痛み止めは効かなくなるってホント?薬剤師が教える「耐性」の真実と正しい飲み方

頭痛や生理痛のときに飲む「痛み止め」。病院から処方されるだけでなく、ドラッグストアなどでも手軽に購入ができますね。
皆さんは痛み止めについて、どんなイメージをお持ちですか?
・「痛み止めは飲みすぎると効かなくなるのではないか」「耐性が気になる」
・「痛みのどのタイミングで飲めばいいのかわからない」
・「飲むと胃が荒れやすいと聞いて体への負担が気になる」
このような疑問をお持ちの方は多くいらっしゃると思います。

今回はそんな痛み止めの正しい飲み方・使い分け、そしてよくある疑問について解説していきます!

痛み止めの「耐性」って本当?

薬の耐性とは「これまで効いていた薬の効果が、使用を続けるうちに薄れたり、全く現れなくなったりすること」を指します。冒頭でも触れましたが、痛み止めは飲み続けると効かなくなってしまうのでしょうか?
通常、市販で購入できるお薬において、適切な量を守り、頭痛や生理痛など短期間の痛みに対して飲む程度では耐性がつくことはありません。
※一部例外として、がん治療などに使われるようなごく一部の強い痛み止め(医療用麻薬など)は耐性が生じることがありますが、これらは一般の市販薬とは異なり、医師の厳重な管理のもと痛みや副作用の状態を見て使用されます。


では、なぜ「前に飲んでいたお薬が効かなくなってしまった」と感じることがあるのでしょうか?
主に以下のような理由が考えられます。

・飲むタイミングが適切でない。
・誤った用法用量で飲んでいたり、長期間にわたって飲み続けている。
・痛み止めが自身の体質・症状に合っていない


そこで、より効果的で安全な痛み止めの飲み方・選び方について解説していきます。

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痛み止めの種類と選び方

一般的に市販で購入ができるような痛み止めは次の種類に分けられます。

・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬): ロキソニン、イブプロフェン、アスピリンなど。痛み・炎症を起こす物質(プロスタグランジン)の生成を抑えることで炎症を抑え、痛みを和らげる。・アセトアミノフェン: カロナール、タイレノールなどの商品名で販売される。主に脳にある体温調節や中枢神経に作用して熱を下げ、痛みを抑える。NSAIDsと比べて、作用はマイルドで、子どもにも使いやすく、胃腸への負担が少ない。

使い分けのポイント

それぞれの効き方の特徴から、炎症を伴う痛み(生理痛、関節痛、のどの痛みなど)がある方はNSAIDs、発熱や軽い頭痛、胃腸が弱い方にはアセトアミノフェンが推奨されます。

市販薬と処方薬の違い

市販薬は、さまざまな症状に幅広く効果が出るよう、複数の有効成分が組み合わされて配合されていることが多いです。例えば、総合の風邪薬には、熱を下げる成分、鼻水を抑える成分、咳を鎮める成分などが配合されています。一方、病院で処方される薬は医師が患者さん一人ひとりの症状に合わせて、必要な有効成分を単独で処方したり、複数の薬を組み合わせて処方します。例えば、風邪の場合でも、発熱があれば解熱剤、咳がひどければ咳止め、といったように、必要な薬だけを処方することが可能です。
自分自身で健康管理をし、軽度な身体の不調は自分で手当てする“セルフメディケーション”の考え方が推進されている中、市販薬で体調を整えることも選択肢の一つです。

ただ、以下のような症状や体質のある方は病院で診察を受けた上で適切なお薬を処方してもらうようにしましょう。
・市販薬を数日使用しても痛みが改善しない場合。
・痛みが悪化する場合。
・痛みの原因が不明な場合や、他の症状が出ている場合(高熱、意識障害、しびれなど)。
・持病がある方、妊婦・授乳中の方。

NSAIDsは特に腎疾患のある方、喘息のある方、妊婦さんには注意が必要、あるいは飲むことができない場合がありますので、自己判断せずに適切なお薬を処方してもらうことが大切です。

いつ飲めばいいの?

痛み止めは痛みを感じたら我慢をせず、早めに飲んでいただくことがポイントです。
「そろそろ痛くなりそう…」といった痛みが出始めたタイミングで飲むのがよいでしょう。
これには、痛みのメカニズムが関係しています。
痛みは体の中の「プロスタグランジン」という物質が作られることで起こります。プロスタグランジンの生成を早めに抑えることで、効果的に痛みを緩和することができます。痛みがすでに強くなってしまっているタイミングでは、薬の効果が出にくくなることがあるのです。
ただ、痛みが強いからといって、通常の指示量より多く飲むことや、間隔空けずに飲むのは避けましょう。期待される効果よりも副作用の危険性が上回ってしまう可能性があるためです。

「薬物乱用頭痛」って?

頻繁に痛み止めを飲むことは、体に思わぬ影響を及ぼすことがあります。
例えば、痛み止めの飲みすぎによって逆に頭痛がひどくなる「薬物乱用頭痛」のリスク等が挙げられます。薬物乱用頭痛は痛みが取れづらくなることから、予防的に追加して飲んでしまいさらに症状悪化の循環に陥ってしまう傾向があります。
基準として月に10~15日以上痛み止めを飲み続けている場合、「薬物乱用頭痛」の可能性も考えられますので、一度使用を中止して医師に早めに相談しましょう。
※薬物乱用頭痛の治療は、原因となっている頭痛薬を徐々に薬を減らす方法と、すぐに薬を中止する方法があります。
必ず決められた用法用量を守って飲むようにし、症状が落ち着いたら飲むのは中止すようにしましょう。

薬の飲み方について

基本的に薬はコップ1杯の水かぬるま湯で飲みましょう。薬は、中性である水で飲むことを前提につくられているためです。また、水の量が少ないと消化器官に薬が付着してしまうこともあるので、必ず十分な量で飲むようにしましょう。
特にロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は特に人によって胃が荒れやすくなることもありますので、空腹時は避けて食後のタイミングに飲むようにしましょう。もしお食事が難しい場合は、気持ち多めの水分と一緒に飲むことで胃への負担のリスクを減らすこともできます。
また、市販薬では胃薬が一緒に配合された痛み止めも販売されているので、胃腸が荒れやすい方・ご不安がある方は体質に合わせたものを選んでいただくのもよいでしょう。

さいごに

痛み止めは正しく使えば、日々を過ごしやすくすることに有効なお薬です。そのためにはご自身の体調や体質に合わせて、適切なお薬を選ぶことが非常に重要です。どのお薬を選べばよいかわからないときは医師や薬剤師に気軽にご相談くださいね。
痛みが出始めたら我慢しすぎずに飲み、症状が落ち着いたら必要以上に飲み続けないことを意識していきましょう。痛み止めを上手に活用し、体調を正しくケアしていきましょう!

<参考>

厚生労働省ホームページ「市販の解熱鎮痛薬の選び方」

山梨県薬剤師会 お薬Q&A

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