of Sleep Medicine. Recommended amount of sleep for adults.
    https://aasm.org
  5. 日本睡眠学会
    https://jssr.jp
  6. Spiegel K et al. Sleep loss and metabolic function. Lancet. 1999.

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この記事を書いた人

8年間、循環器専門病院や専門病棟にて循環器内科・外科・集中治療室勤務しておりました。皆様に必要な情報を分かりやすくお届けできるようにしていきたいです。