令和5年度なでしこ銘柄選定企業5社の取組み

導入

あなたは「なでしこ銘柄」という言葉を聞いたことがありますか?

なでしこ銘柄は、平成24年度(2012年)から経済産業省が東京証券取引所とともに行っている取組みです。

女性活躍推進」に優れた上場企業だと選ばれた魅力ある企業が、なでしこ銘柄になります。

いったい、どのようなものなのでしょうか?

今回は「なでしこ銘柄」の概要、令和5年度(2024年)でリニューアルされた点、企業の実例について徹底解説します。
出典:女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」

なでしこ銘柄とは、何か?

まずは「なでしこ銘柄」がどのようなものかについての概要を、説明します。

まずは「なでしこ銘柄」がどのようなものかについての概要を、説明します。

「なでしこ銘柄」は女性活躍推進に優れた魅力ある上場企業を指します。

これは「中長期の企業価値向上」を重視する投資家へ「なでしこ銘柄」にあたる企業を紹介し、投資をしていただくことが目的です。

投資家が女性活躍推進に優れた企業へ投資をすることで、女性の活躍できる各企業が取組みを加速・促進化することを、経済産業省は目指しています。

企業が「なでしこ銘柄」になるには、「女性活躍度調査」に回答する必要があり、業種ごとによって選定されます。

昨年、令和4年度(2023年)から、新たな評価ポイントが加えられました。

かつては企業の取組みの量がポイントとなっていましたが、それだけでなく

  • 経営戦略の中で女性の活躍を位置づけられている
  • 経営層のコミットメント(責任)のもとで実効性のある取組みが行われている
  • 実効性のある取組みの成果を企業価値の工場へつなげられている

変更点は2つ

  • 共働き・子育て支援(男女問わず両立支援)に関する項目を評価対象として増やした
  • Next なでしこ 共働き・共育て支援」企業の選定する

です。

どのように変わったのか詳しく説明します。

共働き・共育て支援(男女問わず両立支援)に関する項目を評価対象とし、Next なでしこ 共働き・共育て支援に選定

経済産業省は、企業の価値を向上することに女性の活躍が必須と考えています。

そのためには

  • 採用から社員登用までの一貫したキャリア形成の支援
  • 男女問わず共働き・共育てが可能となる両立支援

の2つを同時並行で進めることが必要です。

女性の多くが家事・出産・育児といったライフイベントと仕事の両立が難しく、企業で活躍しにくい状況に陥りやすいです。

また男性が、積極的にライフイベントへ参加できる状況を作ることも重要です。

男女問わず希望者が増加し、活用しやすい制度への設計し直しにより、令和5年度から「共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援」をなでしこ銘柄の評価対象に加えました。

その中で、共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援に関する取組みが優れた上場企業を「Next なでしこ 共働き・共育て支援企業」に選びました。

出典:令和5年度「なでしこ銘柄」レポート女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」

なでしこ銘柄とに選ばれた企業実例

令和5年度に「なでしこ銘柄」に選ばれた企業は27社です。

また「Next なでしこ 共働き・共育て支援企業」に選ばれた企業は、16です。

計43社の中からピックアップした5社について、紹介します。

今回、ご紹介する企業は

  1. アサヒグループホールディングス株式会社
  2. 株式会社LIXIL
  3. 株式会社コーセー
  4. TOPPAN株式会社
  5. 大東建託株式会社

です。

  • 業種
  • 証券コード
  • 過去の選定実績回数(※1なでしこ銘柄のみ、※2準なでしこ銘柄含む)
  • 取組み内容

を登用しています。

2022年9月の人事異動・組織改定で、女性経営層の比率を13%から35%へとアップです。

女性管理職が見込める30〜40歳の女性社員約180人に、リーダーシップ開発/キャリア研修を実施しました。

結果、経営層の女性比率が国内5社で約10%になったのです。

意思決定の場に女性を増員し、多様な意見を取り入れたことによる企業価値の向上が得られました。

女性の新規顧客層の獲得へとつながりました。

2022年10月に男性育児休業の独自システム「産後パパ育休制度」を導入した結果、半年間で取得率が83%へと上昇しています。

今後アサヒグループホールディングス株式会社は、

  • 2030年までに女性経営層の目標値を40%とする
  • 新卒採用者の女性比率を50%に上昇
  • 女性活躍のために男性育休取得率100%

を目指しています。

出典:令和5年度「なでしこ銘柄」レポート令和5年度「なでしこ銘柄」選定企業事例集

株式会社LIXIL

  • 業種:建設・資材
  • 証券コード:5938
  • 過去の選定実績回数:8回(うち準なでしこ銘柄は1回)
  • 内容:

女性経営層/管理職の多様化のため「NEXT プログラム」という女性従業員の育成を行っています。

将来有望な女性に対してOJT中心の教育を行い、進捗状況をモニタリングしています。

後継者候補の女性は27%の比率です。

2023年3月には女性新任管理職向けに、自己認識と自分らしいリーダーシップ像を描く研修が実施されました。

管理職候補となる係長職の女性比率が直近5年で4.5%から12.3%へと増加しました。

小さい子どものいる女性のキャリア採用を積極的に進めており、女性が最初から自分らしく働ける点が特徴です。

また

  • 多様な人材の活用
  • 在宅勤務
  • コアタイムのない「スーパーフレックス制度」
  • 出産・育児のサポート制度

を拡充させています。

  • ジェンダー平等
  • 育児・介護
  • 男性育休の認識・理解の促進
  • 国際女性デーのイベント

にも力を入れています。

株式会社LIXILは、日本国内の女性正社員比率が約25%でした。

女性管理職候補を拡大するために2014年から新卒採用の女性比率を見直し、30%以上にアップすることができました。

今後は組織の多様化のために目標値を50%以上にしています。

出典:令和5年度「なでしこ銘柄」レポート令和5年度「なでしこ銘柄」選定企業事例集

株式会社コーセー

  • 業種:素材・化学
  • 証券コード:4922
  • 過去の選定実績回数:2回(うち準なでしこ銘柄は1回)
  • 内容:

1946年の創業以来、女性を始めとする生活者が「自分らしく自信を持って生きる社会」に貢献するために新たな美容価値を届けてきた企業です。

1985年にはグループで初めての女性取締役が就任し、現在の社長も女性です。

性別にとらわれず全社員が自分らしさを発揮することを目標としています。

2023年度で取締役の女性比率は41.7%、役員全体では37.5%です。

2000年代初頭より総合職入社の女性比率が増加し、現在は20代女性の比率が5割を超えています。

女性が社会で活躍するために男性の育児休業取得率を注視しています。

現状及び今後の目標は

  • 女性の育児休業取得率100%
  • 産育休を取得しやすい環境整備
  • 女性育休復帰率

です。

情勢執行役員の部門が起点となって新規ビジネスが発展しました。

女性取締役・女性執行役員による「育児と仕事の両立の経験」などをテーマにしたキャリア構築への社内講演会を実施しています。

その結果、講演会終了後の受講者アンケートで女性社員の8割が「働く意欲がみなぎった」と回答していました。

女性活躍推進のために登用率のアップだけでなく

  • 社員が「活躍したい」と思える環境整備
  • マインドセット
  • スキル向上支援

と考えています。

ライフイベントの発生でキャリアの挫折が起こらない施策を提供しています。

  • 産育休復帰のキャリアコンサルティング制度
  • 「パパママラウンジ」の開設による子育て社員の情報交換・悩みの共有
  • 「コーセーイクパパサポート」制度という独自の男性育児休業取得支援
  • 不妊治療に関係する有給休暇活用制度
  • 子育て、介護、傷病者に向けた在宅勤務制度

が充実している点が特徴です。

株式会社コーセーでは、女性をリーダー登用(社内外取締役、執行役員)するために

  • マインドセット
  • キャリアプラン形成
  • ライフイベントの不安をなくす

研修やセミナーが実施されています。

それだけでなくライフイベントで登用の機会が亡くなってしまわないよう、公正な人事評価に基づいた登用を実施がされています。

出典:令和5年度「なでしこ銘柄」レポート令和5年度「なでしこ銘柄」選定企業事例集

TOPPAN株式会社

  • 業種:情報通信
  • 証券コード:7911
  • 内容:

新型コロナウイルス流行前の2018年より、働き方改革と勤務制度を改革しました。

短時間勤務を目指すスマートワーク勤務(フレックスタイム)を導入しています。

2019年からテレワークのトライアル、2020年からリモートワークを制度化しました。

2020年にスマートワーク制度(選択的週休3日)を改正して働く場所と時間の制約を取り払い、柔軟な働き方を選択できるようになっています。

2022年に出生時育休の導入の当たって

  • 男性育休職取得促進の課題の洗い出し
  • 施策企画

を話し合い、

  • 事業所ごとの取得目標
  • 制度説明会
  • 収入試算ツール作成

を実施しました。

仕事と育児の両立をサポートする施策を2012年度より展開しています。

「はぐくみプログラム」による育児にあたっている社員の

  • ネットワーク構築
  • ノウハウの共有
  • 課題支援

を行っています。

コロナ禍で一時的に取得が減少した男性の育児休暇取得率は、2022年に72.9%へ回復しました。

取得期間は36.2日と従来の日数を上回っています。

仕事と育児のお悩み相談、両立の工夫といった情報を社員同士で共有する「はぐくみサークルの参加者」は2014年度は2%弱の参加者でした。

2021年度以降は参加者の4割〜5割が男性社員です。

TOPPAN株式会社は今後、

  • 女性リーダー層の増加
  • 役員層の多様性
  • グループ連携によるキャリア層育成の仕組み

を検討していきます。

出典:令和5年度「なでしこ銘柄」レポート女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」
令和5年度「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」選定企業事例集

大東建託株式会社

  • 業種:不動産
  • 証券コード:1878
  • 内容:

福利厚生が充実していて、従業員のワークライフバランスを実現して活躍できるように、柔軟な働き方、キャリア形成が構築できる環境を整備しています。

男性の育児参画を促進し、育児休業取得率100%を目標として2019年から育児休業取得率100%を継続で達成している点が特徴です。

今後の課題は「連続取得日数の確保」です。

ワークライフバランスに合わせて働く「時間」「場所」の柔軟性を高めています。

  • 時間単位で取得できる有給休暇
  • 分単位の休憩申請
  • 全職種フレックスタイム
  • 在宅勤務などのテレワーク

を導入しました。

「支店健全経営ランキング」の評価制度の導入で支店風土の健全化・改善をはかっています。

評価内容は

  • 営業成績
  • 収益
  • 生産性
  • 人材育成
  • 働きやすい環境づくり

が一例です。

従業員の声をカタチにつなげる「ボトムアップ」を大切にしています。

大東建託株式会社の女性管理職率は

  • 2019年度:3.8%
  • 2023年10月:5.8%

と上昇。

女性のキャリア形成に繋がっている企業です。

出典:令和5年度「なでしこ銘柄」レポート
女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」
令和5年度「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」選定企業事例集

まとめ

今回の記事で、なでしこ銘柄がどのようなものかイメージすることができましたか?

なでしこ銘柄は…

  • 女性活躍促進を推進している企業が選ばれる
  • 投資家の投資を受けることで、各企業は取組みを加速・促進化できる
  • 選定項目に男女問わず共働き・共育てを行っている企業かどうかの項目が増えた
  • 今年は27社が選定された

です。

近年、日本国内では少子高齢化が嘆かれています。

そんな中で女性が社会進出をし、キャリアを形成していく上で、仕事とライフプランを両立させることが難しい現状が否めません。

「なでしこ銘柄」に登録された企業は、女性の社会進出を促進させると期待されています。

「Next なでしこ 共働き・共育て支援企業」が新たに加わったことで男女ともに社会進出をし、ライフプランを充実させやすくなると言えます。

今後「なでしこ銘柄」が、女性の社会進出と少子高齢化社会にどのような影響を与えていくのか、注目していきたいですね。

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