これまで日本人のライフステージは、学校で勉強した後、就職し、ある程度の年齢になったら退職し老後の生活を送るという、「教育」「仕事」「引退」の3ステージのモデルが一般的でした。
しかし、現在は、長寿化や情報技術の進展、働き方改革などにより、社会に出た後も仕事を辞めて留学する、転職や起業で新たな仕事を始めるなど、働き方が多様化しています。
つまり、多様なライフステージに対応した働き方が求められる時代では、新たな知識やスキルを学び直す「リカレント教育」が重要といえます。
そこで今回は、「リカレント教育」について、まとめてみました。
リカレント教育とは?
リカレント教育とは、学校教育から離れた後も、それぞれのタイミングで再び教育を受け、仕事で求められる能力を磨き上げることです。
リカレント(recurrent)とは、「繰り返す」「循環する」といった意味で、仕事と教育を繰り返すのがリカレント教育の特徴といえます。
リカレント教育は「生涯学習」の概念が基本となっていますが、豊かな人生を送るために学ぶことが目的の生涯学習に対し、リカレント教育は、仕事に生かすための知識やスキルを学ぶことを目的としています。
※リカレント教育の例
・海外で活躍するために英語を学びたい。
・MBA(経営学修士)取得を通じて経営を学びたい。
・会計についてもっと詳しくなるために日商簿記検定に挑戦したい。
リカレント教育の支援制度は?
リカレント教育には、さまざまな支援制度があります。
労働者向けに6つ、事業主向けに3つの制度があるので、自分に合った制度を活用してみてください。
【労働者向け】
(1)教育訓練給付金
厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部(20~70%)が支給されます。
ハローワークで手続きが可能です。
厚生労働省HP 教育訓練給付金
(2)高等職業訓練促進給付金
ひとり親の方が、看護師などの国家資格やデジタル分野などの民間資格を取得するために修学する場合、一定期間支給されます(住民税非課税世帯は月100,000円、課税世帯は月70,500円)。
詳しくは、お住まいの市(町村在住の方は都道府県)にお尋ねください。
厚生労働省 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について
(3)キャリアコンサルティング
在職中の方が、「キャリア形成・学び直し支援センター」のキャリアコンサルタントに、今後のキャリアなどについて無料で相談できます。
全国各地に拠点があり、オンラインでの相談も可能です。
(4)公的職業訓練(ハロートレーニング)
希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを、無料で習得できます。
雇用保険の対象となっていなくても、一定の条件を満たせば、月100,000円の支給を受けながら訓練が可能です。
新型コロナウイルスの影響で休業やシフト減となった方も、働きながら訓練できるのが嬉しいですね。
ハローワークで手続きが可能です。
(5)就職・転職支援の大学リカレント教育推進事業
非正規雇用の方や失業中の方が、2~6か月程度の短期間で就職・転職につながるプログラムを無料で受講できます。
プログラムの分野は、DX(AI・IoT)、医療・介護、地方創生、女性活躍など多岐にわたり、22都道府県40大学63プログラムが採択されています。
詳しくは、各大学のホームページをご覧ください。
(6)学び・学び直し促進のための特定支出控除における特定措置
給与所得者が、厚生労働大臣の指定する講座を受講した場合、給与等の支払者の代わりにキャリアコンサルタントの証明を受けることで、「研修費」と「資格取得費」について特定支出控除を受けることができます。
厚生労働省 特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について
【事業主向け】
(1)人材開発支援助成金
従業員の訓練経費や制度導入経費などの助成が受けられます。
各都道府県の労働局などで手続きが可能です。
(2)生産性向上支援訓練
企業が生産性を向上させるために、必要な知識などを習得する職業訓練です。
生産管理、IoT・クラウド活用、組織マネジメント、マーケティングなど、あらゆる産業分野の生産性向上に効果的なカリキュラムがあります。
各都道府県のポリテクセンターなどで手続きが可能です。
独立行政法人 高齢・障害・就職者雇用支援機構
(3)企業内のキャリアコンサルティング(セルフ・キャリアドック)
「キャリア形成・学び直し支援センター」のキャリアコンサルタントによる、試行的なキャリアコンサルティングや相談支援を無料で受けられます。
まとめ
リカレント教育とは、学校教育から離れた後も、仕事に生かすための知識やスキルを学ぶことであり、給付金や助成金などさまざまな制度があります。学ぶことに遅すぎるということはありません。ライフステージや健康状態によってはリカレント教育が難しい時があるかもしれませんが、人生の中で、もう一度学ぶことのできるチャンスを掴んでいきたいですね。